切欠
遊星視点・2
※
前世でそんなことがあった遊星と、初めて友達になってくれたのはフェリスだった。
褐色の髪と、表情同様にクルクルと動く同じ色の瞳。
異世界・ティエーラにある特権階級・貴族の息子で、しかも爽やかな感じの美少年(暁やアルバより可愛い感じなので)である。
その為、声をかけられた時は申し訳ないが「また!?」と思わず身構えてしまった。
……もっとも、フェリス一人ではなくその友達であるイグレットとミーネにも声をかけられ、更に彼らに近寄らないようにというプレッシャーを感じなかったので、徐々に緊張を解いたのだが。
商人の娘で、他国へ行商へ向かう時の護身術感覚で魔法を学びに来たイグレットは、それでも平民というだけで下に見られ。ミーネもまた、獣人というだけで差別されている。結果、貴族なのに二人や平民で田舎者の遊星に話しかけるフェリスも浮いているのだ。
「このせ……帝都は、不思議だね。イグレットは美人で優しいし、ミーネも可愛くて頑張り屋さんなのに」
アルバに挨拶した後にフェリス達と合流し、遊星はしみじみと呟いた。つい『この世界』と言いそうになったので内心、冷や汗をかく。
「帝都だからって訳じゃないと思うけど……ユーセイの田舎は、随分と平和でのどかなのね」
「……あり、がと」
「ユーセイ! 俺は、誉めてくれないのっ?」
そんな遊星の焦りには気づかず、紺色の髪と瞳(アニメみたいなカラーリングは流石、異世界だと思う)のイグレットが苦笑し、ミーネが丸い頬を赤く染めながらお礼を言う。
そしてスルーする形となったフェリスが、負けじとツッコミを入れてきて――見た目は整っているが、フェリスは小説などで出てきた『いじられキャラ』に属するんだろうか?
(『いじられキャラ』だと、もっと女の子大好きな気もするけど……そうなると、アルバは『最強主人公』? まあ、あれだけイケメンで強いんならそうだよなぁ)
そこで、遊星はいつの間にかアルバのことを考えていたことに気がついた。
「まあ、
「そ、そう言われると恐縮しちゃうけど」
イグレットの言葉には、笑って誤魔化すしかない。無詠唱で練習したのは、ティエーラでの呪文詠唱(アルバのようにピンポイントではなく、その前に『炎の精霊よ集え』だの『風よ荒れ狂え』だのがもれなくつく)が、遊星からすると厨二としか思えず悶え死ぬからだ。
(……また、だ)
また、アルバのことを考えてしまった。
とは言え、仕方がないとも思うのだ。
ギルドで鍛えられて、最強の『全帝』だというアルバの実力を痛感した。そして『全帝』としてだけではなく正体を隠し、魔力を抑えていても首席を取り、クラスで一目置かれるアルバを遊星は素直にすごいと思ったのだ。元々の才能もだろうが、神様からチートを貰った遊星とは違い、本人の努力でそれだけの実力を身につけたのだから。
更に、同性の遊星ですら見惚れてしまう美形である。
元々が綺麗な顔をしているが、ああして笑うとまた格別だ――そこまで考えて、遊星は内心、ため息をついた。
(そんな相手に嫌われてる俺って、逆にすごいよな。敬語は使わなくていいって言われたけど、アルバは敬語のままだし……うん、嫌われてる。ガッツリ距離置かれてる)
遊星がアルバに嫌われていることは、周囲には気づかれていない。
唯一、知っているカリィはギルドでお世話になった時に気づかってくれたが――同じ年ではあるのだが、あのツンツンした態度を見ていると子供の癇癪のようだと思うのだ。
……そう思い、距離を取られ続けても挨拶を続けているのはカリィと昔、暁に言われたことがきっかけなのだけれど。
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