第5話
地球よりもずっと何億光年。その先にボッチ星という星がありました。
そこの周囲数億光年には星が何一つなく、その星は太陽系なのか、どんな場所に属しているのか。そこの星の住人は誰も分かりませんでした。
そんなボッチ星に住んでいるボッチ星人は基本1人で過ごしています。生まれた時も1人。死ぬ時も1人。決して他人と混じり合ったりなどしませんでした。
ボッチ星人はいつも1人で生きていける。そう思っています。だから決して他人と交わることなどしません。そんなある日。とあるボッチ星人はふと、寂しいという感情が芽生えました。不思議なことでした。通常、ボッチ星人はそのようなことを思うはずありません。
ともあれ、そのボッチ星人は違う惑星に行こう。そう決意をしました。ボッチ星人の文明はかなり優れています。だから遠くの惑星に行くなんていうことは屁の河童です。だけれども、足りないものがありました。それは勇気です。
ボッチ星人には勇気というものがありませんでした。確かな文明はあるのだけれども、それを科学の進歩に使おうだなんて、そんなことを考える人はいなかったのです。怖かったのです。
結局。今まで1人生きてこれたから。他人の助けなどなくても生きていけたのだから。
もし、ここで他人と関わって自分が変わってしまう。それが怖かったのです。
だからほんの数センチ。ジャンプをするだけでもかなりの勇気が必要でした。
だけれどもそのボッチ星人。きっとあの星の向こう側にもっと大きな幸福がある。そう信じて、宇宙へ飛び立ちました。そして……その星人は数億光年。宇宙へ彷徨いました。
それは決して楽な旅ではなかったです。その途中。ずっと暗闇で一人ぼっち。いや、一人ぼっちなのは何も変わらないのだけれども。だけれどもいつも感じている寂しさとは違いました。その寂しさには漠然とした不安がありました。寒さがありました。そしてそのボッチ星人は、少しでも早く温もりが欲しい。そう思うようになります。
それからしばらくして。ボッチ星人の宇宙船から一筋の光が差し込んできます。
思わず、彼は窓の外を見ました。そこには、真っ青な星。地球と呼ばれる星がありました。
彼は喜びました。ついに、ボッチ星以外の居場所を見つけることが出来た。そう思ったのです。
そして地球という場所に着陸しました。
そこで、東京という広大な街に降り立ちました。ボッチ星人は驚きました。歩いている人々。その人たちは皆、ボッチ星人と同じ姿だったのです。どこからどう見ても、それは仲間でした。
更に言語も。全く違う星の住人のはずなのに。言葉が理解できます。
ボッチ星人は喜びました。
そして周りの人に話しかけました。
しかし。周りの人は誰もボッチ星人の言葉に足を止めてくれません。おかしい。
そう思い、ひたすらボッチ星人は叫び続けました。
しかし、どれだけ叫んだとしても。誰も、足を止めてくれません。
そしてボッチ星人。気づきます。もしかしたら自分というのは存在しないものではないか。自分というのは元々、この世にいないものだったのか。だからずっとボッチだったのかと。
そしてボッチ星人は泣きました。
こんなことであれば地球に来なければ良かったです。地球にさえ来なければこんな思いなどすることなかったのに。寂しいという感情など抱くことなかったのに。
そんな中。ピタリ。足を止めてくれる人がいました。
その人はじっとボッチ星人の方を見ています。そしてそっと微笑んでくれました。
その人は手をゆっくりと差し伸べます。
果たしてその人はボッチ星人を救う天使なのか。それともボッチ星人を殺してしまう鬼なのか。その時はまだ分かりませんでした。
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