第六話 魔女への昇格

あぁ、また覚めてしまった。


 どうやら私は最近寝付けないらしい、割り切っていても仕方がない、また眠ろうと目を閉じる。強引に眠るのもいいのだが、それでは身が持たないからなるべくやらないようにしている。やるのは本当に、本当に病んで寝付けなくて、発狂してしまうくらいに精神が病ったときだ。


*£€^%#スリープこう言ってやるのだ。


 どうやら最近準備に立て込んでいるらしく、部屋で待機することが多くなった。その時は決まって魔術の構築についてのイメージをする。

 この世界での魔術は、人外、悪魔から伝わったものだという。それには理由があり、元々の魔術というものの基本は魔法と言うものであり、魔法は神のみが扱える代物だということだ。では魔術はなんなのか?というと、神の技術を盗用した、神の魔法に似た事象を起こすことができる技術だ。それの起源は悪魔が人間に魔術を教えたことが始まりだという。

 それは別にいい、問題はその魔術は作れるというものである。それは人間が作れるのではなく、人外がだ。人は人間という生物の域を出れず、魔術というものを作り出すことができない。その理由は2つ、一つは人間界では魔術はあまりメジャーではないということ、二つ目は人間にそもそも魔術を作り出すほど賢い者は現存しないということ。一つずつ紐解いていこう、この世界にはまず異能アビリティというものが存在する、それはダンジョンが発生したことによってこの世界全体に出現したダンジョンの魔物を倒すことによって一番最初に得られる人類の対抗する力だ。でも魔術は違う、はるか昔から人々が陰ながら受け継いでは消失して、受け継いでは別のところに流されて、魔導書は訳に訳を重ねられと言った感じで伝承してきた技術なのだ。魔術は隠れながら存在してきた過去があるからこそメジャーではないのだ。今メジャーである超自然的能力は能力アビリティこれに限る。そして二つ目の人間に魔術を作れるほど賢い人がいないというのはそのまんまだ。魔術は人を超える何かでないと作れない、それは人間は魔術をただ使っているだけだからだ。魔術を作るにはそれ専用の知識がいる。一部の人外はそれを持っているようでだから多種多様な魔術があるのだ。ただそれについても訳に訳されて余り魔術が届かないわけだが。

 私が魔女に昇格することへの執着は、魔女になることで魔術を作り出す知識を得られるからなのだ。

 それは、以前の夢でも分かるように、魔女と魔女の知識は魔女が死んだ後でも後世の魔女にリンクされる。それは魔女号というものを得ると同時に、私はそれを求めている。

 私がそれまでにやるべきことなのは魔術を作り出すための土台作り、魔法陣の解読である。この幾何学的模様には一つ一つ意味があり、それには魔術の発動を補助する何かがあるのだ。



☆★☆★☆★☆


「最後の準備だ、出てこい。これが終わったら立て続けに儀式をする。」


 私は彼に無言でついていく、彼は研究員の職員証のようなものをパネルにタッチすると重厚な扉が開いていく、近未来感漂うその通路を通っていくと一つの巨大な広間があった。その中央には幾何学的な紋様が血文字のようなもので描かれており、その上にも宝石が規則的に並べられている。その宝石の大体がオーバル•ブリリアントカットやマルキーズ•ブリリアントカットのようなカットのされ方の宝石であり、それらは異様な雰囲気を醸し出している。周囲には赤い石を携えた職員が12人ほどおり、全て黒いフードをかぶっている。それらを見ている間に、


「これを指示されたタイミングで飲み干せ。」


 見るとその瓶には赤い液体が入っており、中に何かの粉末のようなものが漂っている。これを飲むというのには忌避感を覚えるが、必要なことなので苦虫を噛み潰すが如く了承する。

 私は案内され壇上に登った、指示された姿勢、主に坐禅の用な姿勢で手には瓶を持っている。


「「「*€£=•*^%><?~@!^^^*£€=———」」」


 彼ら歌のような耳に残る、音にもならない普通の人では絶対に聞き取れない音を詠唱する。その時私に飲めという合図があった。


私は意を決して、この瓶の中身を飲み干す、一滴残らず。


 するとなにか心臓の奥で共鳴し合うような感覚で、初めに目が、心臓の横が、血液が流れた通路が、歌が響いた通路が、そこから広がるように段々と体に広がっていき、次第には脳まで届き一瞬で視界を暗転させられる。



《貴殿、魔女への昇格に成功した。この世界での二人目の魔女誕生を祝って、魔女号を授ける。》


「どんな名前にするの?」


《もう決めてある。墓守の魔女grave keeperだ、そしてお前には名前がないのだろう?名前もつけてやろうではないか、セレネア•スミスだ。》


 墓守の魔女にセレネア•スミス、名付けの法則とかどういう意味で付けたのかは知らないけど、なぜかしっくりきた。そして、また脳に刻まれる。魔女号が、名前が。それと共に流れ込んでくる魔女の知識が、共有されていく、今まで知り得なかった知識がどんどん刻み込むようにインプットされていって—


—やがて、やがて、やがて。


理解した。



 目を覚ますと、そこは壇上だった、儀式が終わったらしく全員が全員疲れたような雰囲気が伺える。周りの宝石は全部砕けていて、色も消えている。そこで私は唱える。


+++£€%#%%=><歪んだ世界


●別視点

 魔女の降臨が終わった直後だった、声にならない音が響き渡る。

 目が、耳が、肌が理解する。五感全てが訴えているのだ、ここから逃げろと、私は走り出すようにこの場を抜け出そうとする。だけど結果は虚しく、歪んだ場のようなものは私を追い越す速度で広がっていき、やがて施設全体を包み込む。

 中の全てが歪みでできていた。空間は異常な広さをしていたり、突如として建物の老化が加速したり、今いたと思った場所とは別の場所に転移していたりとめちゃくちゃだ。中にいた研究員は化物形容し難い何かに変えられ、体を引きずり回っている。


—研究施設施設という名の世界が、今歪みでできている—


————————————————————これにて研究施設編は一応終了となります。今後は

外の世界セレネアから見た研究施設の外を中心にやっていきます。今後ともよろしくお願いします。

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