第四話 賄賂
転校生の金持 携が教室にいる時、彼の周囲には常に冷たい空気が漂っていた。そんな中、彼にとって唯一の心の支えである中村 雫は、持ち前の明るさで携に近づこうと決心していた。
ある日の午後、雫は携に話しかけた。「携くん、今度の週末、少し遊びに行かない?学校の近くに面白い場所があるんだ。」雫は気軽に言ったが、その表情には一抹の不安もあった。携が拒否するのではないかという思いが、雫の心にあったからだ。
携は驚いた様子で雫を見つめた。「遊びに…?」彼の目には戸惑いと疑念が混じっていた。
「うん、ただの遊びだよ。みんなで行けば楽しいし、気分転換にもなると思うんだ。」雫はにっこりと笑って続けた。
携はしばらく黙って考え込み、やがてゆっくりと答えた。「わかった…行ってみようかな。」
それからの数日間、雫は携と遊ぶ計画を立て、当日の準備を進めた。週末がやってくると、雫は携を迎えに行くために彼の家の前に立っていた。携の家は目立たない場所にあり、外観も華美ではなかったが、そこには雫にとっての期待が込められていた。
「おはよう、携くん!」雫は明るく挨拶し、携を見つめた。携は少し緊張しながらも、頷いて外に出た。
二人は町を歩きながら、雫が紹介する場所へと向かった。雫が言う「面白い場所」とは、町の外れにある広大な公園だった。そこには様々な遊具や美しい風景が広がっており、自然と心が落ち着く場所だった。
「ここが僕の好きな場所だよ。時々、一人で来てリラックスしてるんだ。」雫が言いながら、公園の広場に到着した。
携は驚きと感動の表情を浮かべた。「こんなに広くてきれいな場所があるなんて知らなかった…」
雫は笑顔で携を案内し、様々な遊具や景色を紹介した。二人は広場の中央にある大きな滑り台で遊び、携は久しぶりに心から楽しそうな笑顔を見せた。
「こんなに楽しいのは久しぶりだよ。」携が楽しそうに言うと、雫は嬉しそうに頷いた。「良かった。僕も楽しんでるよ。」
公園での時間は、日が沈むまで続いた。雫と携は様々なアクティビティを楽しみ、互いの距離が少しずつ縮まっていった。
夕暮れ時、二人は公園のベンチに座りながら、日が沈むのを見ていた。雫はふと、携に向かって話しかけた。「今日は楽しかったな。ありがとう。」
携は静かに微笑みながら、鞄から一つの箱を取り出した。「これ、ありがとうのお礼だよ。」その箱は上品で高級感があり、まるで贈り物のようだった。
雫は驚きながら箱を開け、中には美しい宝石が輝いていた。ダイヤモンドのように光る宝石が、箱の中で艶やかに輝いていた。
「これ…?」雫は驚きの声を上げた。
「お礼の気持ちだよ。君が僕を楽しく過ごさせてくれたから。」携は照れくさそうに言った。
雫は宝石をじっと見つめ、その後、携に微笑みかけた。「ありがとう、携くん。こんなに素敵なプレゼントは初めてだよ。」
その日の帰り道、雫は興奮を抑えきれず、友人たちにその出来事を話した。彼は言葉を選びながら、携からもらった高級な宝石の話を始めた。
「ねえ、聞いた?金持くんがすごいプレゼントをくれたんだって!」雫の話は、次第にクラス中に広がり、多くの生徒たちが興味津々でその話を聞いていた。
噂は瞬く間に広まり、クラス全体に知れ渡ることとなった。特に、金持家の富については話題が絶えず、それに伴う期待と羨望の目が、携に向けられるようになった。
その結果、携の周りには次第に「近づきたい」と願う者たちが現れ、彼を取り巻く環境が少しずつ変わり始めた。しかし、その変化が、どのように彼の人生に影響を与えるのかは、まだ誰にも分からなかった。
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