第九話 孤児院

 孤児院での生活というのは元来助け合いだ。環境で言うとホームステイとかシェアハウスに近いかもしれない、孤児院の人家族と助け合って生活していく、そこに変化というものはなく、私たちのような孤児は養子にしてくれる家族が来るまで同じ普遍的な毎日を繰り返すのだ。

 ここ凪でもやることは変わらない、風呂を沸かして、順番で入って、料理の手伝いをして、布団で一緒に寝て、そんな毎日だ。私はその生活をしているうちに、戸籍というのも手に入れたし、家族というのも探してもらっている。

 孤児院の孤児達とは、施設と同じく知り合い以上友達未満といった関係性だ。それは私が友達になりたい云々の問題ではなく、それは私の見た目や、私の事情に関する物だったのが大きい。私の見た目は他の子供から見ればかなり異質だ。殆んど黒髪黒目の空間に灰色の髪と魔女の目と碧の目のオッドアイを持つ私がいるのは異質なのだ。目立っているともいえる、ただこの国ではそれが普通であり日常だ。私はこの国ではというよりこの世界全体では少し距離を置かれることが将来でも多々あると思う。それは性格や行動云々ではなく、自分とは違う見た目という物の一種の違和感や差別的考えのもと生まれる物だ。それに此処は孤児院という空間だ、将来的に養子になって離れ離れになるような子と友達以上に仲良くしても仕方ないだろう?私は施設ではそういう友達を作っていたけど、今その子はどこにいるかはわからない。私のように孤児になって、それから誰かの養子になったのかもしれないし。あの組織によって殺されたのかもしれない。または、別の組織に入っているなんてのもあるかもしれない。けどそれらは想像であり事実ではない。けれど、私は彼女を死んだと思っているし、それを疑ってもいられない、それは彼女が施設から出た時点で死というものは付き纏ってくるようなものだし、餓死などで死んだ可能性もある。高度に発展した現代であるからこそ、戸籍や身分がない子どもは社会に纏わりつく虫であり、それが意図せず潰されていてもおかしくはない。だから私は彼女を死んだものとして思っている、その方が気持ちが楽だからだ。勿論生きていたら嬉しいし喜ぶ、だけど生きていると思っていざ死んでいると知ったら..それほど残酷で悲しいものはないでしょ?私は私を守るために彼女を心の中で勝手に殺すし、探す。いつか生きている彼女に会えたら成長した姿や、体験したこと、人生を語り合って見たい。

 こういう時だけは、楽な方に流れても罰は当たんないと思う。

 話を変えて孤児院での生活はそこそこ楽しかった、ゲームもあるし、子ども達と遊べる。同年代や年下と言って知力があまりない子供だけど、近くで見ると私よりもよっぽど無垢なのがわかる。

 一緒にトランプをしたり、ゲームをしたり、テレビを見たり、映画を見たり、さまざまな経験を外でするたびに、私はこの世界の甘いところに堕ちて行っているのだと実感する。

 時々散歩と偽ったり、皆が寝てる間に訓練施設に行っている。それは体が鈍るからだ、剣はずっと振ってないと技が落ちるように、筋肉は筋トレをサボると無くなっていくように、私の身体能力も鈍るのだ。だから定期的に調整を行わないといざという時にからだが動かなくなる。最悪魔術のゴリ押しもいいが、魔術は根本的に強くなっているわけではないので根本的に解決されない。

 訓練施設に着いたら一番最初にするのは、腹筋、腕立て、背筋、柔軟などの基礎運動だ。これをする事でからだが変にならない、いわば基礎中の基礎だ、次に剣の素振りをする、何回も何回も、自分が納得するまで振ったらあとは、銃を取り出し狙いが当たるかどうか調整をする。一発目はハズレ、二発目で補正、三発目で当たり、それ以降は当たり続けた。

 次に短剣、人型のロボットの様なものにナイフで傷を与えていく、初めは脇、次に股、最後に首、血液が一番通るところに入れていく、動く人形にも小さい体を使って生かしていけば急所に当てていくことができる。むしろ小さい方がやりやすいかもしれない、一つ一つの攻撃は浅いが、その一つ一つを急所に当てていく、そして消耗を狙う。わかりやすいじゃないか?

 一通り体を動かしたら栄養ドリンクを飲む、体に浸透していくのが感じる。汗が気持ち悪い、孤児院に帰ったら一番風呂は私がもらおう、時刻はもう五時に回っていた。此処に5時間もいたのだ、小さい頃は体感時間がが永く感じると言うものだけど、私は例外なのかもしれない、それは普通の精神をした子供のことを言うのか、私は色んなものが混ざっている。これでは子供の感情というのは理解できないのも仕方ない。


!}{%^=*%~門の創造


 私は詠唱をして、此処と孤児院のトイレに門ができるのを思い浮かべる。

 門が現れた、中に入るとそこは誰もいないトイレだった、すぐさま門を消す。何事もなかった様に、浴槽に行き、シャワーを浴びて汗を洗い流す。


服は魔術を使って元に戻す、髪もだ。


^%€+£*%^洗濯<>><%#^€£乾燥


 あとは服を着れば元通りだ。私はリビングに行き、適当な本を読む。時間を潰す。

 暫く時間が経つと子供達の前に孤児院の人が降りてきた、舞香さんだ。


「あら、セレネアちゃんは朝が早いね、今から朝ごはん作るからよかったら手伝ってくれないかな」


「わかった。」


「それにしても手際良くなったね」


「毎回手伝ってたらそりゃそうなりますよ」


「そうだね」


 舞香さんはハニカム様に笑う、私に気を遣ってるのだろうか、私は返す様に笑う、歪かもしれないけど。それが今の幸せだから。


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