第17話:知り合い
直哉は創造神に敬虔そうに見えた。しかし、等しく人殺し...なんて事を言うのだから実際はそうではないのかもしれないと奏人は目を見開いた。スラムから外の世界の常識を知らずに出てきた奏人からすれば、直哉のその言葉が一番しっくりくる。
直哉の言葉を理解しているのか、ひよりは何もいい返さない。
「俺と直哉は家同士が知り合いだった訳だが、お前らはどこで知り合ったんだ?」
何か、何か話題を変えないと。ひよりが今にも泣いてしまいそうで奏人は必死に考えていたが、菜摘が先に口を開いた。話題が変わりそうでホッとした。
「え、だから俺の妹...」
「開闢の魔女から逃げ出した先で、坊さんの家の人に保護されたから」
やっぱり妹って嘘じゃん。そう菜摘と奏人は心の中で呟いた。
「もう妹で良くない?お風呂も一緒に入った仲だよね?」
そういう直哉に完全に引いているような顔色を浮かべる面々。やっぱりこの話題も違ったのかもしれないと後悔した。
「ロリコンですよ。使用人の人に凄い止められてたじゃないですか」
「当時、坊さん24歳で私がまだ6歳のときです」と言われ、6歳児と24歳の他人が風呂に一緒に入っていたという衝撃で二人は何も考えられなかった。
「えっ、というか、魔女様って今何歳ですか?」
やっと口を開いた奏人の第一声。
「今、15か16くらい」
「16歳だね」
多分このくらい、と呟くひよりに直哉がすかさず口を挟む。どおりで幼いわけだと驚きよりも納得がいった泰人。ということは...
「僕のほうが2つか3つ上ですね」
十和子が19歳で僕はその一個下だったはず...と呟く。
「いいね羨ましい。俺らもう30代後半が見え始めてるオッサンだからね...菜摘今いくつだっけ?」
「オッサンはお前だけだ。俺は24」
「わお、ピッタリ10歳差」
この場で直哉が最年長どころか、ひよりと直哉では2倍どころではない差がある事実。
「警察、呼びましょうか...」
「これは警察沙汰だろ。いくら癒しの魔女でも許されん」
犯罪の匂いしかしないとスマートフォンに手を伸ばす。
「考え直せ。俺が捕まったら第一正教会が止まるぞ?いいのか!?何千、何万もの人間の命が脅かされるのだから困るからね!?」
人質の数が多いんよ、と諦めた顔でスマートフォンを置いた。
「それで、なんで泰人は坊さんと...菜摘さん?を連れてきたの」
いつまでも直哉に取り上げられたスマホが返ってこず、本題を急かすひより。その言葉に菜摘も奏人も何と話そう...と完全に忘れていた。
「公園でデスゲームしてたから俺が連れてきた」
すると「デスゲームとは」と聞きなれない単語に興味が湧いたよう。
「何してたの?」
キラキラとした目で菜摘と奏人を見た。逆に菜摘と奏人は直哉を睨んだ。せっかくの助け舟かと思えば、売られただけ。
「えっと。殺s...」
「喧嘩だ。今ヤンキーもののアニメとか流行ってるしな」
泰人が馬鹿正直に状況を話そうとすれば、菜摘が上手いこと誤魔化す。「うげ、菜摘そういうとこあるよね」と直哉が菜摘を見て顔を歪める。息を吐くように平然と嘘を話す姿に流石の奏人も目が泳ぐ。
「いいな。喧嘩」
「私もやってみたい」なんてことを言うのだから「あっ、16歳だもんね」と色々キラキラして見えるお年頃を考えて周りの男性陣はほっこりした。もちろん喧嘩という物騒なワード以外。
「ひなちーと俺なら五分じゃない?」
喧嘩の話題まだ広げるのかよ、という目で見たところで空気は読まないタイプの直哉が突っ走る。
「塩屋さん羨ましいです...。僕も魔法が使えればなぁ〜。魔女様は魔女ですし、魔女同士じゃないと喧嘩も相手にならないですよね〜」
ブスッとした顔で羨ましがる泰人。
「直哉、お前誰にも勝てないだろ。奏人っていったか。魔女だからって全員が全員強いわけじゃない。このヤブ医者は治癒力に魔法を全振りしてるから身体能力は並以下だぞ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます