繁華街
アヴノが指名されている間、この店のオーナーにも話を聞くことができた。彼は七十代の移住者で、五十年前から御斗田島で暮らしているという。
「アタシがこの島に来た頃は王様の子どもちゃんがそれぞれ自分でお客を取ってたの。ぼったくられたーとか、客に殴られたーとか、トラブルも多くてね。これじゃあ誰も幸せにならないってことでアタシと仲間で力を合わせて店を出したの。治安もずいぶん良くなったわ」
アヴノを店のボーイにスカウトしたのも彼だ。アヴノのことを「初めて会った時から本当に綺麗な子」と褒め称えていた。
「でも危なっかしくて。あの子オメガでしょ。ここでは妊娠なんかご法度なのに。最初は渋ってたのよ、ひとりでやれば全部もらえる所を、店に入ったらピンハネされるって。アタシが説得して今はこうなってるってわけ。今でも遊んでるみたいだけどね。本当に馬鹿な子。あんなんで王様になれるのかしらね」
彼はアヴノにとって母親のような存在なのかもしれない。
この店のボーイの半数は王の子どもだ。やはりその美しさを買って指名する客は多いようだ。アヴノの次に指名数が多いというボーイも、国王候補ではないが王の子どもで、やはり整った容姿だった。彼の名はスアン。四種類の名のうちのひとつだ。
スアンはアヴノを「尊敬する先輩でライバル」としつつも、「この仕事の上ではアヴノさんが劣る部分もある」と断言した。
「アヴノさんはオメガで妊娠の可能性がある。レベチのイケメンだし発情期に敢えて抑制剤を使わないで客を取る方法もあるけど、アヴノさんには常にリスクが付きまとうわけです。その点俺らにはその心配が全くない。中出しし放題なわけです。まあ性病は怖いけど、やっぱ生がいいって客も多いし俺らは有利ですよ。ぶっちゃけアヴノさんが焦る場面もあると思いますよ。王様になって引退すればそういうのからも解放されるしいいんじゃないですか。アヴノさんいなくなれば俺がトップになれるし」
この島では性病より妊娠の方が怖いのだ。
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