魔王城


 魔王城の中に入ることに成功、というか普通に入った。

 イロニム以外はヒバニン姿。ただでさえ敵の本拠地だ、正体がバレて襲われたら大変だろう。


 サナチ様が不安げにイロニムに聞く。


「ねぇロニム。入城記録あるのに退城記録ないのは問題にならないの?」

「あ、大丈夫だよサナチたん。私が転移で家まで送っといたって言っとくし」

「……なるほど、ただの事実陳列ね」


 転移魔法があるとそのあたり厳密にできないのは仕方ないものな。

 四天王が言うなら門番如きは逆らえないのだろうし。


「で、この先に魔法陣があるんだけど……ママが居たらちょっとマズいかなぁって……」

「マズいのですか?……いや普通にマズイですね」

「コッソリ行こうね、コッソリ――」

「――なにしとるんじゃ? イロニムや」


 ピシッと固まるイロニム。そして俺達。イロニムが振り向けば、そこにはイロニムの母、のじゃロリ魔王様がいた。


「あー、その、ママ……?」

「うむ。次におぬしはここで何してるのと言う」

「ここで何してるの――ハッ!?」

「うむうむ。今宵は満月じゃからの、見回りじゃ……と言いたいところなんじゃがな。イロニムが不埒な企みをしてると小耳に挟んでのぉ」


 褐色つるつるのアゴをさすりつつ、魔王様がふわりと黒もやまとう。


「……ちょっと友達をお家に送ってあげようと思って」

「この先は機密区間じゃから関係者以外立ち入り禁止じゃ。イロニムのお友達といえど、じゃよ? 危ないしのぉ」

「そんな!? 私いつも入ってるじゃん!!」

「そりゃ四天王じゃしガッツリ関係者じゃろがい」

「むむむ……」


 じぃっと睨むイロニム。でも魔王様は立ち塞がって退こうとしない。


「じゃあ友達を送るのに魔法陣使いたいから使わせて?」

「ダメじゃよ妾の話聞いてたかえ? その子らバニムーンの子らじゃろ、魔王城で入っていいのは玄関からおぬしの部屋までじゃよイロニム」

「……むむむ」

「何がムムムじゃ。ここ魔王城で国の本拠地じゃよ? 敵対してる国のバニーやらヒバニンやらが普通に入れるのだけで大盤振る舞いじゃろうが」


 それはそうだ。


「じゃあ、せめてナミだけでも?」

「そやつが一番マズイじゃろ。ムーンフォールの跡取りじゃろ? イロニムは知らんかも知らんが、あやつらはしぶといというか面倒というか……」


 はぁ、とため息をこぼす魔王様。もしかして、ナミミ様の血統スキルがバニーに戻れるものだと知っている?

 ……知っててもおかしくないな。ハサミ様や更にその母親のバニーとも戦ってたんだろうし、ムーンフォールの血統スキルを見ていたとしても何もおかしくない。


「というわけじゃからの、そのナミを帰すのであれば、この妾を倒してからにするがよいぞ」


 ……それが出来たら魔王倒して戦争終結の方が早いんだよなぁ!!



―――――――――――――――――――――――――――――――――

(ここまで読んでいただいてありがとうございます!

 ★★★、フォロー、レビュー、❤で応援、感想等も頂けたら嬉しいです!

 X(旧Twitter)ボタン等で広めてくださると喜びます! ボタン↓↓)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る