逃避の章

とりあえず自宅についた。

冷蔵庫に冷やしてあるカフェオレを飲む。

椅子に腰かけ、ふーう、と長いため息をつく。

着信が鳴った。

びくっと背中が震えた。画面を観る。

大丈夫、友人からだ。

「もしもし?」

「ああ、サトシ?」

「うん、お前この前おれんちに遊びにきたとき、

コントローラー忘れてない?」

「あ、そうだった」

「明日、取りに来るか?」

「そうだね」

「じゃあ、朝10時に取りに来るか?」

「わかった。朝10時ね」

「んじゃまってるよー」

「はーい」

その夜、寝付きが悪かった。

嫌な夢を見た。

首だけ動く猫が地面を滑りながら

どこまでも、どこまでも、追いかけていく夢

・・・

驚きて起きた。

背中は汗びっしょりだった。

新しいティシャツに気替えて、

冷蔵庫にあるスポーツドリンクや飲んだ。

友人と約束の日の朝。

彼の家へ向かい、コントローラーを受け取り

、外で少し雑談をした。

雑談の途中、横からニャアと鳴き声がした。

背中が一瞬びくっと震えた。

「どうした?」

「いや、ちょっと驚いただけ」

「ただの野良ねこじゃん」

「そ、そうだね」

「? まあいいや。俺このあと雑用があるから、悪いけどまたね」

「ああ、またね」

その野良ねこは笑っていたような気がする・・・

とにかく、土日だけでも逃げのびないと。

自宅に戻り、朝ご飯をすませ、ビッグサイズの

リュックに肌着、歯磨きセット、バスタオル、

替えのハンカチ、中身が入った水筒、長い柄が

ついた食器を洗う為のスポンジなど、色々な物を

詰め込んで逃げる仕度をする。月曜は仕事だ。

俺は、生き抜いてみせる・・・

重い玄関を開けて、とにかく遠くへ・・・

チャリにまたがり、あてもなく商店街を

抜ける。途中にコンビニに寄り、精神安定

の為、カフェオレを買って飲んだ。

そしてまた、チャリで商店街の奥へ奥へ

進んだ。

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