episode3-2 雨と南東風が運ぶ言葉
直が初めて光と会う前、依織から耳が聞こえないことは聞いていた。
正直、気まずさを感じていた。接し方もわからない。「伊織は大丈夫なのだろうか」とも思った。
実際に会った光は、直がイメージしていた人物像とまったくと言っていいほど違った。
よく喋る子だった。その名前のとおり、明るい子だった。
あまりに普通で、拍子抜けしたのを覚えている。
そんな光のことを直は、伊織とはまるで対照的だな、と思った。
C-8と書かれた教室の札を見上げながら、直は伊織と出会ったときのことを不意に思い出した。
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