第11話 一緒に行きたい
自分の気持ちを言葉にしたら、なんだかスッキリした。
「ひなこ」
「……ん」
おどおどと顔を上げたひなこから眼鏡を外してシャツの胸ポケットに収納。
「あっ」
「強行突破するから」
「え!?」
足がもつれるひなこを、半空中キャッチ。
おりゃぁー
真の脳筋とは俺様のことだっ。
市松人形、骸骨、フランケンシュタインにピエロに斧人間達……最早、花子さん的要素は欠片も無く、ただの仮装お化け屋敷じゃねぇか……が執拗に追ってくるも、ぶっちぎる。
ゴール!
暗闇から明るい廊下へ。目がチカチカするけど、ひなこは大丈夫か?
赤い顔してぽうっとしてる。
可愛い。
あ、眼鏡返さねぇとな。
そうっと掛けようとしたら、目が合った。
ほうっとしたのかな。一瞬うるりとして、鼻をスンと鳴らす。
「あ、ありがとう」
「お前の召喚獣だからな」
驚いたように見上げてくる。
「ほんとうは……」
言いさして止めると、いきなり「じゃんけんぽい」
慌てて出したチョキは撃沈。でも……
「今日の後夜祭。一緒に行きたい」
「おう、一緒に行こうゼ」
ようやく、ひなこの表情がぱあっと明るくなった。
「やったっ」
俺も、心の中でガッツポーズだ。
「う〜ん、ふぅ~ん、はぁあ〜」
いやさぁ、いくら悩んでも、細目で目つきの悪い俺が絶世の美女になるわけねぇんだからさ。軽ーくいこうぜ。
「本当は一人で眺めたかったんだけど、仕方がないっ」
!?
一体何の覚悟決めてるの?
コワイんだが。
じゃらんと化粧セットを広げると、ぬりぬりグイグイ、チョイチョイ。
クワッツ、ぺとっ。
こねくり回されること三十分以上。
なんということでしょう……
これが、俺!?
白い艶肌、真っ直ぐな鼻筋、ほんのり桃色の頬。
切れなが二重にアメジストの瞳。
薄い唇は押さえた紅色。
後ろで一つに結った長い黒髪に狐耳。
白の着物に赤い袴。狐の尻尾。
いや、これ、女装じゃなくて……
「もはやコスプレじゃねぇーか!?」
「えー、大和は魔法少女だし、二組の健は戦艦美少女だって。流れはコスプレ一択だよ」
くっ、そうなのかっ。
って、ちょっとマテ。思い出せ。
最初にひなこが言っていた言葉を。
『本当は一人で眺めたかったんだけど』
おいっ!
この格好を一人で眺めたかっただと?
ぶるりっ
背筋を冷たい汗が流れる。
俺、これからもコスプレさせられるのかよっ。
断固断る!
ぜってぃ、拒否ってやる。
と思っているんだけど……周りの評価は上々。ひなこのどや顔も絶好調。
コンテスト結果?
任せろ。ぶっちぎりの一位だゼ。
意外性、コメディ要素の評価が断トツでなっ。
なのに……何故かひなこの機嫌が悪い。
やっぱり彼女のスイッチは良くわかんねぇよ。
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