第8話

 次の日の朝。体は重たかった。

 一見、昨日は僕の心の傷がそこまで深くないように思えた。しかし、実際はクレーターよりも深い傷を負っている。さらにその深い傷を負わせた人がその学校にいる。一体どんな顔をして僕は学校へ通えばいいのか。分からない。


 学校に行きたくない。そう思ってしまう。

 しばらくこうやって目を瞑っていたい。


 そうやって僕は布団の中に潜り込んだ。しかしすぐさま、その布団は剥がされる。

 そして僕は眠い目を擦りながら、体を起こす。


「何だよ……全く……うん?」


 そこには、臍を丸出しにしたクーロンが立っている。

 辛うじて、パンツやブラジャーは履いているから大事なところは見えないようになっているが。それでも、ほぼ半裸。


 あぁ、やはり。この人は女性であった。細みの体。真っ白なスベッとした肌。そして、ちゃんとある胸の膨らみ。


「なっ、なっ」


 それと同時に僕は困惑していた。こうやって、女性の下着姿を見たのはこれが初めてかもしれない。クーロンはキョトンとしたような表情をしている。それに対して、何故か半裸姿を見ている僕の顔の方が真っ赤になる。


「お前。何故、服をきていない!?」


「だって寝起きだから」


 意味が分からない。

 普通、男の前に現れると言うことになったらちゃんと服を着るものではないか。


「ダーリン。学校に行く時間」


「いやいや」


 何故、そんな平然とした表情を出来るのか。

 と奥の方からドタバタとこちらへ向かってくる足音が聞こえる。


「クーロンさん!」


 そして咲夜が両手に制服を持って、僕の前に現れた。

 彼女は、慌てたような表情をしていた。


「ご主人様! 何を見ているのですか!?」


「いや、何を見ているというか」


 これは僕が悪い、と言うことになるのだろうか?


「ご主人様。どうかお許しを」


 と咲夜は床に制服を置く。そして、そのままタオルをぎゅっと握り、そのまま僕の方へ駆け付ける。それを僕の目の周りにグルグルと巻いた。


「痛い、痛い!!」


 咲夜は過剰なぐらいにギュッとそのタオルを僕の目に巻きつけた。

 そのまま眼球が飛び出してしまうのではないか。そう思った。


「咲夜さん! 痛いって」


「いいですか、ご主人様! 今見たものは全て記憶から消去してください!」


 と、まぁ。

 朝、そんなドタバタ騒動があった。この事件を起こした当の本人は


「そんなことよりもお腹すいた」


 と何故か、蚊帳の外であった。

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