第10話 迫りくる魔物の群れ
「あ、あんた、私を殺そうとしてアサシンを雇ったの!?」
デリルはアストラに掴みかからんばかりに詰め寄る。
「いや、あれは手違いだ」
アストラはきっぱりと言う。「シルヴィアには別の任務で妖精の村に行かせたのだ。お前たちと会ったのは偶然だ」
「手違いってあんた、私は死にかけたのよ!」
デリルが食って掛かる。
「私も報告を受けた時には驚いた。シルヴィアが
アストラが神妙な面持ちで言う。「デリルに死なれては困るので慌てたぞ」
「まぁ、アストラ。私の事を大事に思ってくれていたのね?」
デリルは機嫌を直して微笑む。
「……。お前が死ぬと魔王の封印を解ける者がいなくなるからな」
アストラが冷たく言い放つ。「お前がきちんと手順に沿って封印さえしていれば、私一人で封印は解けたんだが……。ん? どうした、デリル?」
アストラは
「私が死んで困るのは魔王の封印の事だけなの!?」
デリルは再びアストラに詰め寄る。
「他に何があると言うんだ? お前が死んで困る事?」
アストラは心当たりが無さ過ぎて脳みそをフル回転させてみた。「別に無いぞ」
「あっそ。もういいわ!」
デリルはくるりとアストラに背を向けた。
「アストラさん、さっきから聞いているとあなたは魔王の封印を解こうとしてませんか?」
ネロはアストラに尋ねる。
「うむ。このままでは遅かれ早かれ魔王は解き放たれるからな」
「そこがよく分からないんだよな。放っておいても解き放たれるのに、その前に封印を解くってのはどういう事なんだ?」
エリザが言う。封印を強化しようと言うなら話は分かるが、封印を解こうとするのは理解しがたい。
「心配するな。その後の事はちゃんと考えてある」
アストラが言い放つ。
「まぁあんたの事だから私たちがいくら考えても考え付かないような解決策を用意してるんでしょうね」
デリルはため息
「少なくともそのまま魔王を取り逃がすような真似はせん」
アストラは断言する。「だが、お前たちにも手伝ってもらわねばならん」
アストラはデリルだけではなく、その場にいる全員を見回した。
「ミゲイル大将軍!」
突然、ミゲイルの元に兵士が駆け寄ってきた。「こ、郊外に魔物の群れが出没いたしました!」
「なんだと!?」
ミゲイルは報告を受け、見張り台に駆け上がる。かなりの大群が土煙を上げてこちらに向かってきている。「まずは皇帝の警護を固めよ! 残りの者はついてまいれ!」
「なんか騒がしいわね?」
デリルが騒然としている城内の様子に気付いた。
「む、いかん。とうとう始まったか!」
アストラはゲストルームの扉を開く。「おい、お前ら、行くぞ!」
「え? ちょ、何なのよ!?」
デリルは手招きするアストラを追う。他の者たちも戸惑いながらアストラとデリルを追いかける。帝都城から出ると、城下はさらに騒然としていた。
「あっ、ミゲイルさん!」
アルが馬に乗ったミゲイルに気付く。
「む、お前たちも来たか。あれを見ろ!」
ミゲイルが郊外を指差す。「魔物の群れがこちらに近づいている!」
「え? うわっ! うじゃうじゃいるじゃない!」
デリルが大群を見て思わず叫び声をあげる。その多くはゴブリンやオークなどの雑魚モンスターだが、森の中から出てきたと思われる四足歩行の魔獣もいる。
「とうとう魔王の悪しき波動に触発されたか!」
アストラが群れを見て舌打ちした。「所詮は
「全軍、城壁の外へ!」
ミゲイルが指示を出すと、騎馬隊がゾロゾロと城門から外へと進軍を始めた。重装歩兵も後に続く。帝都を取り囲む城壁の外に帝都軍が整列していく。
「私たちも行きましょう!」
デリルは仲間たちに声を掛け、城門から外に出る。
「城門を閉じよ!」
ミゲイルは帝都軍の最前列に立つと、
「とりあえず帝都軍に戦力を削ってもらおう」
アストラはデリルたちに耳打ちする。
「全軍前進!」
ミゲイルは重装歩兵に歩調を合わせるようにゆっくりと進軍を始めた。魔物たちも怯む事なく近づいてくる。「矢を放て!」
ミゲイルの指揮で無数の矢が魔物たちに降り注ぐ。数匹はばたばたと倒れたが
「なんで急所を狙わないんだろう?」
ネロは何の狙いも無く放たれた矢を不思議そうに眺めている。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるという奴だが弓矢の天才ネロから見ればおかしな光景なのだ。
「騎馬隊、突撃ぃ!」
ミゲイルが先頭になって騎馬隊が一気に駆け込んでいく。ドドド……と地響きを立てて魔物の群れにあっという間に辿り着くと馬上から槍や剣を使ってゴブリンやオークを次々になぎ倒していく。
「おおっ! いいぞ、ミゲイル!」
エリザが興奮気味に騎馬隊の奮闘を見つめる。しかし徐々に大軍に飲まれて勢いが無くなっていく。
「このままじゃ、騎馬隊が全滅しちゃいますよ!」
ネロが不安そうに戦況を見守る。そこにゆっくりと重装歩兵が辿り着く。動きは遅いが守りの堅い重装歩兵が辿り着いたのを見計らって、騎馬隊はそのまま駆け抜けて戦場をいったん離脱する。
「この調子だと私たちの出番は無さそうね」
デリルが帝都軍の善戦ぶりを見て
「そうも言っておれんらしいぞ」
アストラがそう言って戦場を指差す。大群の後ろに巨大な何かがゆっくりと近づいて来ていた。
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