12.若い林檎が熟すまで/翠雪

https://kakuyomu.jp/works/16818093083959942364

※短編のため、先に作品を読んでいただくことを強く推奨します。


【私がこの作品を手に取った理由】

 ジャンルは現代ドラマとなります。作者さんからの自己推薦があり、この作品を手に取っています。推薦がなかった場合でも、タイトルとキャッチコピーから、若い女性が何かの通過儀礼のような出来事をきっかけとして自立し成長するような物語をイメージできるため、この作品を手に取っている可能性はあったと思います。


【私がこの作品から読み取ったあらすじ】

 この小説は7000文字程度の短編であり、ネタバレ防止の観点から、作者さんのあらすじを引用とします。以下、引用です。


 高校生の林檎は、片田舎で催された祖父の葬儀に参列した。

 通夜振る舞いの最中に引き起こされた騒動と、会場にいる誰よりも派手な身なりであるアンズとの交流を通して、林檎は一つの解にたどり着く。


【私がこの作品に感じた良い点】

 高校生の林檎がよく知らない祖父の葬儀で、よく知らない多くの親戚に囲まれているところから、この物語は始まります。本家の人間だからこうである、分家の人間だからこうであるなど、前時代的な親戚付き合いに辟易する中、派手な身なりの知らない女性から馴れ馴れしく話しかけられ、自分は相手を知らないのに、相手は認知している薄気味悪さを不快に感じている様がありありと伝わってくるようでした。

 物語が進行するに従って、派手な身なりの知らない女性、アンズへの印象はどんどん変わっていきます。ある親戚からの醜い行動に耐えられなかった林檎は様々な感情がごちゃ混ぜになって会場から逃げ出してしまいました。アンズは林檎を追って二人きりになり、落ち着かせるとともに林檎を叱咤します。

 そのセリフにドキリとしました。誰かに助けてもらえるのを当たり前に思わない。だからこそ自分一人でも強くならないといけない。

 そのような正論を言うアンズはどんな人物であるのか、林檎との会話で鮮明になっていきます。それからもアンズの言葉は続き、林檎は決意を新たにします。その決意は健気で力強さを感じさせるものでありました。若い林檎はきっとこれから熟していくのでしょう。


【私がこの作品に感じた悪い点】

 まさにタイトル通り、若い林檎が熟すまでを体現しており、短くとも素晴らしい作品だと思います。

 一つだけ気になったことで、自分の読解力の問題かもしれませんが、アンズは望んだ男性に見初められることを第一としているような前時代的な価値観があるように感じてしまいました。林檎は今後どうなるかは分かりませんが、どちらかというと、それを良しとはしない今の時代の女性らしい価値観を持っており、そのズレによって手放しでアンズを格好良いと私は思えず、なんとなく物語の結末として惜しさが出ているような気がしました。

 私の勘違いのようにも思いますが、物語の結末や人物像について少し解説をいただけると理解がより深まりますので、差し支えなければお願いしたく思います。


【カクヨムに公式に投稿する場合のレビュー内容】

・ひとこと紹介

 まだまだ甘くなれない、そんな若い林檎に訪れたイニシエーション。

・レビュー本文

 上記の【私がこの作品に感じた良い点】を投稿します。ネタバレを含むとします。


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 レビューは以上となります。全く個人の感想なのですが、このレビューを見られた作者さんは【カクヨムに公式に投稿する場合のレビュー内容】を公式に投稿してよいものか、ご意見をいただければ幸いです。ちなみに私がレビューする時の星は必ず★★★です。


 また、この作品は「第二回あたらよ文学賞」の惜しかった作品として講評された作品でもあり、その文章も引用しておきます。以下、引用です。


 葬式の席でのいざこざを高い文章力で表現している。登場人物の中でも、アンズさんが魅力的で引き込まれた。他の親戚勢の古い空気感も含めて、描き方が上手かった。

 高校生の林檎が祖父の葬式で、大人の醜さやままならない現実などを知る話。アンズさんの格好良い生き方が、短い中で最大限に伝わってきた。葬式にしては派手な彼女の服装に対する林檎の解釈がとても素敵だと感じた。テーマである『青』を、まだ熟していないものとして捉えた物語の作り方も見事だった。


出典:https://note.com/eyedear/n/n874d57c3e54f

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