第三話 友達
話が変わるが私には友達がいる、こんな施設にいやでも過ごしていれば話し相手はできるし、その話し相手がいつしか友達になっていたなんてあり得ないことではない。
目の前にいるのはそんな友達だ、髪は綺麗な茶髪で目は緑色、肌は病的に白く、整った顔は誰しもが美少女と言うだろう、ただこの施設ではこのような身体を持つ少女は一般的だ、なぜなら魔女は美しくないとならないからだ。
「ねぇ、あなたはこんな施設でたいとは思わないの?」
彼女の声だ、私がのこの世界で一番慣れ親しんだ声、そんな声だ。
「んー?この施設を出る?」
「そう、出たいとは思わないの?いつ死ぬかもわからないところよ?」
「えーとね、私は魔女になる必要があるの、だから出るとしても魔女になった後にでる。魔女になった後ならこの施設もこの施設を運営している組織も、全て壊し尽くして出るよ」
「そう、」
彼女は何か考えるようなそぶりをする。
「もし今すぐ出たいんならソフィアさんに聞いてみて、もしかしたらヒントを教えてくれるかもしれない、あの人はこの研究施設で唯一まともな人間性を持った人だから」
そう、ソフィアさんだ、この研究施設である程度の権限を持っていて、この研究施設で唯一私たちを心配したり、時には手助けをしてくれるまともな人間性を持った人だ、だから彼女に何か聞けば彼女は教えてくれるかも知れない。
「わかったわ、」
彼女は私みたいに魔女に執着していない、魔女になれる“素質”を持ちながら魔女より外の世界に興味を持っている不思議な子だ、だから私も友達になれたのかも知れないけど。だから、私はそんな友達に手助けをしてあげたかったのかもしれない。
☆★☆★☆★☆
あれからは何にもなかった、ただただ毎日同じメニューの繰り返し、私は私が成熟して魔術に耐えられるまで待っているのだ。顰めているのだ。
ただ最近彼女のようすがおかしい、ほら、今日も彼女は帰ってくるのが遅かった。だけど今日は何か希望に満ち溢れた、そんな目をしている。何かあったのかも知れない
「どうしたの?」
「何が?」
彼女は聞き返した、どうやら主語が足りなかったらしい。
「えとね、何が嬉しそうな目をしている」
「そうかな?いやそうか、でも数日後には分かると思うよ?」
彼女は悪戯に笑った。彼女が言うのだから本当に何かあるのだろう、私は予想なんてせずにそう思った。
「じゃあ楽しみにしているよ、どんなことが起こるのか」
「うん、楽しみにしてて、」
数日間なんにもなく、私はいつも通り、魔術の理解を深めたり、知識として知っている技術を使えるようにしたり、武器の訓練をしたり様々な事を学んでいった。私自身それが楽しかったし、やりがいがあった、特に不満というものも無く自然と時間が過ぎていった。
いつも通りの日々だった。
ある時、研究員の様子が変わった、感覚としては騒がしくなった。今日はいつもより部屋にいる時間が長くなって、いつもより自由がなくなった。こんな施設にいて自由なんて言葉があるのかは疑問だけど。
それから、それから、それから
以前より自由が制限された中でも私の生活は少し不自由になっただけでなにも変わらなかった。私専用の“服”が用意されて、それを着て、私の周りには常に監視員が付くようになって、施設内に監視カメラが増えていて。そんな中でも私は普段通りに生活していた。
ただ、ただ少し寂しかったのは、“彼女”が居なくなっちゃった事だけだった。
あれから一度たりとも会えなくなった。
見れなくなった。
研究員の様子からしても、多分この施設からの脱出に成功したんだろうと言う事だけは、なんとなく察せていた。多分ソフィアさんから何か教えられて、何かの魔術か何かの情報かを得て、脱出に成功したのだと言うことは察せていたのだ。
私は幼い子供の中では唯一、達観していて、頭がいいって言う事を昔研究員から聞いたことがある。
それはそうだ
なぜなら以前博士をやっていたから、意地でも執着していたから。
ただ今はその執着していた魔術もこの身体で使えるようになって、それが自由自在に操れる魔女になれると言うのだ。
嬉しさの余り、一夜は興奮の余り眠れなかったほどに、
私は一度満ち足りているのだ。
だから達観してみることができると言う事なのだろう。
ただ、ただ欲を言うのならば、私はもっと魔術を欲しい、知りたい、奪いたい、使いたい。
もっと、もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと。
理解したい。
集めたい。
私にはそんな欲が一般人より少しばかし多いだけのただの人なのだから。
だから友人がこの施設から居なくなっちゃったのは悲しい事だけど、本当に悲しいことには至らなかった。私はそれに感謝したい、『ありがとう』って、彼女を救ってくれてありがとうって。
だってこの施設にいるんだから結局は死んでしまう可能性があるのだから。
私はこの施設唯一の成功例だ。
理論値を出していると言ってもいい。
なぜなら研究者にそう言われているから、だから私は努力し続ければ何れ魔女になれるだろうと理解している。
だけど彼女は違う、少しでも努力がなければ、魔術への理解が低ければ、彼女は死んでしまうかも知れない。もちろん私と共に生き残る可能性もあるのかも知れないが、この施設で、この場所で死ぬ可能性の方がずっと高い。
だから、私はこの施設を脱走してくれてありがたく思う、そう思えるなぜならいつか会える可能性があるのだから。
私が魔女になってこの施設を粉々に破壊した時には、魔術を気にせず幸せに生きていて欲しいかな?
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