　結局何をしに来たのか。突然やってきた直哉と菜摘は何故か空気感に馴染み、ひよりと泰人はモックを食べていた。

「ポテトちょーだい」

　直哉がひよりの手からポテトを奪おうとすると、すかさず菜摘が首根っこを掴む。

「コッチを食え」

　有無をいわせぬ圧に「ちぇ」と拗ねれば泰人のポテトに手を伸ばした。

「塩屋さん？」

　前々から察するところがあったが、どうやら泰人は大食いであり、食い意地はご覧の通り。珍しく自分のために怒ったような声色で話す泰人を見て、ひよりは嬉しそうにスマートフォンから顔を上げた。

「あげる」

　自身のポテトを泰人に手渡せば「ふふーん」とでもいいたげな顔でどこか自慢げだ。そんな子供らしい姿に、近所のオジサンのような感覚でシミジミ頷く直哉である。

「ありがとうございます！」

　ルンルンで食べる泰人は、本当に子供の扱いが分かっていると、また直哉がシミジミ頷く。流石にこのドヤ顔を前に、ポテトを差し出されたら突き返す自信のある菜摘は素直に泰人をすごいと思っていた。あんなに狂気的で子供みたいな泰人の姿を見た菜摘には、まさかこんな対応ができるとは思わなかったのである。

「あ、そーだ。ひなち、ちょっといい？」

　泰人とひよりを見る菜摘。この3者の姿を見ながら、胡座をかく直哉。膝の上に肘を立てれば頬杖をついた。

「教団、俺にくれない？」

　笑顔でそういう直哉に、「ふふふっ ♪」と怖い笑みを浮かべる泰人に、「やらかした...」とでもいいたげに額に手を添えてため息をつく菜摘。

　モックのバーガーとポテトを挟んで行われる大規模な交渉が行われているなんて、誰も思わないことだろう。

　ーー教団フクロウとひより、泰人の運命はいかに

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい