南雲家編
第八話 凪
歩く、歩く、歩く、門の創造は意外にも使いにくいらしい、イメージする場所は明確でなければいけないし、場所と場所に門を設置すると言うのもイメージが必要だ。これは普通に難しい、例えば昔見た写真の場所があったとする。そこにをイメージして門の創造を使うともしそこで工事が行われてて景色が少しでも違っていたら、これはバグる。だから明確にイメージできるものでないといけないのだ。
ともあれ、私は記憶にある。刻み込まれた記憶の中の場所にいった。調布の夜の情景、私は夜の街を歩く、歩く、一つの情報を頼りに。
調布にある孤児院、私はそこへ向かう。そこには組織の手が届いてないから、そして今の私には戸籍がない、捨て子として戸籍を作ってもらわなければならないのだ。
—っ⁉︎
立ちくらみだ、最近色々ありすぎた。体に改造手術を施して、人を20人ころして、血液を飲んで、魔女になって、施設から物を漁って、脱走して、そして今だ。
少女はここ最近で色々なことを体験しすぎたのだ。その分疲れを溜め込んでいてもおかしくはない、もしかしたら施設という気が休まらない環境にずっといたからかもしれない、あそこから抜け出せて気が緩んだのが原因かもしれない。とにかく少女は疲れすぎたのだ。
—バタン、
重いものが倒れる音がする。考えなくても分かる、私だ。大丈夫だ、後ろから倒れるのは避けれた、後は立ち上がる..だけ。..?力が入らない、力を入れようとしても体がそれを拒むかのように動かなくなった。体がこれ以上の酷使を拒絶しているのか、頭が休めと警告しているのか、何わともあれ動かなくなってしまった。
(..眠い..)
少女は不覚にも思ってしまった。その小さい体は鉛のようになっており、体の力は魂が抜けたかのように抜けきっている。そして視界は夜景色だ、目を瞬きすることすら怠くなってしまって、閉じた目は動かない。そんな朦朧とする意識で私は必死に起きようとするがそれはもう叶わなかった。
ゆっくりと視界はフェードアウトしていく、やがて視界が完全に黒に染まり切ったころ、少女はもう寝ているのだ。
●視点を変えて
夜道を歩いていく、ここ1週間分の食材を集めた所で私は孤児院への道を辿っていた。
歩く、歩く、歩く
明日のご飯にはどんなアレンジを加えようかな?、あの子の嫌いな食べ物はどうやって克服させられるかな?とそんな他愛もない考えをしながら歩く、元来独り言をしない性分なので、その夜道には足音だけが木霊する。
—コツ、コツ、コツ
靴の心地いい音だ。この音は物静かな夜を歩いているものの特権なのかもしれない、私はそんなことを考えていると。何やら人のような物が横たわっているのが目に入った。
疲れているのか確認してみるが、早く近寄る。突然の心臓発作で倒れている場合を懸念してだ。
「っ⁉︎大丈夫ですか?苦しくないですか?」
そんな声を焦ってかけると
—スーー、スーー、スーー
寝息が聞こえた、そこで私は一安心する。大事には至ってなかったと。彼女を見直すとすごく綺麗だった。目鼻立ちは整っていて、病的なまでに白い、身長は130cmほどで小さく、子供だと言うことがわかる。異常な色をした髪と目は私の興味を引くには充分だった。
「灰色の髪に、オッドアイ?」
そうまるで宝石のような目をしているのだ。アウイナイトと言う宝石を知っているだろうか?彼女の片目はまさにそのような目だったのだ。それとは違いもう片方の目には違和感があった、いや、歪だった。さまざまな色が混同しているようなされど混ざり合ってはいない。緑、青、紫、ピンク、様々な色が混同している目だった。それだけに私は彼女に惹きつけられてしまったのだ。
気づいた時には手が出てしまっていた。彼女をおんぶしていたのだ。落ちないように気をつけて、孤児院に向かって歩いて行ったのだ。
●視点は戻って
目が覚めるとそこは知らない天井だった。
「あっ起きた?」
知らない声、知らない顔全てを理解するのに時間はかからなかった。あぁ、運ばれたのだと。
「ここは..」
次の言葉を言おうとすると、それを押しつぶすように。
「此処はね、凪って言って孤児院なんだ、貴方は此処の近くの道端で倒れてたからなーねぇに運ばれたんだよ」
なるほど、私は知らない間に目的地に到着していたわけだ。
「それでね、取り敢えず貴方の境遇を聞きたいんだけど、話してもらえるかな?」
私は少し考える。流石に施設のことは言えない。ならば捏造を話す。
私は捏造を捏造とバレないように、辻褄が合うように、調べられても問題ないように、慎重になりながら話した。
「そっか..大変だったね、よかったならなんだけど、此処で新しい家族が見つかるまで一緒に暮らさない?」
「..うん、」
私は頷く、私は手に入れたのだ。居場所を、住居を、自分の環境を。これで安心して寝ることができる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます