清夏

やと

第1話

今年の夏はとても暑く冷房なくしては生きていけない、僕は部活には入らず学校が終わったら家からでることはなくゲームをして過ごすインドア派だ、だから休みの日も家から出ないでひたすらに漫画ゲ―ムして過ごす。そんな友達のとの字もない人間に転機が訪れた。

とある日急にラインに通知が入った、

「学校来て」

相手は幼馴染みの結花からだった、ゲームで徹夜した体で学校に来いとこいつは言ってるが僕にはそんな気力はない

「嫌だ」

そうきっぱり断り昼寝を体にぶち込もうと布団をかける時にまたラインが入った、さっき断ったのでもう見ようとしなかったが嫌な予感がして恐る恐るスマホを見るとそんな予感が当たった。

「いいのかな、君の大事な大事なコレクションに傷がつくことになるけど」

こんなのつっぱねればいいのだがこいつは俺の部屋にずかずかと入り込んで今まで集めた漫画やゲームなどフィギュアなどに何をするのか分からないなにより前科がある事が何よりも怖い

「用件は?」

「分かってるじゃないか」

「早く教えろ」

「それは来てから教える」

どうせ雑用されるんだろうし今まで集めた宝物が傷を受けるくらいなら体に鞭を打ってでも家を出る事を決めて制服に袖を通し外へでる。

「なんでこんなに夏って暑いんだろ」

外の熱気にやられそうになりながら学校へと足を向ける。

学校へと向かい恐らく結花は生徒会室に居るだろうからそこへ行く。結花は生徒会長なのだ、頭は良くスポーツも出来てさらに容姿端麗で学校の男子からとても人気なのだが本当にリアルでこんな人間がいるんだと思わせてしまうんだが僕のイメージはそうじゃない0小さい頃からガキ大将のように振る舞っていて第一印象は性別は男だと思っていたくらいだ。なのに暇さえあれば僕の家に入り浸って最初は学校で馴染めなくて友達が居ない事をからかっているのかと思っていたが十二年やられると自然とどうでもよくなる。小学生の時とかは普通に話しをしていたけど中学生、高校と階段を上がるたびに自然と学校での会話が少なくなった。成績が段違いなのもそうだが友達の違いもそうで気付けば僕から距離をとるようになったでも部活終わりや放課後に僕の家に来るのだけは変わらなかった。

「おーいお呼ばれたので登場しましたぞ」

生徒会室の扉を開けて気怠く声をかけた

「やっと来たな、おそかったからの遥のコレクションに傷が着くでしょう」

書類に目を通しながら僕に返事を返す

「で、なんで呼んだ?」

「そこの書類職員室に持っていって」


+指を指した所を見ると山積みになった書類の束があった

「そんなの他の生徒会の人間に任せろよ」

「今皆休みで私も手が離せないの分かるでしょ」

「はいはい分かりましたよ」

書類を持って生徒会室を後にして職員室に向かう、今は文化祭などが近づいてきて忙しいのだろう。なんで僕がすんなり受け入れたのかは結花は一見完璧に見えるが実は裏でこそこそ努力しているタイプなんだ、本当に物語の世界から飛び出してきた少女に見えるがさっき生徒会の人間はみな休みと言ったがそれは会長である結花にもそうなはずだが一人で学校に来て仕事をしている。多分他の生徒会の人間は知らないだろう口には出さないがそう言う理由で僕を呼び出したのだろう。ともかくこの書類は重すぎるこう言う面倒な事は一度に済ませたいけれど毎回二回に分ければ良かったと後悔する。

「失礼します」

職員室に入って見回すと教師の少なさに驚く数人しか居ない、教師にも夏休みがあると言う当たり前の事を忘れていた、それと部活動などで出払っているのだろう

「おお前川なんでいるんだ?」

「それよりこれを」

「ああ、生徒会の書類か」

近くの机に置くとドスンと紙からでる音とは思えない音がでた

「なんで前川がこれ持ってくるんだ?」

「ちょっと生徒会の手伝いを」

そう言うと不思議そうに僕の顔を見てくる

「なんで前川が生徒会の手伝いなんか」

「まあ色々あって」

「そうか、でも今日は生徒会の面々は休みのはずだけど」

そう言うと何を思ったのか深い溜息を吐いてまたかと呟いた。

「前川って田村と仲良かったっけ?」

「いえまあ小学生の時から知ってるだけです」

「そうなのか、知らなかったな。悪いけど田村に家に帰るように言ってくれないか」

「嫌です」

「そう言うなって、俺今手が離せなくて」

「でも仕事してるのに帰れって良いんですか?」

「あいつ最近文化祭の準備とか生徒会の仕事しすぎて倒れたばっかなんだよ」

「そうですか」

僕には関係ないと言う事は簡単だったけどそのまま職員室を出てしまった。どいつも人使いが荒いよと思いながら倒れるまで仕事するってもう殆ど限界社蓄だろそもそもなんでそんなに頑張れるのかが分からない責任感が人一倍あって人の期待に応えたいそんな人間だと忘れていた。

「おーい、置いてきたぞ」

「ごくろう」

「で、この後は?」

「珍しいね彰が積極的に手伝ってくれるなんて雪でも降るんじゃない?」

「こんな真夏に降る分けないだろ」

少しの沈黙の流れで先生から帰れって言われたと悟られた、こいつは些細な事でも俺の行動や視線でばれてしまうでも逆にそれは僕も同じだ幼馴染みとして親の次に時間を共にしたせいだろう。でも僕は帰れって言えないこいつの頑張りは知ってるし多分聞かないだろうなら僕のやるべき事は一つ

「なにやればいい?」

「生徒会の仕事やらせられる訳ないじゃん」

「じゃあ部外者でもできることない?」

「んーじゃあ、とりあえず出来た書類持っていってくれればそれでいいよ」

「了解、なんか飲み物買ってくるよ」

「はーい」

適当に自動販売機で結花の好きそうなジュースを買いまた戻る。

「ほい」

「ありがとう」

相変わらず書類と睨めっこして仕事から手を離さない。

暫く結花の作った書類を職員室に持って行ってを繰り返した、職員室に行く度に先生にまだ帰ってないのかと怪訝そうに見られたがきちんと理由を言って好きにやらせてやってくれと言ってもしまた倒れたりしたら自分が責任を取ると先生を説得した。それを繰り返していくにつれて徹夜の疲れによって生徒会室でいつの間にか寝てしまった。

目が覚めて時計を見たら昼前に来たのにもう夕方になってしまった。結花のいた席には昼寝をしていた。

「おい、人の事呼びつけておいて昼寝するなよ」

そう言うとむくっと顔を上げてうるさいと言わんばかりに睨まれた、結花は寝起きの時が一番機嫌が悪い。

「昼寝してたのは自分も同じでしょ」

それは徹夜明けに連絡してきた結花が悪いと思いつつ言葉を飲み込んだ

「今私が悪いって思ったでしょ」

「そんなことない」

「まあいいや、帰ろう」

そ言うと鞄を持って共に学校を後にした。

「そうだ、夜ご飯家で食べていきなよ」

「いいよ別に」

「遥の親今いないんでしょ?」

「まあそうだけど夜飯くらい自分でなんとかするよ」

「じゃあ昨日のよるご飯なに?」

「えっと」

昨日はゲームをしててお菓子しか食べてないがそんなこと言えば少しでも早く家に帰ってゲームをしたいのにできなくなってしまう。

「カップ麺だわ」

「あきれた、やっぱ駄目だわ。ほら行くよ」

「え、ちょっと俺に拒否権なし?」

「当たり前でしょ、こっちはおばさんに頼まれてるんだから」

それから結花の家で夜ご飯を食べて、家に帰りこれからはきちんと食べようと決意した。

家に帰って疲労からベットに直行して寝た。

翌日も昼頃に起きてまた結が来るかと思ったが結局来なくゲームをしていつものように翌日もその次の日も過ごした。もう大丈夫かと安心していたら一週間がたった日に急に連絡が来た。

「ちょっと学校きて」

「なんで」

「いいから」

また雑用をさせられるのかと思いながら学校へ向かった。

生徒会室に向いドアを開くとこの前きた時にはいなかった他の生徒会のメンバーが揃っていた

「失礼します」

「来たね、よし皆注目」

そう言って結花に皆の視線が集まった

「そこに居るのは前川遥、今日から生徒会には入ることになったから」

他の生徒会のメンバーもよく分からないと言った表情をしていた。

「どう言うことですか?」

「まあ色々あって、文化祭まで前川には雑用とかやらせるから皆こき使って大丈夫」

結花を廊下に連れ出して説明してもらう

「どう言うことだ、俺が生徒会って」

「だって責任取るんでしょ?」

「ん?」

「遥が来た日のあと熱出たんだよね」

「それは結花の体調管理の問題だろ」

「先生から聞いたよきちんと責任ってくれるって」

「だからって他の人間にどう説明するんだよ」

「それは多分大丈夫」

なにが大丈夫なのか分からないがそれから生徒会の仕事といっても書類を運んだり空いてる教室の掃除など本当に雑用ばかりやらされた。

それから2カ月ほど経った夏の暑さも少し和らいだくらいの時期僕らにとって最も大事な最後の文化祭が開こうとしていた。

「やっと明日から文化祭だ」

放課後もう誰も居ない生徒会室に二人は残っていた

「やっとここから開放される」

「そのわりには随分と楽しそうにやってたじゃん」

「それはなんというかただ続けてもいいかなって思っただけ」

「えー本当かな、もしかして遥ってM?」

「そんな訳あるか、でも少しは楽しかったかも」

そう言った瞬間満面の笑顔で僕の方を見た

「じゃあやっぱり誘って良かった」

結花の笑顔は多分男子にとってとても嬉しいと思えるほど破壊力がある僕も少し揺らいでしまいそうだ、明日は結花は色んな意味で大変な一日になるだろう

「ゲームより優先できるものができるなんて私は嬉しいよ」

「うるさい、帰るぞ」

「はーい」

二人で鞄を持って先に教室をでた結花が僕の方に振り返って一言

「明日一緒に学校回ろうか」

「え?」

「生徒会の仕事としてね」

少し期待したのに一瞬で打ち砕かれた

「少し期待した?」

「そんな訳あるかそれに俺が生徒会として仕事するのは今日までだ」

「んーじゃあ普通に遊ぼうか」

「勘違いされるぞ」

「別にいいじゃん」

「俺がよくても結花が」

「いいの、私が決めたことだしそれに何か言うやつはしらない」

「まったく、しらないからな」

少し昔に戻った気がして嬉しくなった。

僕の夏休みはゲームだけじゃなくて殆ど清夏の下で動き回っていた最後の高校時代の最後の行事に少し楽しみと言う感情を結花は僕に与えてくれた。

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清夏 やと @yato225

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