第4章 帝都滅亡の危機
第1話 豊かな仲間たち始動
「な、何だあれ? ヴェラよりデカいぞ!?」
エリザが巨大な塊を見て驚愕の表情を浮かべる。
「べ、ベヒモス!?」
アルは思わず声を上げる。「王都図書館の魔物図鑑に載ってた……」
「あれはやっかいだぞ。重装歩兵なんぞ鎧ごとぺちゃんこだ!」
アストラは混戦模様の戦場を見る。あまりの巨体に山か何かと勘違いしているのか、誰一人ベヒモスに気付いていないようだ。
「む、何だあれは……」
戦線から離脱した騎馬隊を率いるミゲイルがようやく異変に気付いた。「重装歩兵隊を撤退させろ!」
ミゲイルは騎馬隊を率いて戦場へ舞い戻る。重装歩兵隊は予定外の大将軍登場に戸惑いを隠せない。
「重装歩兵隊撤収! すぐに戦線を離脱せよ!」
騎馬隊が口々に重装歩兵たちに声を掛ける。
「騎馬隊も深追いはするな! 重装歩兵の退路を作ればよい!」
ミゲイルが手当たり次第に近くの魔物たちを薙ぎ払いながら騎馬隊に指示を出す。こうしている間にも脅威はどんどん近づいてくる。ゆっくりと津波が押し寄せるように……。
「あのままじゃミゲイルたちが押し潰されちまう!」
エリザが悲痛な声を上げる。「こうなったらあたしらがやるしかない!」
「そうね、魔物の群れは帝都軍に任せて、ベヒモスは私たちでやっつけちゃいましょう!」
デリルはそう言った後、上空を見た。「うーん、飛行する魔物は全然片付いていないわね。ネロくん、あっちはお願い!」
「わ、分かりました! 先生も気をつけて!」
ネロは背中から弓を取り出しながらデリルに言う。「しかし、数が多いですね。弓だけじゃ無理かも……」
何しろ矢は数が限られているのだ。いくら王都一の弓使いネロでも、矢が尽きればどうにもならない。
「私がミゲイルさんのところに飛んで行って、弓兵の矢をここに持ってくるように頼んでおくわ」
デリルがエリザと共に
「お願いします!」
と言いながら近づいてくる飛行系の魔物たちに弓を構えた。
「ヴェラ! 僕らも行こう!」
アルがヴェラに声を掛ける。「背中、貸してくれるかい?」
「当たり前じゃ。お前の為ならいくらでも飛んでやるわい!」
ヴェラは嬉しそうに笑うと、全身から閃光を放つ。竜と化したヴェラはアルに頼られたのがよほど嬉しかったのか、戦場に響き渡るほどの
ギィヤァァァァッ!!
耳を
「おい! なんか巨大な竜が現れたぞ!」
重装歩兵の一人がヴェラを指差す。何しろ自分たちが
「むぅ、ヴェラ殿……。皆の者、心配いらん! あれは味方だ!」
ミゲイルが混乱する帝都兵たちを
「ミゲイルさん、ネロくんのところにありったけの矢を集めてちょうだい!」
デリルが上空からミゲイルに叫ぶ。
「ネロ? デリルさんの弟子の少年か?」
ミゲイルは不思議そうにデリルの飛んできた方を見る。そこには次々と飛来する魔物を撃ち落とすネロの姿があった。「むぅ、あの少年、あれほどの腕前だったのか! なるほど、うちの弓兵など足元にも及ばんな」
「急いでね!」
デリルはそのままベヒモスの方へ飛んで行く。
「ミゲイル! あのデカブツは任せとけ! あんたらはたくさんいる魔物を駆逐してくれ!」
エリザが去り際にミゲイルに叫ぶ。
「
ミゲイルは剣を
指示を受けた弓兵たちは一瞬カチンと来たが、遠くで次々と堕ちていく魔物の群れを見て、素直に腰にある弓袋から矢の束を掴んで騎馬兵に渡した。受け取った騎馬兵が急いでネロの元に矢を届ける。
「矢を持って参りました!」
騎馬兵は小脇に抱えた矢の束をどさどさとネロの後ろに下ろす。
「ありがとうございます! 後は任せて下さい!」
ネロはちらっとだけ振り返り、にっこりと微笑む。すぐに数本の矢を掴んで弓袋に入れ、次の矢を構えてすぐさま射る。
急降下で襲い掛かって来た怪鳥の
「そんな、ほとんど狙ってないじゃないか……」
騎馬兵はネロの弓の腕前を
「ネロ、君は弓の腕前も相当だな」
アストラは感心してネロに言う。「デリルの弟子にしておくのは勿体ない」
身体が人の頭くらいある蜂のような魔物が集団でネロに飛び掛かる。しかし、ネロの矢は四、五匹いっぺんに貫通してあっという間に数を減らす。
「くっ、やっぱり矢が足りない……」
ネロは魔物を見渡しながら足元の矢の残数を見て
「ふむ、そろそろ手伝ってやるか」
アストラはそう言って
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