第5話 インターネッツ【ギャグ回】2359文字

 ウフフフフ。さあさあ今宵もやってきたわよ! 楽しい楽しいお夕食と説法のお時間!

 彼はいっつも目をキラッキラ☆させて聴いてくれるから最高だわ! アタシってばいっつも口下手だから、上手く説法出来ないけど、そこは御愛嬌よね?


 しかも今日のお夕食はなんと、姫の手料理、手料理よぉ! 世の男性垂涎間違いナシの我が天使による手料理! 最っ高ー☆

ああ、焚き木あったかい……春先だからまだ冷えるわねぇ……スープが身に染みるわぁぁ☆。


「美味いな」

「そうですか、ただ保存食のお豆スープを温めただけですけど?」


 姫ったらツンツン〜☆ ああもう口が動かない! もっと気の利いた事を伝えたいのに、神官の修行が厳しすぎてチクショー!

 あ、でもマナギが、さりげなくこっち見てる。間違いなくジェラってる。……良いわね〜ゾクゾクしちゃう。でも姫を奪う気なんて欠片もないから安心して。でもこのままも良くないから、話題を変えましょうか。


「コンビニの事、聞くか?」

「お、もちろん」

「では最近新しく判明した説法を1つ。異世界のコンビニには、なんと……」

「なんと……?」


 あらやだ、姫ったらそんなゴクリと息を飲んじゃって、そんな姿もめっちゃプリティー♡ でも実際、衝撃の事実なのよね。これ。


「武器防具は、取り扱っていないらしい」

「え……?」

「本当、ですか…?」

「事実だ」

「そ、そんな……、だって、だってさ、爺さんが、何でもあるって……!」

「事実なんだ、マナギ」


 そんな悲しいお顔をしないでちょうだい。アタシだって衝撃だったのよ。でも武器が売って無いって、そんなに異世界の武器屋って、別口で繁盛してるのかしら。同業者としては羨ましいわ〜。


「え、でもじゃあ異世界の武器事情って、そもそもどうなってるんです?」


 鋭い。姫ったらホント優秀よね。だからこそ魔術師ギルドの研究者推薦蹴ったの、すっごくあのボンクラお茶会老害共に、根に持たれてるんでしょうけど。


「国それぞれだ」

「いや、それはそうでしょうけど……」

「幅が違う。王自ら罪人を射殺する国もあれば、国民全員が寸鉄1つ帯びぬという話も聞く」

「え、違いすぎません?」

「うむ……。聖地の国やもしれん」


 思うに、王侯貴族たちだけが暮らす国とかあるんじゃないかしら。俗に言う聖地化して周りを属国で守ってるヤツ。


 それならむしろ持たせないのは、一応納得できるわ。他にも山とかにめっちゃ囲まれて必要……は、あるわね獣害酷いし。うーんもっと高位神官のお勉強するべきだったかしら。独学の推測だし。


「あー……。光の剣。光の盾。光線の出る銃。独りでに戦ってくれる剣。鉄機兵みたいな鎧。勝手に飛んでくハンマー。絶対に当たる光の矢。欲しかったなぁぁぁ……」


 あらやだこの子たら、コンビニってお店に夢いっぱいだったのね。何このひっどい罪悪感。ちょっ、止めて姫! そんなゴミを見下すような目でアタシを見ないで! そんな目で見られたらアタシ死んじゃう! 死ぬぅ!

話題……そう、話題を変えなきゃ!


「よ、よし、他の説法もしよう。インターネッツは知っているか?」

「いんたーねっつ?」

「なんです、それ?」

「聞くに、箱の中の水鏡にデンキを流し、デンパという神託で、絵や文字などを交信する秘術、らしいのだが……」


「交信術ですか。私とグリンみたいな。でも水鏡って、術でやるとすごい難しいですよね?」

「そうなのか、姫さん?」

「そうですね、実際にやって見ましょうか」


 姫は伐採して削り作った新品の杖で、まずまんまるの水玉を宙に浮かせて、マナギの姿を映してみせた。おぼろげに分かるくらいの形ね。


「で、もっと多くすると……」


 今度は水量が本人と同じくらいの大きさで、精巧な形に映り始めたわね。……流石は名高いノルンワーズ仕込み。精度も見事な物だわ。


「大きい方が楽なんですよ。やっぱり魔道具、神具の類ですか?」

「いや、キカイという高位施設のようだ」

「あ、じゃあ大っきいんですね。やっぱり」

「高位施設のキカイってあれだろ。水車とか機械とは別の」

「うむ。つまり神聖な祭具を持つ者のみ許された、ある種の聖域、祭事場だな」

「で、それなんに使うんだ?」

「神託を得るのでは無いかと推測されている。名の由来は、蜘蛛の糸が由来らしい」

「本当ですか〜? あなたの話す由来って、なんかズレてる事が多いじゃ無いですか」


 あらやだアタシったら信用が無ーい! でも仕方ないのよね。なにせ異世界の事だから、合ってるかどうかなんて、誰にもわからない事だし。でもそこが面白いのよね。


「ズレてたって良いじゃないか。俺は武器防具が売ってないってのはズレてて欲しいぞ、大いに!」


 ふふっ、流石はアタシの相棒。この欲張りさんっぷりはフィッターらしくて大好きよ。姫もなんだかんだ楽しそうだし、今回の説法は概ね成功ね。


「さて、では歩哨に立とう」

「良いのか」

「姫は眠るべきだ」


「はいはい。魔力回復の為に先に休みますよ。お休みです」

「うむ」


 姫ったら一番魔力使ったし、手を貸すってのに、杖の伐採まで頑固に1人でしたものね。

 それに……ふふっ、二人っきりに、してあげたいじゃない? 軽く姫を見つめて目配せしたけど、何か厶ッと返されちゃった。うーん、ガンバレって意味だったのだけど、これ誤解されてるわね。

 まあいっか。食器を洗って、グリンちゃんと歩哨しようっと。





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