4.彼女がベッドの上で激しいスキンシップを迫ってくる。

「んー、シャンプーのいいにおい。毛並みもふわっふわになって、これは絶対に気持ちいいやつ……」


「ちょっとだけ……ちょっとだけだからね……充電させてね……」


(だんだんと声が近づいてくる)


「ふわふわの毛に顔を埋めて……すはー、すーはー……」


「あぁ……とろけちゃいそう……顔に当たる毛並みが気持ちよくて……」


「なんだか甘いにおいも……すはー……すはー」


「出てる……マイナスイオンとかアルファー波とか……絶対そういうの出てる……」


「無限に吸ってられる……すー……はー……すすー……ははー……」


「このままなでなで……なでなで……」


「ふわふわのおでこも……ぷりぷりのおしりも……さらさら……つやつや……」


「おてて、ぷにぷにだぁ……もみもみ……なでなで……」


「きもちーねえ……かわいいねえ……すはー、すーはー、ふー、ふーっ」


「……はっ!」


(飛び退くように声が遠くなる)


「あぶないあぶない、一生このままになるところだったよ~」


「でも、モコくんもいけないんだよ? お昼寝をしようってベッドに上げたら、私のまくらに乗っちゃうなんて」


「目の前にこうしていられたら、かわいいが暴走しちゃってもしかたないじゃない!」


「いつもなら、おなかのあたりでまるーくなって眠るのに」


「今日はなんだか、いろんなことがいつもと違うね?」


「でも、これはこれで嬉しいかも」


「こうして寝転んだら、ほわっほわのかたまりが目の前にあって……」


「そんなに私の顔に、近づいてくるのなら……」


「たべちゃうぞー! あーん!」


(ちゅ、と、軽いキスの音)


「なーんて、おはなへのキスだよ~」


「つやつやでかわいいおはなだから、ついついね」


(ちゅっ)


「わ、おめめがまんまるだ! びっくりさせちゃったかな?」


「でも、やめてあげなーい!」


(ちゅ、ちゅ、ちゅ!)


「ふふふ、くちびるをツンツンさせちゃって。私にもキスをしてくれるのかな?」


「でもね、くちびるはだめだよー?」


「ファーストキスの相手はね、もう決めちゃってるから」


「そう……決めてるんだけど……なかなかねえ……」


(ふぅ、と小さなため息)


「……よし」


「恥ずかしくて、だれにも言えないことなんだけど……」


「お話、聞いてもらっても、いいかな」


「眠たくなったら、眠っちゃってもいいから」


「じゃあ……もっとお顔、寄せちゃうね」


(真正面、声が近くなる)


(そのまま、ひそひそ話のトーンで)


「いまからお話しすることは、パパにもママにも秘密だよ?」


「うぅん……ええと、ね」


「……なんだか私、アイツにそっけない態度、とってばかりかなって」


「もっといろんな、恋人らしいことを……そうじゃなくても、いつもいっしょにいたいなって、思ってはいるんだけど……」


「……自分からそうしたら、歯止めが利かなく、なっちゃいそうで……」


「手をつなぐことも、数えられるくらいしかしたことがないし」


「キスだって、いっぱい、いーっぱい、したいとは思ってるんだよ?」


「でも……そうしたらぜったい、毎日したくなっちゃうと思うし……」


「それ以上だって……」


「だからついつい、キツく当たっちゃうんだ。自分でもわかってるの」


「こんなんじゃ、嫌われないかなって、怖くなることもあるんだけど……」


「ひゃうっ!? どうしたの、急にすり寄ってきて!」


「ふふふ、ぺろぺろ、くすぐったいよ?」


「もしかして、元気づけようとしてくれてるのかな?」


「本当にやさしくって、かわいい子で」


「……ありがとう」


(ふわぁ、とちいさなあくび)


「聞いてもらって楽になったのかな。なんだか……急に私も眠たくなっちゃったかも……」


「わ、モコくんもおっきなあくびだ」


「一緒に、おやすみ、しよっか?」


「でもでも、眠るのは私があとだよ? かわいい寝顔、たーくさん、見せてね?」


「だから……もうすこし……がんばって……おきてるから……」


「がまん……がまんだよぉ……」


「ん……ふわぁ……んにゅぅ……」


(すぅすぅと、気持ちよさそうな寝息が間近から)

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