国王候補の脱落
カゲキとアヴノが国王選抜を辞退した。カゲキはこれからふたりの赤ん坊を育てることを告げた。赤ん坊の生みの親については最後まで口を割らなかった。カゲキは国王候補の権利を失った。
驚くべきは、それでもカゲキの信用が地に落ちないことだ。島民に話を聞いても「何か事情があったのだろう」というコメントしか聞かなかった。
当初「王はカゲキ以外考えられない」と太鼓判を押していた公務員の男性に再び話を聞いた。
「ただただ残念。他に誰がいるんだという感じ。誰の子どもを引き取ったのかぐらい言えばいいのに。そこもカゲキらしいと言えばそうなんだけど」
案内役のドゥンさんが、「じつは私もカゲキを支持していたんです」と筆者に打ち明けてくれた。
「私は彼の今後が少し心配ですね。御斗田島では国王候補を育てる家庭には生活の支援としてお金が入るんですよ。それで立派な家を建てたりとか、遊んで使い切っちゃう人もいます。それで国王候補を剥奪されて貧しくなる人なんかもいるんですよね。まあカゲキの家はそこまで豪遊もしていなさそうですけど」
それ以上に彼にとって辛いのは抑制剤の支給がなくなることかもしれない、とドゥンさんは続けた。
「彼は純潔を守るために発情期を抑制剤でしっかりコントロールしていました。それがなくなるのは本人的にもしんどいんじゃないですかね」
一方、国王候補を諦めたアヴノに対する支持者の声は意外にも好意的だった。店のオーナーは「応援してなかったわけじゃないけどね、心配だったのよ、あの子が王になるなんて。店にずっと居てくれるならその方がハッピー」と言った。
「ところで、カゲキちゃんはもう普通の男の子なわけでしょ?アタシの店に来てもらおうかしら。お金も貰えなくなっちゃうらしいしね」
今回のことについて、唯一の国王候補となったチギにも話を聞いた。彼は「ちょっとまだ自分の気持ちがよくわからない」と言いつつも真摯に取材に応じてくれた。
「候補が僕だけになったってだけで、島に来るアルファが僕を選んでくれるかどうかはまだわからないんですよね?正直選ばれる自信はないけど、もし王になれたらやりたいことはあるから、頑張らないとな」
控えめだが責任感のある発言だった。
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