瞳を見て

アイテム

瞳を見て、、、




「くそ……ねぇみぃー」


 朝までゲームしてたせいで、俺の体はボロボロだった。

 中学3年生の俺、中村彰人なかむらあきとは学校の屋上にて昼寝をしようとしていた。

 彰人が寝ようと、横になって太陽の暖かい日を浴びながらゆっくりと目を閉じると、ドアノブを動かす音がした。


「ガチャ……」


 錆びついたドアの音が彰人に聞こえた。


「なんだよ……こんな時に……」


 苛立ちながら頭をかき腰を上げ、下を見渡すと、そこには先生がいた。

いつものように生徒指導の先生は彰人を探しに来たようだ。


「彰人……!ここにいるのはわかってんだそ―!出てこい」


 怒鳴りながらこちらへと向かってくる。

 めんどくさいな、いつもいつも俺の邪魔ばかりして、

 

 先生がハシゴにつかんで上がろうとしてきた。


「くそ……やるしかないか……」


 先生が一段ずつ、足を掛け上がってくると、彰人は行き良いをつけて走りジャンプをした。

 ジャンプをした瞬間、先生は目線が飛んでいる彰人の方を見て、驚いたことで、先生は手を離し落ちる。


「バタン!」


 彰人の着地音と先生の腰からついた音が重なった。


「いってぇ……ちょっ……彰人!待て!……」


 先生は、腰を痛め手を彰人の方に伸ばすことしかできなかった。

 そんな中、彰人はすぐにドアの方向に走り、ドアを行き良いよく閉め、逃げた。


「はぁ……はぁ…… なんとか撒いたか。」


 学校の外へ逃げた彰人とは、学校の奥の方の行ったことがない方向へ

 窓から見られないようにしゃがんで奥に進んだ。

 奥に進むあたりに古びた小さなプレハブを見つけた。

 なんだここ?こんなところがあったのか、もうこの学校に2年間もいるって言うのにまだ知らないことがあったな。


「少し覗いてみるか……」


 バレないように窓端から覗いてみると、数人の学生しかいなかった。

 何だよここ、

 不思議そうに見ていると目の前に人がいた。

 バレたか!ふと、その人の顔を見るとその女性に目を奪われた。

 その女性は、雪のように白い髪、綺麗な宝石のような目をしていた。

 そんな少女と、彰人は目があった。

 彰人は、目があった瞬間初めての衝撃だった。

 鼓動が昂る感覚、これが恋だと彰人は感じた。


「好きだ!……」


 思わず、彰人は口にしたがそれは少女には聞こえてないのだろう……

 少女は、じっとこっちを見ていた。


後ろから服袖を掴んで彰人を片手で持ち上げた。


「彰人!!…… ようやく見つけたぞ!……今日こそは指導室に行ってもらうからな……」


 くっそ、先生かよ……俺はやらなきゃいけないことがあるのに……

 邪魔をされた彰人は少し血が上りながら先生に威嚇した。


「なんだ彰人、その顔は……文句があるなら生徒指導室で話を聞くからな。」


「いいじゃねぇか!……やってやるよ……だから早く離しやがれ!」



         昼休み



「ぷぅふ……あひゃあははははは……お前、なんだよそれ、恋に落ちたのかお前が? な訳ないだろ、」


我慢できずに笑っている人物は、彰人の友達にして親友の

 志村優羽しむらゆうは、外見はメガネをして、癖毛の男 オタクでクラスの中では一番うるさいやつである。


「それで、その子は何クラスの子なんだ…… 俺は一応、この学校の女子なら知り尽くしてんよ……」


 優羽は、ちょっと自慢げに言ってきた。


「ちょっと優羽!……キモいんですけど……」


こいつは時雨千冬しぐれちふゆ、小学生の頃からの付き合いで、俺がこんなんでも優しく接してくれている。


「げぇ……聞いてたのかよ千冬!秘密の話を聞くなんて、ダメな子ですねぇ〜」



「あんたの声がデカくて聞きたくなくてもきこえてきたんですぅー」

 

「めんどくせぇーから喧嘩すんなよお前ら……」

 毎度の優羽と千冬の喧嘩がめんどくさい彰人


「まぁ…… 彰人が言うなら、許してやってもいいよ。」


「いや、こんな弱い女に喧嘩するわけないだろ……彰人くんよぉ〜」


「誰が弱い女ですってぇ…… わかったわ、優羽。今までありがとう。では、土の中に入れてあげるよ…」


 千冬は表情かえて構えをとり、いつでもぶっ飛ばせるかのような雰囲気をしていた。


「ちょっと待てぇー俺が悪かったから、彰人助けっ!」


彰人に助けを出す前に、千冬のビンタが優羽に炸裂した。

 優羽は、周りながらぶっ飛び、壁に激突した。


「ふぅ…… 成敗!」


 一呼吸して、千冬の機嫌は治った。


「話はそれたけど、どんな話をしていたの?」



「あぁ…… 午前に学校外をうろうろしてたんだけど、知らないクラスを覗いたら目と目があった少女がいてさ、その子に……」


 少して照れくさくて言えなかった。


「その子に、恋でもしちゃったの?」


「あぁ……そう言う感じ……」


千冬にいつもの表情がなくなった。


「へぇ……その泥棒猫って誰かなぁぁぁ………」



「泥棒猫ってお前、何言ってんだよ。」


「でぇ? その子って誰なんだよ彰人」


少し顔を腫れた優羽が戻って来た。


「それが、名前がわからないんだよ。クラスを中断させて告白するつもりだったんだけど、先生に見つかってさ、そのまま指導室に連れて行かれて」


「お前、告白って…… げぇ……」



「こ、こ、告白〜?  あははははは……これは夢、夢だよ千冬」


千冬は髪が崩れ、目の色がなかった。

ちょっと嫌な予感がした2人は千冬を無視した。



「校舎、はじのクラスなんだけど…… 」


「はじのクラス? それなら、たけのこクラスなんじゃないか? 」



「たけのこクラス?なんだそれ?」



「お前は、学校にそんなに行ってないからわかんないかもしれないけど、たけのこクラスって言うのは、障害がある人のクラスなんだ。多分、いじめやなんかが、あるから校舎はじにしてんだろう。」



「なんだそれ?」


「昼休みはまだあるから行くか?」


「あぁ…… 頼む一緒についてきてくれ…… 千冬は行くか?」



「い、行くに決まってるでしょ! 泥棒猫は許さない、許さない」


「いや、お前はキャラ変わりすぎだろ!」

 優羽がツッコミを入れながら彰人たちは、たけのこクラスに行くことにした。


「ここが、たけのこクラスだけど…… 彰人、その子は見つけたか?」


ドアのガラスから覗く3人

教室にいたのは少女とその友達だろうか、一目惚れをした、美しいに少女がいた。



「あの子だ……そこにいる、白髪の子」



「えぇっと……あの子って確か……」


「優羽知ってんの?」



「あぁ……一応、小学校がおんなじだったんだけど、魔女って言われてたな。確か名前は、目黒瞳めぐろひとみだった気がする」


「魔女?」


「あぁ…… あの髪だったし、障害を持っていたからそれで……」


「あのー 何か用があるんですか?」


3人がドアの隙間から覗いているのがたけのこクラスの先生だろう、バレてしまった。


「あぁ……私たち、目黒さんに話がしたくて」


「ちょっと千冬! 何話をしてんだよ」


「あぁ…… 目黒さんと話がしたいのね。どうぞ、中に入って下さい。」


「あいつ、話を進めるなよ。まだ心の準備が。実際、あの時は行き良いで告白しようとしてたけど、ちゃんと話して告るのは流石に緊張する!」


「瞳ちゃーん! 話をしたいって言う人たちが来たんだけど、いいかな?」


彼女はちょっと戸惑っていた。


「えっと……話をしに? 別に構いませんけど……」


「えっと名前?……」


「あぁ……私は、千冬って言います。こっちは優羽と彰人」


「3人いるんですね。目黒瞳って言います。」



「あぁ……知らなかったかな、瞳ちゃんは弱視なのよ」


「ごめんね、知らなかったの。2人は男子で、彰人はちょっとヤンチャでそんなに学校には来ないけど、頼りになる時は頼りになる人なの!

後そこにいる人は優羽、平凡な人」


「いや、なんで俺だけ紹介が雑なんだよ。」


「えっと2人とも男子で、千冬さんは女の子なんだよね。でぇ、私に何かようですか? 」


「えっと……ね、えぇーと」



(やっぱり、近くで見ると可愛いなぁ〜肌が白くて綺麗な瞳。なんか言わないと、なんか……)



「好きです!友達になって下さい。」


 言わないといけないといけないと言う焦りが出てしまい、大声で告白をしてしまった。


「ちょっと!? 彰人! 」



「ひぇい!!」


 瞳にとっては目が見えないため、寝ている間に目の前で爆音の音量が鳴った時と同じようなものだ。

 びっくりした声の音量とプラスして急な告白のようなことを言われたため瞳にとってびっくりだった。


「あ……!急にごめん!おれ、」


「今のは、彰人お前バカだな……」


「ごめんね、目黒さん。ちょっとびっくりしたと思うけど、こいつ結構友達いないからさ、良ければ友達になって貰えないかな。」


 一旦、好きと言うワードを流すかのように千冬は瞳に話す。


「友達ですか…… 少し考えさせて貰えないですか?」


「別に私はいいけど、彰人はそれでいい?」


「俺は別に構わないけど…… 」


「じゃあ、明日また来てもいいかな?」


「うん、じゃあまた明日待ってます。」



「ではまた明日、失礼しました。」


「「失礼しました」」


 千冬に続いて彰人と優羽も教室を後にする。

 ドアを閉めた瞬間、彰人が振り返ると2人がじっとこちらを睨んでくる。


「流石に彰人……友達になって欲しいって言って、考えさせては、お前詰んだな。」


「 またやっちまったーどうしよう……」


 そのまま床に座り込んでしまった。


「そう言えば千冬お前、泥棒猫って言ってたくせに話を進めてたな。」


「別に仲良くなる気はないけど、彰人と優羽の2人だとやらかしそうだったし、大変なことになると思っただけ。」


「千冬。ありがとう、千冬がいなかったら声をかけることも出来なかったと思うから……」


「まぁーあ…… 今度、買い物に付き合ってくれたらいいけど……」


「あぁ……わかった。じゃあ、3人で行こうか!」


「さ、3人でぇ!?  もう手伝ってあげないから」


なんでそんなに怒ってんだ?千冬は・・・・


「ちょっと、なんでだよ!」


「あははははぁ…… もう彰人、気づけよ」


 ――――――――たけのこクラスでは


「ちょっと瞳!!告白されてたじゃん!」

慌てているのは友達の愛ちゃん。

私と一緒で弱視である。


「ちょっと、愛ちゃん!  告白じゃないと思うよ。だって彰人? 天然の子みたいだったし」


「いや、今のは先生も告白だったと思う!」


「だよね!先生。 どんな顔だった?」



「うーんとねぇ…… 170cmぐらいの子で金髪だったねぇ……」


「めっちゃ、いいじゃん。イケメンじゃん!身長が170cmある人は勝ち組だよ!瞳!」


「と、友達になってて言われたんだよ。なんで付き合うみたいになってんの!」


「でぇ……瞳ちゃんは友達になりたいの?友達になるかで、返事をすぐにしないなんて……」


「私たちみたいに、障害を持ってる人たちにとって友達になってて言われるのはめっちゃくちゃ嬉しい。けどその分、相手の表情を見ることも出来ないし、普通に生きてる人と話が合うかなんてわからないから……」



「そうかもしれないけどね、瞳ちゃん。障害を持ってるのは本当の事だけど、それに縛られちゃあ、ダメだと思うよ。私は目は見えるけど、相手を何度も気づつけてしましたこともある。でも、謝れば……次に生かして行動をとってきたわ。誰も最初からできないの!だから、試しでもいいから友達になってみたら?なんかあったら、私がクラスにいる限りは、見守るから……」


「えっと…… はい。と、友達かぁ〜 なんか緊張する。」


「いや、私たちも友達でしょ」


「それは、そうだね。」



 ――――――――次の日――――――――



彰人たち3人は、予定通り返事を聞くため、たけのこクラスに来た。


「3人とも、来てくれたのね…… どうぞ入って!」

先生は、すぐに中へと入れてくれた。

「では、失礼します。」


「こんにちは……」


「こんにちは、」


「えっと……聞いてもいいかな、返事」


「えっとね……私は別に構いません。」


「ってことはいいってことだよな……」


 瞳は、恥ずかしそうな顔をしながら頭をコクリと小さく頷いた。


「よ……よっしゃー!」


 彰人は手を挙げ万歳をする。


「おめでとう、おめでとう」


 先生は早い拍手をした。

「いやいや、告白が成功したわけじゃないんだから!」


 優羽のツッコミも入れながらたけのこクラスの昼休みは賑やかになった。


「あぁ……!  そうだ3人とも!そこには並んでくれない。3人の写真を撮りたいの。」


「「写真?」」


 そう言って先生は、自身のスマホのカメラで写真を撮った。

スマホを瞳に渡し、瞳は目にスマホを近づけている。


「えっと……目黒さん?  何をやってんのかな?」


「あぁ……!  すみません。写真を見ていました。」


「写真を見れるのか?…… だって目が見えないんじゃないの目黒さん。」


「私は弱視の中でも見える方で、このぐらいで見ることは一応できます。なので、何かを見たい時とかは愛用の弱視用ルーペを使ってます。」


「弱視用のルーペなんかあるんですか……」


「文字を拡大するのはそうですが、それに加えて明るくしたりできます。」


「めっちゃくちゃ便利じゃん。」


「なぁなぁ……俺の顔はどうだった? 案外イケメンだよなー!」


「えっと…… そうですね天パなんですね……」


「いや、それだけ……?」


「あんたには、それぐらいしかないでしょ。」


「千冬さんは、綺麗ですね。髪が長くて良いな〜」


「えぇ……そうかな?  まぁ〜これでも告白とかされるしねぇ〜」


「いや、なんでこっち見んだよ。」


「こ、告白!?  すごいです。 私も一応女子なので告白されるの夢です。あと、女子と恋バナとかしたいです。」


「でも、友達はいるみたいじゃない?」


「親友はいますけど、どっちも弱視なので…… あまり恋愛経験がなくて…… でも!恋愛ドラマとかは見ます。」


「ドラマ?ってどうやって観てんの?」


「スマホのビデオアプリで音声ガイドが付いたものを観ています。まぁ〜 音声ガイドが付いているものが少ないので悲しいですが……」


「すごい、今度一緒にみよう!」


「是非!」


 「なぁなぁ彰人、なんか盛り上がってますけど千冬のやつ……てぇ、お前どうした?」


「いや……俺も話してぇ…… てか笑顔の目黒さんも可愛い!」

「お前が主役なのになんも喋らないじゃん、なんか喋ってこいよ」


「はぁ!……俺が行くとぶち壊しちゃうだろ!」


「いやいや、いけよ!」


「お前がいけよ!」


「だからお前が主役だろ! お前が主人公だろ!」


「ちょっと何言ってるかわかんないな。」


「あ!…… 彰人くんは綺麗な金髪ですね!」


「でしょ!こいつが金髪になったの小学生の頃からなんだけどさぁ〜あ? 今、綺麗って……」


「やべぇ……彰人!あいつ闇を地してるって!おい、彰人」


返事がない彰人に優羽は、彰人の方に横に振るとそこにはにやけている彰人がいた。


「そうっす……!」



「かっこいいなぁ……ドラマの主人公見たい……」


「あ、ありがとう……」


彰人と優羽から見て千冬の後ろ姿した見えないが優羽から見た千冬は、黒色オーラを纏ったように見えていた。

 彰人は、それどころではなく照れているせいで全く眼中になかった。


「ブーーーー」


 かなり喋っていたのだろう、時間を見ていなかったためチャイムがなってしまった。


「話の途中だけどごめんなさいね3人とも、もうチャイムが鳴っちゃったし次は体育なの……また明日来てくれる。」


「私は別に良いですよ。」


「彰人はどうするんだ、お前がくるなら俺もくるけど……

 」


「あぁ……また来るよ。」


「うん、じゃあ3人とも今日はありがとう!」


3人はたけのこクラスを後にして廊下を歩いている。


「なぁ……2人とも。これから俺はサボるんだけど、お前らもサボらないか……」


「はい?サボるっていつも通りだろ。なんで俺らも付き合うんだよ。」


「私は受験に反映されることはしたくないから、私はクラスに戻るわ」


「俺、今から体育館に潜入したいと思う。」


「は?」


「来ないんじゃなかったのか千冬……」


「別に、ただ単に彰人と優羽だけだと心配だったから……」


「ふーん、心配ね……」


「何よ…… 」


 3人は、体育館の窓から中をのぞいている。


「目黒さんだ!」


 たけのこクラスの生徒だけの体育館は広くすぐに目黒を見つけた。


体操着をきた目黒さんはすぐにわかった。




 目黒は、白いTシャツに青い半ズボン、白髪はツインテールになっていた。


「ちょっと彰人……顔が……」


「別ににやけてる訳じゃあないよ!」


「本当かなー?」


「彰人、千冬、始まるみたいだぞ!」


 ストレッチを終わった生徒たちは、先生の話を聞いている。

先生はサッカーボールを片手で持っているためサッカーでもするみたいだ。


「サッカー? 危ないからサッカーを体育館でやるのはわかるけど、目が見えないのにサッカーが出来るのか?」


 3人は不思議に思っていると生徒たちは、目隠しをかけ配置に着く。先生が真ん中に行きボールを離し地面にボールが付くとチャリーンと言う鈴の音がした。


「ボールに鈴を付けてるのか!」


「そう見たいね。確かこれテレビで見たことあるかも」


「これは、ブラインドサッカーって言うらしいぜ。」


「ヘェ〜詳しいじゃん優羽。」


「いや、スマホで見た。」


優羽は俺にスマホの画面を見せて来た。


「お前、スマホ持ってきてんじゃねぇよ」


「バレないバレない、どっかの誰かさんと違って堂々と見ないから」


 優羽は煽るかのように彰人に言うと、彰人から見て優羽の後ろに誰かが来ているのがわかった。


「何がバレないって……」


「え?」


 優羽が後ろを見るとゴツい体が見える。嫌な予感を感じながら徐々に目線を上に上げるとその人物は生徒指導の先生だった。


「まさか、いつも通り彰人を探してたんだが…… 優羽お前もサボっていたとは……」


「いや、これは……千冬なんか言ってくれ……ってあいつどこ行きやがった」


 千冬に助けを呼ぼうとして後ろを振り向くとさっきまでいたはずの千冬はいなくなっていた。


「あいつ……彰人助けてくれ……」


「あぁ……めんどくせぇ、こう言う時はない逃げれば良いんだよ」

そう言った彰人はすぐさま走りそのまま優羽も走り出した。


「お前ら……!」


 2人を追うために猛スピードで先生も走り出した。


若い俺たちは先生が後ろから来るのが見えないぐらい走り続けた。


「どうにか巻いたみたいだな……」


「お前と付き合うと碌なことがないな……」


「いやぁ〜目黒さんの蹴ってるところが見たかったなぁ〜」


「はいはい、」


「優羽、俺は今失うものはないんだよな……」


「何を言ってんだ……」


「うん?だから、ここは学校だから逃げても無駄ってことだよ……ここで逃げても後で怒られるぞ……」


「嘘だろ……」


優羽の表情は凍った。


「お前、頭いいのか馬鹿なのかわかんないな……」


「ならお前なんで、逃げたんだよ。」


「いや、お前が助けてて言うし俺がいつも逃げてるのはサボりたいから」


 そうして学校が終わると2人は指導室に連れられた。

 別にどうでもいい彰人、スマホ没収 成績が落ちた優羽の今日の1日は終わった。


 家は母の実家暮らし、6畳の部屋が彰人の部屋である。

 床は畳みが敷いており。勉強机はなく、真ん中にマットレスを置き、そのほかは漫画や雑誌で埋もれている。


「いやぁ……なんもすることないな……」


体育館の後、彰人は高熱を出し1週間休んでた結果、夏休みに入り1ヶ月の間、目黒さんに会えないのだ。


「せっかくの中学生最後の夏休みだって言うのに何もすることがねぇ……」


扇風機を回しながら手を大きく上げ天井を見ながら呟いていると、隣に置いてあったスマホが鳴っていた。


「えっと……千冬からか。」


千冬からのメールを見るとそこには、


「今度、目黒さんと遊ぶことになったんだけど来る?」


「行く!ってか、いつのまにか連絡取れるようになってんだよ。」


「あなたが風邪で休んでる間に色々あったのよ」


「よっしゃー!! 彰人と遊べる!いつも誘うとめんどくさいから行きたくないって断れてきたけど目黒さんと行くって言ったら絶対行くと思ってた!ちょっと負けた気がするけど、目黒さんをとことん利用させてもらうよ!」


 自分の部屋のベットで喜んでいる千冬。当日に風邪を引くとも思わずに……


――――――――――当日――――――――


 仙台駅、集合場所は綺麗なガラスのところと千冬からラインがきていたが、目黒さん大丈夫かな?目が見えないのにガラスのところなんかわかるのか?

千冬が入っているのは仙台駅の有名な待ち場所、それを知っていた彰人はすぐにそこにつき、多くの待ち人がいる中そこで待っていた。


目黒さんってどうやって歩いてくるんだろう?


 そう、ソワソワしながら待っているとすぐに彰人は気づいた、目の前を歩いている女の子に。


「目黒さん!」



「えっと……彰人くん?」


「うん、よくここがわかったね!」


「うん、ここのガラス張りが光で虹色に見えるから遠くても見えるんだよね。」


「近くで見なくても色で判断もできるんだ……」


「そう、白いぼやで埋め尽くされてくけど光や色は少しだけわかるから、彰人くんの金髪が目に入ったんだ……」


「そうなんだ……」


「そういえば、千冬さんは?」


「それがまだ来てないんだよな……あ、メール来たわ」


千冬から来たメールは「ごめん、風邪引いた。2人で楽しんできてね。それと、今日は手伝ったってことで今度2人で出かけてくれるよね。」


「あいつ、」


「どうかしたの?」


「すまん、目黒さん。千冬のやつ風邪引いたみたいで今日は来ないみたいなんだ。」


彰人は両手で手を合わせて誤った。


「そうなんだ、別に私は体の方が大事だから構わないけど、今日はやめとく?」


千冬には悪いが、こんなチャンスはない、


「いや、行こう!2人で……」

彰人は声を上げた。


「うん。」


「今日はさ、映画を見るって言ったてけど、どの映画を見に行くの?」


「そこの映画館でやってる、恋愛映画なんだけど……音声ガイドついてるけど大丈夫?」


「別に構わないよ。じゃあ行こうか!」


「うん!」


 行こうと歩き始めようとしたその時、彰人の腕を両手で組んできた。


「うわぁぁぁ!目黒さん急にどうしたの!」


「アッ!ごめんなさん!普通は連れに誘導されるのが普通だから、今回は千冬さんに腕を組もうと思ったんだけど……」



「そう言うコトか……俺なら別に大丈夫っす。俺の体を使ってください。」


「べ、別に腕だけでいいよー!」


「そういえば、目黒さんさっきまで使っていたその棒なんですか?」


「あー これはね、歩いていると下に黄色い凸凹があるでしょ、あれと一緒に使って目が見えなくても出掛けることができるの。あとは、これを振ることによって前に壁などがないか危ないものがないかを調べる的な?」



「めっちゃくちゃ便利だなその棒!俺も欲しいな……」


「なんで欲しいのこんな棒……」



「だって停電とかした時とか便利そうだから」


「あぁ、それは便利そうだね。」


「俺の家、金ないからしょっちょう電気消えるんだよな……」


「急に悲しいね……」


「あはははははは、別にたいしたことないよ。ほらついた、映画見よう。」


 彰人にとって目黒さんとまともに話ができて嬉しかったため、すぐに映画館についた。


「何か食べる目黒さん?」


「うーん、親がいないからいいかな?いつもはポップコーンとか親に食べさせてもらってるけど」


「なんで親に?」


「貢献の場ってこともあるけどポップコーンっていっぱい入ってるのに小さくて落とすから」


「そうなんだ…… じゃ、買ってくるわ!」


「え!?今の話を聞いてなんで買うの?」


「考えがあるから、あと俺が食べたいってこともあるし」


「えっと……D11は、ここか。目黒さんはここね。」


「ありがとう!」


 映画が始まると同時に、スマホを取り出した目黒。


「目黒さん、急にスマホを取り出してどうしたの?」


「あぁ……これはね音声ガイドをスマホからダウンロードしてイヤホンをしながら映画を見るの。」


「あぁ……そうだったんだ、」


俺は恋愛映画はみないが、かなり面白いストーリーだった。もう、終わりだろうか、2人が結ばれてるところだった。キスシーンの場面、ちょっと気まずいな


 隣を振り向くと目黒さんは恥ずかしさと顔を赤くしながら結ばれるのが嬉しいのか笑顔だった。


映画を終えたあと俺たちは映画館を後にした。


「映画、めっちゃくちゃ面白かったね。ヒロインと主人公との距離感とかもう、付き合えばいいのにって思ってたよ」


 白杖と一緒に両手を握り楽しそうにしている。


「彰人くんはどうだった?」


「俺も、逆になんで付き合ってないんだってところめっちゃくちゃあったな……」


「うんうん、面白かったね!千冬ちゃんもこれたらよかったのにな〜めっちゃくちゃ語りたかった。」


「あははははぁー!でぇ、この後、行きたいところに付き合ってくれないか?」


「うん?別に今日は何時でもいいよ!彰人くんの行きたいところで……」


瞳さんに見せたいところがある。昨日の夜、瞳さんと行きたいところを考えていたら見つけたここは、仙台から地元に戻り20分以上歩いて着く。


瞳さんと映画の感想を言っている間についていた。


「えっと……どこなのかな?」


「どこだと思う?ヒントは鼻でわかると思うよ。」


 だんだんと目的地についてくると、目黒は、匂いに気づいた。


「この匂い、塩? まさか、海!?」


「正解!と言っても見えないから塩の匂いと風を感じながら写真でも見てもらおうと思って。」


「うん、風が気持ちいね。本当に塩の匂いがする。」


「ちょっと近くまで行ってみようか」


「うん!」


 すると、瞳がコンクリートから砂場に歩くと足が崩れバランスを崩してしまった。


「まずい……」


彰人が反応と同時に体から動き瞳の体を支えた。


「ちょっと危なかったね。」



「ごめんね彰人くん。油断してた」


「いや、俺こそ悪い。」


 でもこれだと瞳さんが砂浜から出て海に行くのは危ないか……いや、一つだけあるか。


「目黒さん、少しだけ体を俺に預けてくれ……」


「うん?どう言うことかなぁ……!」


 彰人は手を瞳の太ももと腰に触れそのまま持ち上げる。


「キャァー!ちょっと彰人くん!見えなくても大体この格好わかるよ。」


 恥ずかしいのだろう、顔を手で隠している。


「ごめん、でもこれしかなかったんだ……」


 少し波に体が持っていかれながら大背を崩さないように必死だった。


「うわ、危ねぇ……」



「あはははは!うん?塩だ!」


 波の吹雪が少し口についたものをベロで舐める。それは、瞳が舐めた塩の中で一番しょっぱかった。




「今日は楽しかった!今度はみんなでこよう!」


もう、空をオレンジ色で夕方になっていた。


「あぁ……そうだな……じゃあ帰ろっか」


「うん、」


 足についた砂を流した後、俺たちは帰ろうとしていた。


「何やってんの瞳!」


 遠くの方から声がした。


「この声はお母さん?なんでここにいるの?」


車の窓ガラスから瞳さんのあ母さんがこちらをみていた。


「なんだって……GPSをつけてるからどこにいるかぐらいわかるわよ。友達とでも海は危険でしょ!それより、女の子の友達と行くって思ってたけど、男だったのね。」



「あ、うん。3人で行こうと思ってたんだけど、もう1人は風邪を引いて2人で遊んでたの……」


「わかったわ、早く帰りましょう。」


「あの……すみません。俺は彰人って言います。目黒さんの友達やらせていただいてます。」


「あら、そう。彰人くん、今日は瞳と遊んでくれてありがとう。じゃあ、今日はここまでで、送るから車に乗って」


車の中はとても静かで、一言も喋ることがないまま、家まで送ってもらった。


「お迎えありがとございます。じゃあ、目黒さんまたね。」


「うん……またね彰人くん……」


窓ガラスから見た目黒さんはとても悲しそうな顔をしていた。

 自分が海に連れて行ったせいで母親に怒られるのではないかと思った。


「瞳、今日はびっくりしたわ……海に行ったことはまだ許すし誰と行こうと私が言うことではないと思うけど、人をちゃんと選びなさい。中学生で髪を金髪にしている人は大体ロクなやつはいない。もし、瞳を利用してたらどうするのよ……」


「彰人くんは別にそんな人ではない。中学では目立ってるのかも知れないけど、実際はすごく人を気遣ってくれる人なんだよ……私みたいな人でも優しくしてくれてるし……」


「それがダメなの!あなたは目が見えないんだから、彼が企んでるかも知れないんだよ。」

 私は普通じゃない、そう言われた気がした。それは本当の話だ、言葉は話せるが、私はその人の感情を顔を見て理解することもできない。

「彰人くん……?あの子には距離を置きなさい。」


「なんで……嫌だ!」


「瞳!お母さんの言うことも聞けない子なの!あなたにはもっとすくすく育って欲しいの。あんな、ヤンチャそうな子といると悪影響だから!」


「もういい!お母さんなんか嫌い!」


 私の体のことを言われるのはまだわかる。でも、彰人くんの事を言われるのは嫌だった。彼がどんな人なのか私は知ってる。ヤンチャなところもあるかも知れない、それでも初めて友達になろうと言ってくれたように私の大事な友達だから。

自分の部屋に入りベットに向かってだいぶし泣いた。


 あれからというもの、彰人くんに連絡ができなくなった。

 お母さんに携帯をいじられ、彰人くんにメールがつかないようにしていた。学校では、先生と話し彰人くんに近づけさせないでといい、彰人くんは監視されるようになったと言う。


「大変になったね瞳ちゃん。まさか、親が出てくるとは思ってなかった。」


「うん……私がこんなんだから親は心配症で、夏休みのことで彰人くんが悪影響になるって……」


「何それ……彰人のことなんもわかんないのになんでそんなこと言うの……ってごめん、親に向かって……」


「別に大丈夫だよ。先生から彰人くんがどんな子なのか聞いたみたいで、かなり親は彰人くんを近づけないでって……」


「それで監視がついたと……まぁ……彰人の事だから別に監視がついたぐらいで逃げ切って目黒さんのところまで行けるけど、彰人も目黒さんの事になんかあったらって、あいつも行けないみたいだし……」


「クソォ〜!なんでこんなことになったんだー!欲望のままに2人で出かけたりしからかー!」


「うるさいな……せっかくいい感じになってきたって言うのに親フラかぁ……彰人、目黒さんのところにいけよ」


「いや、2人で遊んだ時に俺が海に行かせたせいで親が怒ってたみたいだし、また、お母さんに怒られたら流石に嫌だからな……」


「お前は会いたいんじゃねぇのかよ。俺の親友はバカでヤンチャって言っても人を殴ることもしないしそんなに悪いってこともしてないのに人助けをしたいどんな場所でも誰かのために動く男だったんだけどなぁーそんなやつを俺はかっこいいって思って隣にいんのに、そんな事で諦めるやつではないだろ……」


「あぁ……そんなの諦めるわけないだろ。」


「だよな、目黒さんはお前に会いたいって言ってたぜ。」


 なんでだろう。俺は教室を出て、ドア前で見張ってる先生を避け、目黒さんがいるたけのこクラスに走って行っていた。


「おい、彰人!どこへ行くんだぁー!」


「お前らに言うわけないだろ!」


「すみません、先生。彰人は俺のダチなんで、彰人のためなら先生たちぐらい止めます。」


「優羽……」


優羽と、先生を後にした。


「優羽、すまん。」


「彰人!必ず終わらせてこい。」


「あぁ……わかるてるよ!」



「目黒さん!」


 俺はドアをいき良いよく開けた。そこにはクラスのたけのこクラスにある玄関から帰ろうとする目黒さんと目黒さんの親、そして先生が話していた。見送る千冬もそこにいた。

「彰人!?なんでここにいるの!」


「彰人さん?」


「彰人くん!ここにきちゃダメでしょ!」

先生は、俺のためを思って言ってくれてるのは、わかる。


「すみません、先生!少し2人でお話ししたいんですけどいいですかね?目黒さんのお母さん」


「彰人くんだったかしら、瞳に近づかないでくれない。そもそも、海に目が見えない瞳を近づけさせるなんてなんかあったらどうするのよ!」


「その件は申し訳ないです。いつも、目黒さんの事をちゃんとわからないので、迷惑をかけてると思います。でも、目黒さんに会いたいからあなたを説得しに来ました。」


「説得って、あなたのことは知ってますよ。いつも授業を受けてないとか……そんなにとと瞳を近づけたら悪影響なんですよ。」


「お母さん!やめてよ……彰人くんにそんなこと言うの!私の友達なんだよ!私の初めての友達なんだよ……」


必死に母の腕の服を引っ張った。


「お母さん……中学生ってまだ子供なのは自分もわかります。でも、大人にさせてあげませんか?」


「子供は子供よ!私の子供なんだから!あなたに何がわかるの!」


「わかりません!でも、目黒さん、いや、瞳さんの意見も聞いて見ては行けないでしょうか!お母さんがすごく心配なのはわかります。むしろそんな親がいたら嬉しいです。でも、瞳さんも自分の意思で動かなきゃ、お母さんの人形じゃないですか!」


「人形って私は……いい母親を……」


 その時、ふと気づいた。昔の自分を……


当時、私は貧乏だった。母親はキャバクラの店員、父はギャンブルをする人だった。

 部屋はゴミとタバコの匂いでいっぱい、いつも同じ服を着ていた。周りからはタバコの匂いで誰もやってこない、先生からは何度も指導を受けた。

 中学生を卒業して、バイトをするようになった。

 いくらバイトしても母親に全部奪われる。それでもバイトをしないと暴力を振る人だった。20歳になったと同時に家を出て一人暮らしをするようになってから社会をちゃんと知って行った。私は、もうあんな人達のようになりたくなかった。だからいい母親になりたいって思うていた。そして今、私は娘を縛っていた。私の両親のように……

彰人くんは、瞳が言ったように優しく誰かのたまにここまでする人だ、こんな人に私は会ったことがない。

もし、あの時にこんな人と出会ってたら何か私も変わってたのかな……


「わかったわ、もう何も言わないから好きなようにしなさい。でも、学生は学生らしくしなさい。」


「うん、わかった!ありがとうお母さん!」


「やってね彰人!」


「あぁ……終わったな。」


帰り際に、目黒さんのお母さんは俺に言った。


「彰人くん……まだ、あなたのお母さんではないから……」

その顔は、今まであった人の中で一番恐ろしい顔をしていた。

「はい……」


「じゃあ、帰るよ瞳!」



「うん、ちょっと待って!彰人くん!耳貸してくれない」



「あぁ……別にいいけど」


瞳は彰人に近づくと体を触りながら耳に手を当てる。


「あのね、これからは瞳って呼んでくれない?さん付けしなくてもいいよ!だって……私たち友達だから」


 瞳は照れながら口にした。


「お、おう……じゃあ、俺も彰人って呼んでほしいなー」


「わかりました……」


 顔を真っ赤にしながら、お母さんの方に向かった。


「じゃあ、またね!」


 これで一旦は終わった。それからいつも通りの生活に戻りつつ今まで以上に仲良くなったと思っている。

 

「今、どこら辺にいるのかな?」


 ボイスメールが来た。あの後、メールを交換することになり、録画ボイスを使ってメールを送っている。

 めーるをみることができるが、見て送るのが大変らしいのでボイスを使っているらしい。


「今は、目的地の交差点前にいるよ。見かけたら声をかけるから……」



「わかりました。」



 交差点を挟んで瞳が信号待ちをしているのが見えた。

 ピオピオと言う信号の鳥の音が聞こえたと同時に白杖を使って歩いている。

白い服にを着て青色のスカートを着ていた。

 今日の瞳もめっちゃくちゃ可愛いなぁ……


「えっと……彰人くんはもう見えてるのかな?」

 徐々に近づいてくると瞳の白杖が道路の割れているところに突っかかってしまった。


「ちょっ……!」


 地面に倒れた瞳は怪我をしてはいない、でも白状がどこにあるかわからないため手を出し探している。


「あれ?どこに行ったの!」


 歩いていた人たちよりも遅い瞳は周りに誰もいなく助ける人すらいなかった。


「あの子、大丈夫かしら……」


 多くの人たちが見ているなか、信号の鳥の音はもうすぐ赤になると鳴っている。

 瞳が危ない……

 彰人はすぐさま走り向かう、日曜日ということもあり人が多くすぐさま駆け付けられない。

 その時、信号は赤になってしまった。だか、車はいなく

 彰人が駆けつけられると思った時、前からスピード良く車が来ていた。

 咄嗟だった、彰人は瞳を思いっきり押した。

 車に乗っていた人が気づきすぐにブレーキをしたが止まらず、そのまま彰人にぶつかった。

 彰人は窓ガラスに当たり吹き飛んだ、衝撃で窓ガラスは割れ彰人は頭を打ち、大量の血が出た。

「彰人くん?……」


 瞳は何が起きたのかわからなかった。ただ、彰人が自分を押し助けてくれたと考えたが、大きな音も聞こえた。

 彰人くん?大丈夫だよね、彰人くん!

 地面を見ながら手を出し探す。

 少し先にあったのは瞳の目ですらわかる赤い色だった。

 手で触ってみるとそれは誰もが知ってる血だとわかった。

 瞳は自分の手を見るとそこには手が真っ赤に染まっていた。


「彰人!!…… だ、大丈夫だよね。」


 周りの声が聞こえる。シャッターの音、騒いでる音がしていた。

 車に乗っていた人だろうか?電話をしている。


「早く、救急車を呼んでください!」



彰人が車に轢かれてからすぐに救急車が来たみたいだ、緊急オペを無事に終わってからまだ、目を覚ましてはくれない。大丈夫だとわかっている。彰人は強いから、大丈夫。

 3日がたっただろうか……

 彰人のやろう、いつまで寝てんだよ。

 お前が寝てると千冬と瞳ちゃんが悲しむだろ。


「優羽くん、来てくれてたんだ……」



「はい、親友ですから……」


「ありがとうね、でも帰ってくるかしら……」


「お母さんが、諦めてはダメですよ。彰人は戦っています。誰かが応援しないとあいつは起きないと思うんです、だからみんな彰人を応援して来てます。」


「ごめんなさい、私が諦めちゃあダメだよね!……そういえば千冬ちゃんは?大丈夫そう?」



「いや、あれから毎日来てるみたいですけど、学校は来てないみたいです。」


「迷惑をかけてしまって申し訳ないわ……」


その頃、瞳は病院のカンターにいた。


「すみません、中村彰人さんのお見舞いに来ました。」


 そう、母親は言った後、看護師の先生が案内をしてくれた。

 私はお母さんの腕を掴み、歩いた。


「ここです。」

 そう看護師が言う。すぐについたが、そこはICUという場所だった。

「ICU……」

私にもそこがどれほどの所なのかはわかっていた。

 彰人がどれほどの重症なのか……そして私がやってしまったことを改めて思ってしまった。

 お母さんがドアを開けると、そこにいたのは優羽くんとお母さんの洋子さんがいたみたいだ。

「瞳ちゃん!?」


「すみませんね、わざわざ来てくれて……」


 2人とも驚いた顔をしていた。


「この度は本当にすみませんでした。」


 お母さんがドア前で頭を下ろしていたんだと思う。

 私がやったことなのに。私も頭を下げた。


「病院ですから、頭を上げてください!私は大切な瞳ちゃんが無事で良かったです。あの子も、あなたが無事で良かったと思ってるよ。」


「そんな……私が事故らせたのに……私のせいで……」


 その時、優羽くんが声を出した。


「あ、彰人が動いた!指が動いた!」


私には見えなかったが、彰人の指が動いたみたいだ。


 優羽がすぐにスイッチを押した。


「彰人!!」


 洋子は、寝ている彰人の体を起こすように揺さぶった。

 すぐに先生が掛け付き、彰人の体を触る。


「彰人くん?大丈夫ですかーわかりますかー」


 少しずつ目を開けようとしている。


「だ、大丈夫です……多分」


 意外に会話ができるみたいだ。

 それから、彰人は無事に目を覚まし、安全が分かったためICUから普通に戻り腕と足の骨が折れたためそのリハビリと脳の検査をするので、まだ入院が続いた。


「瞳、今日も来てくれたのか……ありがとう。」


「ううん、今日、猫に会ったんだけど前を通り過ぎて来てびっくりしちゃって……」


 瞳はいつもの日常を話してくれる。

 病院は、飯の量も少ないし、好きなものも食べないの

 かなり困っている。ぶっちゃけ何もすることがないので

 優羽や好きな瞳が来てくれるのは嬉しい。


「ここまでくるのに時間かかるだろ……? 別に無理しなくていいんだぞ……」


「分かってるよー  でも歩くのは好きだから……」


俺からしたら、白杖を持ってここまでくることはできないと思うからすごいな……


「じゃあ、お母さんに起こられるから今日は帰るね!」


「あぁ…… 今日はありがとう!」


「じゃあ、またね!彰人くん バイバイ」


瞳は手を振ってドアを閉じた。ドアを閉じる直前、瞳が寂しそうな顔をしていた。

 いつも通りに、帰って行ったがなぜか俺にはもう、会えないかのように感じた。


 瞳はすぐにエレベーターから一階に行きそのまま出口から出て一呼吸した。


「彰人、ごめんなさい。さよなら……」


 今日で最後にしようと思って来た。

 自分のせいで彰人が車に轢かれた。

 こんな友達がいない私に目が見えないのに彰人は、私に友達になってて言ってくれた。最初は怖かった、どんな人かもわからなかった、でも本当は優しいい人だった。

 そんな彼がいつの間にか好きになっていたのかもしれない、友達になって3ヶ月しか経ってない。でも、私は彼のことが友達以上だった。だから調子になっていた。

 もう、彼には会わないようにしよう。彼を傷つけてしまう。


「何、寂しい顔してんだよ……瞳!」


 瞳が後ろを向くとそこにはボヤがかかっているがもう、なれた身長のなれた髪の色をした彰人がいた。


「な、なんでここにいるの!? 足と腕が骨折してるんじゃ……」


「あぁ……骨折してる。でも瞳の表情が、なんかもう、会えなくなるんじゃないかって思ったんだ……そしたら、走ってた!」


「今回はごめんなさい! 私、何も言わないで、もう会わないようにしようと思ってた。でも、やっぱりダメだよね……私が事故らせたのに何も言わないでいなくなるの……」


「何言ってんだよ!俺は平気だから……瞳が自分のせいだと思ってるけど、俺は瞳が無事でよかった。だからいいんだ!」


「ありがとう……でも私、もうギズつけるの嫌なの……私といると、彰人を傷つける!だから……」


「俺は、君が好きだ!だから俺は、お前をこれからも守りたい、俺のそばにいてくれ!瞳!」


「私は……」


 嬉しい。でも、恋人に、なればもっと彼を不幸にしてしまう。目が見えない私は彼を縛ってしまう。


「本心を言ってくれ!お前はどうなんだ!瞳!」


「私は……彰人のそばにいたい!これからもずっと側にいたい!」


涙を流した瞳を俺は、抱き抱えた。


それから、俺たちは恋人同士になった。


数ヶ月、俺は瞳を支えたいと思い私立の高校を受験しようと日々頑張り、合格をすることはできた。瞳は、夢があるみたいでそれを叶えるために頑張ってるみたいだ。

 


「彰人ぉ〜お前とこれでお別れかぁ〜」


「くっつくなよ!優羽!ってか普通に休みの日に会えるだろ」


「彰人、優羽、みんなで写真撮ろう!」


「いいぜ!千冬!」


優羽は千冬の方に行き、小さな声で言った。


「いいのか、千冬!彰人に伝えなくて……」


「私はいいの!あいつが幸せなら……」


「そうかよ……でも、彰人が起きた後の泣きっぷりはよかったぜ。」


「お前。ぶっ飛ばす!」


写真を撮ろうとした時、奥に瞳の母親と一緒にいるところが見えた。


「瞳ぃー!!」


「うん?彰人くん?」


「みんなで写真撮ろうぜぇー!」


瞳の方に行き母親にお辞儀をした後、瞳に声をかけた。


「うん!みんなで撮ろう!」


 多分、こんな物語はもう起こらない、俺は瞳にあったのは偶然な出来事だった。ただ、彼女の瞳を見た時に俺は彼女とこんなエンディングをしたいと思っていた。

 これから瞳を守るために勉強して会社に入り支えていく、そのための一歩として俺は前に向かう。

 本当に出会えてよかった。


「じゃあ、帰ろうかみんな!」


「うん!」


 少し前に歩き、瞳はこっちを見て返事をした。


 あぁ…… 本当に綺麗だな

 その時の瞳の目の瞳はすごく綺麗で輝いていた。

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瞳を見て アイテム @kuma0817

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