第17話 ちかすいどう 【戦闘&ダンジョン回】2081文字

 まずは2週間ほど、作戦のために身を隠すことになった。在中軍の増員が帰還するのが2週間後。新聞で報道されているし、極端に延長するということも無いだろう。


 頭目と団長は同行できない。目立ちすぎるのもあるし、他に団の仕事もある。何より連中の同行を徹底的に警戒する役割も必要だった。


「それでは親方。頼みます……!」

「火付けは任せろ。お前の部屋で寝泊まりしてやるから。姫と後輩を頼んだぞ」

「うむ。行こう」


 俺達は1度バラバラに寮を出て、先日強盗犯が逃げ隠れしようとした地下水道に集合していた。

 ここは試し切りに手頃な妖魔や動物が多い。クリスも試作品を引っ提げて、今回は同行してくれる事になった。


 「私が先に行くわ。もう居ないと思うけど待ち伏せや追跡を警戒して、レーナちゃんは暗視をお願いね」

「承知しました」


 姫さんに暗視をかけてもらい。真っ青に暗闇を見通せるようになった。通路の奥には大ネズミが一匹いたが、目が合うと大急ぎで逃げていく。


 隊列は暗視持ちのラランさん、クリス、姫さん、俺が殿で斥候が前後を囲む。前にも後にも進みやすい。


 通路を4回曲った先で、ラランさんが足を止めた。手信号で身を隠すように指示。奥からはブチブチ肉を喰む咀嚼音がする。

 

「グレイブマンティスね、珍しい」


 姫さんの背丈の倍はあるだろうか。巨大と言って良いカマキリが、先程の大ネズミを捕食している。駆け出しでは束になっても敵わない相手だ。俺も剣だけで無傷で倒すのは厳しい。

 ラランさんは手信号で俺と姫さんに後方警戒を促すと、クリスに目配せした。

 2人でやるつもりだろう。通路は狭い。姫さんの魔法も打ち込み辛いなら、妥当だな。ロング・ソードを正眼に構える。


 僅かにマンティスの複眼がこちらに見え始めた瞬間。鳥のさえずりのような音が響いて、その複眼が弾け飛んだ。

 反射的にマンティスは両手の鎌を引き、痛みに呻くように、やたらめったら振り回し始めた。


「ふぅんっ!!」 


 クリスが突撃して盾で襲いかかる。同時に、盾を裏から貫通して、レイピアの一撃が火花を散らせた。上手く狙えなかったのか、甲殻に弾かれたな。

 マンティスがたたらを踏んだ瞬間。いつの間にか間合いに入っていたラランさんが、もう首を跳ねていた。剣筋どころか身体のこなしすら見えなかった。


「後方!! マンティス2匹!!」


 俺が言い終わる前に、またしても複眼が弾けた。今度は音もなく4つすべてだった。間髪入れずに正眼を崩し、頭が白む間もなく、頭部を狙ってロング・ソードで突き仕留める。


「姫さん!」

……波動を、示せえスクテラリマ!!」


 剣で殴り抜けるように通り抜けた。クラゲのような円形の水が、マンティス2匹をメキメキと押し潰して、水路方向に押し込んだ。

 そのまま耐えきれなくなったのか、手すりごと水路に吹っ飛ばされて、2匹とも流されて行った。


「おー……ゆっくりなようで、派手ねぇ」

「磨いた石。ですか?」

「────── へぇ。今度やり合ってみる?」


 一瞬、殺されるかと思った。少し無作法だったかも知れない。ラランさんはニヒルに笑いながら、研磨した石を見せてくれた。

 見えた訳じゃなかったが、おそらく跳弾だ。

 初弾はマンティス自身の甲殻に反射させて、複眼を弾き飛ばした。鳥のさえずりのような音は反射した際の音だろう。


「勘弁して下さい……投げたのか指で弾いたのかも、見えなかったんすよ?」

「そう。挑んでみても良いわよ。赤壁ナイン越え」

「いくらクック頭目に憧れてても、自滅行為っすね……」

「そうかしら。100回に1回は勝てて、その1回を手繰り寄せてきそうだけどね」

「その1回を絶対に油断してくれないじゃないですか、ラランさんは」


 残心を怠らず。周囲を警戒しながら軽口を飛ばし合う。姫さんの呆れるような声に、とても満足そうにラランさんは笑みを浮かべた。


「マナギ」

「やはりだめか?」

「狙うのは無理だった」


 鱗のように装甲を連ねて、何箇所か裏側から剣を突き出せる設計の試作盾なのだが、やはり狙って打ち込むのは無理だったようだ。


「無理矢理いつもの武器で試したが、やはり銃での護衛向きだな」

「うむ」

「上に戻ったら、軍部に預けて使って貰おう」

「ここからは周りをよく見て行きましょうか。冬越えの卵があったら事だわ」


 8回ほど通路を曲がって大きな水路に出ると、一見すると大きな泥の泡にしか見えない物が、壁に張り付いていた。


「アレ、よく見ると卵だな」

「ええ。レーナちゃん燃やせる?」

「何度か当てれば、イケると思います」


 姫さんは炎の呪文を詠唱して、張り付いていた卵を燃やした。下は水路だったので、残骸は水路に流されて行った。






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