黒バニーの扱い


「なるほど、前線まで送ってもらえればほぼ帰還したも同然ですね」

「そうなのですか、ツーシ?」

「はい。セワン達が我々の帰還を待っている手筈てはずです」


 前線まで送ってもらえば、そのあたりにハサミ様やセワンさんが待ち構えている、とのこと。

 ……え? サナチ様とツーシさんが出立してからずっと前線で待機してるの?


「ツーシさん、上司や同僚を待たせといて帰らずにぴょんぴょんしてたってこと?」

「ええ。だから今日帰るのが限度なんですよ……胃が痛くなるので」


 そりゃあ気まずくもなるよね。と納得せざるを得ない。

 むしろそんな状況でよくクイパシできたよなと感心しちゃう。



「あ。でもさすがにこいつらを魔王城に連れてくわけにもいかないよね……」


 と、イロニムは黒バニーを横目でチラっと見て言った。


 諜報員の黒尻尾だ。魔王国本拠地、魔王城には入れたくないのも当然である。

 一旦気絶させたとしても、その後起きて気絶したフリしたまま耳だけで情報収集なんてのも余裕だろうし。なにせバニーだから。


「ならこのままここに捨て置いていきますか、ロニー?」

「こんな場所に縛ったままだとさすがに死ぬよね? あれ、ナミってば地味に怒ってたりする?」


 それはそれで口封じになっていいかもしれない、と割り切るには、俺はそこまで殺伐としていない。


「あー、その。さすがに死ぬようなのはちょっと……」

「そうですね。うちの国のバニーですし、見捨てたら色々と問題が……」


 俺が恐る恐る手をあげると、ツーシさんが同意してくれた。


「むぅ。コガネさんがそういうなら仕方ないですね。誰かいいアイディアありますか?」

「私にいい考えがあるわ! キントキ食べさせて虜にすればきっと言うこと聞いてくれるに違いない! 完璧じゃないかしら?」

「おちびちゃん、いくらキントキが美味しくてもそこまでじゃないわよぉ?」


 サナチ様の発案にやれやれと肩をすくめるアラクナさん。

 ……地味に説得力に欠けるやれやれだが、俺もキントキ食べさせたくらいで言うことを聞かせられる相手なら誘拐しないと思う。

 いやホントにアラクナさんという前例が居るからアレだけど、アラクナさん達は数週間かけてじっくりキントキの虜になってったわけだしね。うん。


「じゃあわたくし達でこのバニーを前線まで送ってあげるわぁ。5日かかるけれど。坊やの彼女さん達は魔法陣で今日帰ればいい。……その時間差が必要なのでしょう? というか、なんなら一週間かけて送り届けてもいいわよねぇ」

「え、いいんですか?」

「ええ。でも運賃代わりに坊やには今夜付き合ってもらうから」


 振り返って俺を見て、じゅるりと舌なめずりするアラクナさん。艶っぽい。


「……だから5日と、1日伸びてたんですね。むぅ……仕方ありません、コガネさん。あとでしっかり検証結果を報告してくださいね……!」

「ああ。俺も頑張るから、ナミも頑張ってくれ……でいいのかな?」

「私よりコガネさんの方が命の危機かもしれません」


 ……ナミミ様からGO出てるから断る気はないけど、生き残れるかな……イロニムからポーション貰わなきゃ死ねるのでは?


「とりあえず次は魔王城に潜入ですね?……半日くらいは黒バニーも転がしておいても大丈夫でしょうか」

「お、ならアタシらがこいつらを見張っとくぜ」

「ただし夜は……わかってるな?」


 オーガバニーズが黒尻尾を見張っていてくれることになったが、これは夜には新たな3バニートゥナイトと言うことか。ある意味天国なわけだが、満月の人外系バニーズを前に生き残れるかどうか確信を持つことができない……!


「……ロニー、私の分もコガネさんが生き残れるように見張っていてください」

「う、うん。責任重大だね……」


 た、頼むぜイロニム。俺が死にそうなら何とか止めてくれ……!



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(ここまで読んでいただいてありがとうございます!

 りあるいそがし。しわす。

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