3 クラス決起会(1)

 高等部1年2組の決起会は、小ホールで行われた。


「1年間、頑張りまっしょう〜!」

 リーダー格の武田くんがグラスを掲げる。


 この桜花蒼奏学園は、中等部高等部が存在する。

 学年4クラス、約120人のうち4分の1は、中等部から上がってきた生徒だ。

 この朝川奈子もそうだし、真穂ちゃんも。

 剣様も中等部からいらっしゃる。

 剣様の中等部の頃の麗しさと言ったら。

 まだ消えていない子供らしさというものが、消え入りそうな精霊のような、妖精のような儚さという形を取り剣様の中に存在していたのだから、みんなが見惚れるのも無理はなかった。

 今だって、時々朧げに見え隠れするその子供だった頃の儚さが剣様の中に見え隠れすると、その微かに浮かぶ面影に息が止まってしまいそうになる。


 そんなわけで、殆どは顔見知りというわけである。


 こういったイベントを取り仕切るのも、既に勝手知ったるというものだ。

 誰がクラス委員になるか、誰がイベントの準備をするか、既に大体決まっているのだ。

 あの武田くんだって、その隣に居る佐藤さんだって、顔見知りだし、あの辺りがこういうイベントに力を入れるだろうなっていうのは、もう既にわかっていた事だってわけ。


「かんぱーい!」


 高校入試を経て新しくこの学園のメンバーになった8人のフォローをしながら、私達は食事にありついたのである。


 小ホールに大きめのテーブルを出し、ホールの端にブッフェ形式で料理を並べておく。

 好きなだけ飲んで好きなだけ食べて欲しいという事だ。

 メニューも豊富で、お肉にお寿司、チョコレートファウンテン、ケーキ類も数種類。見た目に楽しいものが多い。


「今回のケータリング先、お寿司屋さんもあるからお寿司が美味しいわ」

「あらほんと。美味しいわね。今度家族と伺ってみようかしら」


 相手は子供とはいえ、なかなかの金持ち揃いなので、料理店側にも力が入るというものだ。




 そんな中、剣様ファンクラブの面々は、ケーキとお茶を持ち寄り、テーブル一つを占拠して、情報交換に勤しむことになった。

 このクラスのファンクラブメンバーは、奈子も入れて6人。

 クラスの中では多い方だと思う。

 剣様の一つ年下という、学年が違うからなかなか日常的にお姿を拝見する事が出来ない、けれど存在としては程々に近いこの学年が、剣様ファンクラブの中でも一番メンバーが多い学年だ。


 そんな中、クラスの大半がホールの巨大モニターでパーティーゲームを始めた頃、話し合いは始まった。


「今年はこのメンバーだね。よろしく、皆さん」

「ええ。特にファンズサーティーが2人いるこのクラス。強力ね」

「何よ、古参ぶっちゃって」


 険悪になりかけたところで、

「では、知っている事がある人は居る?」

 と、小泉が声をかけた。


 一瞬、テーブルはしんとなる。

 それぞれが、それぞれの様子を窺う。




◇◇◇◇◇




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