3.彼女と一緒にお風呂だけれど、犬なのでえっちな話ではないです。

(さー、とシャワーが流れる音)


(ちゃぱちゃぱ、と水をかき混ぜる音)


「ええと……お湯かげんは、このくらいで……」


「シャンプーも、タオルも準備よし!」


「おまたせー! それじゃあ……」


「って、どうしてそんなに固まっちゃってるの?」


「お風呂、苦手じゃなかったよね?」


「このまえ一緒に入ったときは、気持ちよさそうにくつろいでたし……」


「……あー」


「私が原因かな? 見慣れない格好だもんね」


「これはね、水着、って言うんだよ」


「水に濡れても大丈夫な、水遊びをする服なんだ」


「別にその、海やプールに行こうって、アイツに誘われたわけじゃないんだけど……」


「もうすぐ夏休みだし、そういうこともあるかなって、新しいのを買って」


「いちおうね? 確認というか、いちど着てみなきゃって、そう思って」


「……似合ってる、かな?」


「リボンがついてるのとか、アイツの好みに、いちおう、合わせたつもり、なんだけど……」


「……って、そんなこと言われても困るよね!?」


「それじゃあ、洗っていくからね。あったかいお湯で、きもちいい、きもちいいしようね~」


「まずはシャワーで、全身を濡らして……」


(シャワーの水音)


「熱くないかな? うん……大丈夫そうだね」


「お背中、流していきまーす。ふふふ」


「こわくも、いたくもないからね~。ちょーっとだけ、おとなしくしててね~」


(シャワーの音が止まる)


「じっと我慢できたねー。とってもえらいねー!」


「じゃあ次は……この泡で、全身キレイキレイ、しようねー」


(ちゃぷちゃぷ、しゃかしゃか、とシャンプーを洗面器で泡立てる音)


(しゃかしゃか、と毛並みに泡をすり込む音)


「気持ちいいですか~? かゆいところはありませんか~?」


「なーんてね、ふふふ」


「たくさん泡立てて……やさしーく、ごしごしして……」


「しゃかしゃかー、ごしごし……」


「わわ、動いちゃだめだよ」


「もう少し我慢して……あわあわ……ごしごし……」


「こうしたら、かわいいかわいいお顔が、もーっとかわいく、きれいきれいになるからねー」


「頭にも泡をつけて……なでなでするみたいに、やさしく、やさしーく」


「あ、いいこと思いついちゃった」


「水と泡でまとまった毛を……こうして……くりくり~!」


「ふふふっ! とってもかわいい! 写真……スマホ持ってくればよかった~!」


「って、遊んでちゃいけないよね」


(シャワーの流れる音)


「それじゃあ、もういちど流していくからね」


「まずはかわいいお顔から……すこしだけがまん、がまんだよー」


「……うん、きれいになった!」


「お腹も、背中も、足元も……」


「ちゃぷちゃぷー、ちゃぷちゃぷー、気持ちいいね~」


「お尻も……ちゃぷちゃぷ、ちゃぷぷちゃぷ……」


「どうかな? 私、気持ちよくできてるかな?」


「ふふふ。おめめがまた、とろーんって眠そうになってきてるよ?」


「気持ちいいってことだよね? 嬉しいな……」


(ふわぁ、とちいさなあくび)


「つられちゃったのかな? なんだか私も、すこし眠たくなってきちゃった」


「これが終わったら、いっしょにお昼寝しよっか」


(シャワーの音が止まる)


「……うんうん、全身きちんと流せたね。おとなしく待てて、とってもえらいぞ!」


「あとはこの、ふかふかのタオルをかけて……」


「……あ。その前に」


「耳に息を吹きかけたら、体をぶるぶるっ! ってして、体のお水を飛ばすんだよね?」


「テレビでそう見たんだけど……本当なのか、試してみてもいい?」


(右の耳に、そっと小さく)


「ふぅ~、ふぅ~」


「……あれ? ぜんぜん動かない、ね?」


「……こっちじゃなかった、とか?」


(左の耳に、こんどは強めに)


「ふぅ~~、ふうぅ~~~!」


(ささやくように)


「どうかな……? ふぅ、ふぅ~~~」


「……っ!!! ぶるぶるっ! ってした!」


「かわいい~~~!!!!」


「お風呂のお手伝いまでできて、ほんっとうにえらいねえ~!」


「いいこいいこ、よしよし、よしよし」


「わっわっ、抱きついてきちゃだめだよ! 私までびしょびしょになっちゃう!」


「……水着だからいいのか。ふふ。本当に甘えんぼうさんなんだから」


「あっ、やだ、そこに手をかけたら、水着、めくれちゃうから!」


「……もう」


「えっちなのは、だめなんだよ? えいっ!」


(ぼふっ! とタオルを掛けられ、声が遠くなっていく)

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