第14話 うろこのだん 【ざまぁ(推測)回】2254文字

 姫さんが所属する冒険者団クラン。「鱗の団」本部は、フリッグスの冒険者ギルド支部の1区画にある。多くの竜車が行き交うフリッグスの中央大通り駅近くで、レンガ造りで近代化を施された冒険者ギルド支部とは、趣が大きく異なっている。


 この街がまだ、ただの小さな交易街に過ぎなかった頃。団長の趣味で彼女の私財をこれでもかと投じ、いにしえの古城を模した作りは、利便性はともかく、荘厳で、威厳ある風格を備えている。


 自由都市同盟領。有数の観光地としても有名で、いざという時の避難場所や、子供好きの団長の意向で、託児所。大きな孤児院まで併設されていた。


「ちゃお〜☆ いらっしゃ〜い」


 本部の応接室で、子どもたちと戯れている団長たちと世間話していると、姫さん、クリス、タロッキ。そして、姫さんのご両親も、俺の願い通り顔を出してくれたようだ。


「レンちゃんお久。元気してた?」

「お久しぶりです。太母様。本日はお日柄も……」

「あ~良いの良いの、そんなかたっ苦しいの外で十分。じゃあ、お菓子食べたいひとー!!」


「「あーいぃ!!」」

「今日は特別にぃ、2回食べて良いわよー! 手を洗って食道にごーごー!!」

「「ごーごーさーいえさー!!」」


 団長の号令で子供たちは我先にと食堂へ、誰一人残らず駆け抜けていく。後からついて行った団長もすぐ戻ってきた。


「相変わらずですね……」

「相変わらずよ。みんな素直で良い子だもの。おいたしちゃった子もね」

「そりゃアンタにとってはそうだろうがな……ま、話進めてくれ。マナギ」


 クック頭目に促されて、俺はクズ紙を全員が見える机の上に置いた。

 全員で覗き込んだが、紙にはただ1言。ジャーニーゲームとだけ書き綴られていた。


「この言葉に、聞き覚えは?」

「うわー……」


 内容を知っているのだろう。ラランさんが頭痛に耐えるように、眉間を押さえて声をあげた。他に知っているのは団長と頭目だけだった。


「まだ、推測の段階だが。これが金持ちの間で行われていて、強盗が襲撃したメンツの中で、誰かが標的にされている可能性が高いと判明した」

「え、そもそもジャーニーゲームって、なんですか?」

「シンプルに期限内に誰がどこを旅するかを、莫大な金額を賭ける違法ゲームだ。金持ちが主に参加する、な」

「私が以前関わっちゃったのは、標的にされた人は死体でもOKの最悪のゲームよ。細かいルールは違うんでしょうけど」


「ふざけている」

「レン……」


 ラランさんと俺の説明に、姫さんの御両親であるレンさん、ローザさんはこれだけで察してしまったのだろう。青筋を立てて机の上の紙を睨みつけている。


「あの場にいた中で、まず親方はあの足だ、ほぼない。最近来たばかりのタロッキもあり得ん。クリスを標的にすれば、まず間違いなくリインカー医療教会が本腰で動く。店員の2人は可能性が無いではないが、戦闘力はあっても頻繁に遠出する趣味もなければ役職もない、となると……」


 全員の視線が姫さんと俺に集中した。つまり俺と姫さんが賭けの対象にされている可能性が、最も高いのが現状なわけだ。


「憲兵隊の所に頭目と顔を出したが、口をきける強盗犯2人はダンマリを決め込んでいるようだ」

「おいたしてくれたものねぇ、私の部下に。でもこれ、すっげえ対処が面倒なヤツでしょー?」


 団長が子供のような表情を歪めて、呆れるように唇を尖らした。子どもに酷いイタズラやいじわるでもされたような顔だが、彼女の言う通りだった。


「憲兵隊に言いつけても証拠は見つけ辛い。仮に見つかっても賄賂等で影武者立てられたら意味がない。言い方悪いが連中は、ただコマを見つめて気軽に賭けりゃ良いってわけだ。いい気なもんだよな。厄介極まりねー」

「ぐるる……♪」


 頭目も眉根の下がった辟易した顔で、テーブルの上の紙を見つめている。唯一言葉が通じないタロッキは、どこか不安そうだったので団長が椅子に座らせて、首筋を抱えて撫でてくれていた。


「以前はどう対処したんでしょうか。ラランさん?」

「没落貴族の子が賭けの対象だったんだけど、当初話して貰えなくって。国外まで逃亡させて、見送った後に判明しちゃったのよ……」

「まんまとしてやられたわけか。らしくねえぞ、ララン」

「面目ないわね。差し当たってできる対処は、この街を出るか、籠城するか、地下にでも潜るかかしら……?」


 とてもご両親の前で口に出せないが、俺はともかくフェアリスである姫さんは、その身体自身に計り知れない価値がある。

 毛や爪の欠片は膨大で希少な魔力を秘めているし、血液だって彼女自身が希少な魔術触媒として使用している。


 反吐が出ること極まりないが、最悪殺すついでに剥製にでもして高値で売りつけるか、遺体をコレクションしようとする輩もいるかも知れない。


 故に、ただ逃げ出すのは絶対に無しだ。例え姫さん自身を傷つける事になっても、戦うと決めた。


「いや。もう1つ方法はある」


 俺はテーブルの上の紙をゴミ箱に放り投げながら、姫さんの方を見つめた。


「姫さん、俺とウソをつくことに、自信はあるかな?」

「え…………?」





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