真誠
遊星視点・3
※
「本当に、アルバがごめんなさいね」
「いえ、アルバさんの言う通りですし……むしろ、失礼なことを言ったのにここまで連れてきてくれたから」
感謝してます、と続けるとカリィはパチリと目を見張った。
だが、遊星としては本心からそう思っているのだ。いきなり空から落ちてきた、怪しさ大爆発な自分をアルバは助けてくれた。そんな相手に対して、いくら前世の影響とは言え、恩を仇で返すようなことを言ってしまったのだから。
「失礼なこと?」
「あっ……えっと」
つい口を滑らせてしまった遊星に、カリィが尋ねてくる。そして誤魔化しきれず、助けてくれたアルバに「離れろイケメン」と言ったと打ち明けたところ大爆笑されてしまった。
「あぁ、おかしい! まあ、外面の良いあの子には良い薬よっ」
「外面……? あの、アルバさんは優しいですよ?」
「あぁ、それはそうなんだけどね。そうじゃなくて……言動とか、素を出さないで大人ぶって。『帝』なのに舐められないようにって言うのは解るけど、私にも猫被ってたくらいだから……ごめんなさいね? 誉められた態度じゃないんだけど、あんな風に文句をつけてくること自体が随分と久しぶりなのよ」
「……そう、なんですか」
そんなカリィの言葉を聞いて、思い出したのはかつて暁に言われたことだった。
「好きの反対って、何だと思う?」
「えっ……嫌い?」
「俺は『無関心』だと思うな。好きな相手以外には、構う気持ちも時間も惜しいもの」
「……それは反対じゃなく、好き以外いらないってことじゃない?」
「!? あぁ、そう……うん、そうなんだろうな」
思ったままを伝えたら、暁は大きく目を見張り――何故だか頬を緩め、笑みを浮かべた。
(無関心になったと思うと、寂しいけど……距離を置いたのは、俺からだし。いつか俺が死んだって知った時、悲しまないってことだよね)
そう思い、次いでアルバへと思考を巡らせる。
嫌われていると思うと、流石に喜べはしないが――遊星は前世で無視をされて、基本いない者として扱われた。あの時に、暁の言っていたことが正しいと思い知ったのだ。
(無関心じゃないのなら……少しでも素を出して、アルバが息抜き出来るなら)
いいんじゃないかな、と思って遊星はアルバに挨拶をする。
教室ではまだしも、寮の部屋ではアルバは眉を寄せたり、顔を顰めたりもする。
(それでも、無視はしないんだ……律儀に返してくる辺り、本当に優しいんだ)
……そこまで考えて、遊星は自分の考えを改めた。
アルバのガス抜きもだが――遊星も、前世のように一人じゃないと確かめる為に、アルバに挨拶をしているのだと。
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