救出戦(イロニム視点)



 黒バニー2人を前に、イロニムは奇襲もせず立ちはだかる。

 後ろに抜かせないよう威圧で牽制すると、ザッと立ち止まり身構える黒バニー達。

 ……担がれているナミミの尻を見て、まだ無事なことを確認し、イロニムはホッとため息をついた。


「……四天王、嘆きのイロニム。こちらに来たのですね」

「ロニー!? 来てくれたんですか!」

「うん。私ナミを助けに来た。さぁ、ナミを置いてくなら見逃してあげるよ!!」


 賢いナミミならこれでコガネも助けに行っていると通じるだろう、と考えつつ、短剣を構えるイロニム。


「バニラ様。ここは私が」

「いえ、ラビス。四天王相手に一人では分が悪い。2人がかりで行きますよ……いえ。3人がかり、でしょうか?」


 そう言って、バニラはナミミを大盾の様に構えた・・・・・・・

 両手両足を縛られているロープを背中側にぎゅっと詰められて、ぐぃっと無防備なお腹を突き出すような体勢で持たれている。


「ちょ、これどうなってるんですか!? う、動けないですっ」

「ナミミ嬢には盾になってもらいますよ。さぁてイロニム? ナミミ嬢を攻撃できますか?」

「クッ、卑怯な……!」


 さりげなく持ちやすいように縄を追加されて、文字通りの肉盾にされるナミミ。

 成人ヒバメス一人分の重量を左手で軽々構えるバニラは、重戦士系のステータスをしているのだろう。STRは82134を超えているに違いない。


「ふふ、大丈夫ですよナミミ嬢。戦闘が終わったら、ポーションで回復して差し上げますので」

「……その前に死んだらどうするんです?」

「死なない程度には加減してくれるでしょう」

「~~ッ、おのれ黒バニー! ナミを離せッ!! エアカッター!」

「バリア」


 イロニムはラビス相手に魔法を放つ。視認しにくい風魔法の刃だが、ラビスは半球状のバリアを張って最小限の防御で受け流す。


「ラビス。そちらに攻撃が集中しそうなので、私が庇ってあげます。好きに戦いなさい」

「はい、バニラ様。……アイシクルストーム!!」

「ぐ、アイスランス――ッ、ぐ!」


 イロニムの放った鋭い氷の槍は、割り込んできたバニラ、その盾になっているナミの前でピタリと止まる。


「あっは! 甘ちゃんだこと」

「ロニー! 私に構わずやっちゃってください!!」

「無理! さすがのナミでも死んじゃうよ!?」


 攻撃を躊躇せざるを得ないイロニムに対し、一方的に攻撃するラビス。盾として振り回されるナミミ。

 それだけではなくバニラは、右手に槍を持ってイロニムに襲い掛かる。


「くっ、この、反撃できないじゃんこんなの!?」

「あら、気しなくていいんですよ嘆きのイロニム? ほぉら、シールドバッシュ・・・・・・・・ッ!」

「んきゃっ!?」

「あぐっ!!」


 シールドバッシュ、つまりナミミでイロニムをぶん殴る攻撃。そしてひるんだところにラビスが魔法をぶつける。


「ストーンバレット!!」

「ぐ、この、くっそぉおお!」


 かろうじて急所は短剣で防ぐ。反撃を、と動こうとしてもナミミを盾にされ、イロニムは止まる。止まらざるを得ない。

 イロニムはひたすらバニラ達にいたぶられることになる。バニラ達も油断せずイロニムを少しずつ削っていく。


 このままでは、間違いなくイロニムは倒れてしまう。



―――――――――――――――――――――――――――――――――

(ここまで読んでいただいてありがとうございます!

 ★★★、フォロー、レビュー、❤で応援、感想等も頂けたら嬉しいです!

 X(旧Twitter)ボタン等で広めてくださると喜びます! ボタン↓↓)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る