真誠

遊星視点・3



「本当に、アルバがごめんなさいね」

「いえ、アルバさんの言う通りですし……むしろ、失礼なことを言ったのにここまで連れてきてくれたから」


 感謝してます、と続けるとカリィはパチリと目を見張った。

 だが、遊星としては本心からそう思っているのだ。いきなり空から落ちてきた、怪しさ大爆発な自分をアルバは助けてくれた。そんな相手に対して、いくら前世の影響とは言え、恩を仇で返すようなことを言ってしまったのだから。


「失礼なこと?」

「あっ……えっと」


 つい口を滑らせてしまった遊星に、カリィが尋ねてくる。そして誤魔化しきれず、助けてくれたアルバに「離れろイケメン」と言ったと打ち明けたところ大爆笑されてしまった。


「あぁ、おかしい! まあ、外面の良いあの子には良い薬よっ」

「外面……? あの、アルバさんは優しいですよ?」

「あぁ、それはそうなんだけどね。そうじゃなくて……言動とか、素を出さないで大人ぶって。『帝』なのに舐められないようにって言うのは解るけど、私にも猫被ってたくらいだから……ごめんなさいね? 誉められた態度じゃないんだけど、あんな風に文句をつけてくること自体が随分と久しぶりなのよ」

「……そう、なんですか」


 そんなカリィの言葉を聞いて、思い出したのはかつて暁に言われたことだった。


「好きの反対って、何だと思う?」

「えっ……嫌い?」

「俺は『無関心』だと思うな。好きな相手以外には、構う気持ちも時間も惜しいもの」

「……それは反対じゃなく、好き以外いらないってことじゃない?」

「!? あぁ、そう……うん、そうなんだろうな」


 思ったままを伝えたら、暁は大きく目を見張り――何故だか頬を緩め、笑みを浮かべた。

(無関心になったと思うと、寂しいけど……距離を置いたのは、俺からだし。いつか俺が死んだって知った時、悲しまないってことだよね)

 そう思い、次いでアルバへと思考を巡らせる。

 嫌われていると思うと、流石に喜べはしないが――遊星は前世で無視をされて、基本いない者として扱われた。あの時に、暁の言っていたことが正しいと思い知ったのだ。

(無関心じゃないのなら……少しでも素を出して、アルバが息抜き出来るなら)

 いいんじゃないかな、と思って遊星はアルバに挨拶をする。

 教室ではまだしも、寮の部屋ではアルバは眉を寄せたり、顔を顰めたりもする。

(それでも、無視はしないんだ……律儀に返してくる辺り、本当に優しいんだ)

 ……そこまで考えて、遊星は自分の考えを改めた。

 アルバのガス抜きもだが――遊星も、前世のように一人じゃないと確かめる為に、アルバに挨拶をしているのだと。

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