第3話 聖都来訪
デリル一行は聖都のある森にやってきた。先日は急ぎだった事もあり夜半過ぎの来訪となったが、今回は明るい時間帯に到着できた。聖都はエルフたちの主要都市で、人間界で言えば王都や帝都のような場所である。
「オータムちゃんに借りた
デリルが言うと、
「先生、 相手は聖都のトップ、聖女様ですよ。 ちゃん付けは
ネロが
「ほう、あのマントはエルフの持ち物じゃったか。あれにも随分手を焼いたわい」
ヴェラが激闘を思い出して渋い顔をする。人間なんてあっと言う間にチリと化す
「別に良いじゃない。オータムちゃんも私の仲間みたいなもんだし」
デリルが言うとエリザが食い付く。
「えっ? デリルが仲間認定するって事はそのオータムってのも……」
どうやらデリルが仲間認定するのは何か一定の基準があるようだ。粗暴なエリザ、天然なマリー、竜の化身ヴェラ、そしてエルフの聖女オータム。はてさて一体どのような共通点があると言うのだろう?
「ところで、ここって本当に聖都なんですか? ただの森みたいですけど……」
アルは辺りを見渡しながらデリルに尋ねる。随分と年季の入った森のようだが、都どころか丸太小屋すら見えない。
「ふふ、アルくん。聖都は別の空間に存在するのよ」
デリルはなぜかドヤ顔でアルに言う。「マーガレット、聖都に入れて頂戴!」
(あら、やけに騒がしいと思ったらデリルさんたちでしたか)
森の異変に気付いた聖都入出管理者マーガレットが
(マーガレットさん、その節はご協力ありがとうございました)
ネロが疎通の魔法で返す。疎通の魔法とは、言葉を介さず意思疎通をする魔法である。補助魔法の一つで、ネロには使えるがデリルには使えない。
(いえいえ、聖女様に謁見出来たのはあなた方の力ですよ)
「マーガレット! 聞こえないの!? 」
デリルは大声で
「先生、ちゃんと話してますからちょっと静かにしてて下さい」
ネロはデリルに注意をする。
「あら、そうだったの」
デリルはばつの悪そうな顔をして黙った。
「なんだなんだ、デリルはネロの言いなりだな」
自分はアルの言いなりの癖にエリザがデリルを冷やかした。端から見れば似た者同士なのだが……。ヴェラはエリザに突っ込みたくてむずむずしたが、
(聖女様にお借りした魔道具をお返ししたいんです。聖都に入れて下さい)
(……ネロさんは大丈夫だと思いますが、くれぐれも聖都で問題を起こさないで下さいね)
前回、なかなか聖都に入れようとしないマーガレットに業を煮やして森に火をつけようとしたデリルを思い出してマーガレットは念を押した。
聖都に転送されたデリルたちは入口の前に立つ。以前来た時は夜遅かったので気付かなかったが、明るい時間帯の聖都はエルフたちでごった返していた。
「うわぁ、凄いわ。こんなに大勢いたのね」
デリルは大通りを行き来するたくさんのエルフたちを見て圧倒される。きゃっきゃと走り回る子供たちや笑顔で見守る大人たち、とても平和な雰囲気である。
「大聖堂まで行くのは大変そうですね」
ネロは黒山の人だかりを見てため息を
そう言って聖都の入口にある見張り小屋を兼ねたマーガレットの屋敷へ向かう。玄関のドアを開け、マーガレットが笑顔で一行を招き入れる。
客間のソファに座り、ネロが初めての三人を紹介する。
「マーガレットさん、こちらが勇者フィッツのご子息のアルさんです」
アルがマーガレットに頭を下げる。
「こちらが二十年前、先生と共に魔王を討伐したエリザさん」
エリザも大人しく頭を下げる。
「それからこちらが、新しく仲間になったヴェラさんです」
ネロはあえて臥竜というワードを使わずヴェラを紹介する。
「ヴェラさんって、あの有名なヴェラさんですか?」
マーガレットにドワーフの集落の長たちと同じような反応をされ、うんざりといった表情でため息を
「今はアルと共に旅をする時々竜になれるだけの
相変わらずどこで覚えたのか分からない謎の言い回しでヴェラが言う。
「今はあたしらを乗せて世界中を飛び回ってくれる頼もしい仲間だ」
エリザもマーガレットを安心させる為、ヴェラをフォローする。いつも喧嘩ばかりしているエリザにフォローされてヴェラはなんだかこそばゆい。
「そうですか。それにしてもお仲間を救出するだけでなく、伝説の臥竜まで仲間に加えてしまうとはとんでもない人たちですね」
マーガレットは感心するやら呆れるやらといった表情で言った。
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