囮?




「ところで金髪のヒバニンの女の子はいませんでしたか? 俺と一緒にいたはずなんですが」

「いいや? アンタを連れ出してきたのはどこにでも居そうな黒バニーだったが、他に誰かはいなかったね」


 黒バニー。どうやらあの2人の黒尻尾のバニーガール。

 そして、俺とナミミ様は別々に連れ去られている。


 あのバニラって黒尻尾の言動を考えるに、俺を囮にしてナミミ様を連れ帰ろうって感じかな?


「……なるほど、一人だけでしたか」

「わたくしが見たことないバニーでしたから、多分バニムーンのバニーですね。あなた、なにか恨みでも買ってたのかしら?」

「さぁ? ただ、あのバニーの上司には嫌われてるっぽいので……それですかねぇ?」

「何したのよ一体」

「何もしてなかったんですけど。バニーガールじゃなかったから、ですかねー?」

「あー。バニムーンのお偉い方っぽい言動ね。奴らならそう言うわー」


 うんうん、と何かを納得するアラクナさん。


「で、なんやかんやイロニム様に攫われてこの国に来たんですよねー。俺が言ってる金髪の子もセットで」

「え? あなた攫われて……その先でもわたくし達に攫われたってコト?」

「ついでに言うとさらに別の所から拉致られてバニムーンに来ましたが、何か?」

「……なんかその、苦労してるのねぇ」


 いやぁ、楽しくやらせてもらってますよー。とまでは言わないでおこう。

 なんなら俺単体だったらアラクナさん達と楽しくやる自身もある……いや、満月のバニーガールは分からんけど……なんやかんや楽しくやれそうな気もしなくもない。


 けど、俺はもうナミミ様というご主人様を決めている身!!

 NTRもナミミ様の管理下であるべきなのである!


 なので、苦労してるというテイで話を進めていこう。


「まぁそんなこんなで苦労して、彼女と帰るために、苦労してニンジンを売って帰るための旅費を貯めたりしてたんですけどね。苦労して。はぁ、なんの因果か攫われた上で攫われるなんて……」

「ま、まぁ、キントキを出してくれるなら悪いようにはしないわよ? ほら、彼女? その金髪のヒバニンなんて忘れさせてあげるわよ?」

「それがですねー。実は彼女もいないとキントキは出せないんですよ……彼女の力があってようやくキントキがキントキ足りえるので……」

「え!? でもあの黒バニーはお前ひとりでキントキ出せるスキルがあるって言ってたぞ」

「そうね、確かにそう言ってましたわよ?」

「そりゃ黒バニーに騙されましたね。いや、あっちも知らなかったのかもしれませんけど。なにせこんなユニークなスキルだから、全貌はできるだけ隠してましたし」


 と、ふと思った。

 これ、このまま口車にのせたらナミミ様を奪還できるんじゃね? と。


「むしろキントキは彼女のおかげで出せていたと言っても過言ではないんですよ。……試しに出してみますけど、上手く出せなくても俺のこと殴ったりしないでくださいね?――うぉお、『ニンジン召喚』!」


 と言いながら、俺は普通のニンジンを出した。


「これは……ホントにニンジンが出てきた。けど」

「キントキじゃない。普通のニンジンって売ってた方だ」

「ああ、やっぱり。ナミが居ないと全力の発動ができない……! お願いですアラクナ様。どうか彼女を、ナミを黒バニーから取り戻してくれませんか!」


 俺はできるだけ沈痛な面持ちでアラクナに訴えかける。


「……フッ、どうやらその彼女を助けないとわたくし達はキントキという目的が達成できない――ということですか」

「はい! ナミを助けていただいた暁には、キントキ一年分を贈呈すると約束します!」

「き、キントキ一年分!?」

「……そ、その話、3人分貰えるってことでいいのか?」

「ええ、さすがに1度に出せる量は限りがあるので分割になってしまいますが、ナミの協力さえあれば3人分のキントキも出せます、きっと!」


 ごくり、と唾をのむ音が聞こえた。


「いいでしょう。その話、乗ってあげます」

「ありがとうございます! いやぁ、お美しいバニーは心も美しいんですねぇ!」

「!? 美しい!? このわたくしが……さっきわたくしの真の姿を見たでしょう!?」

「え? 白くてカッコいい蜘蛛でしたね。8足も網タイツがあってお得では?」


 あのスタイリッシュな白い甲殻ボディだとカッコいいが先に来る。

 毛むくじゃらタイプだとちょっと引いたかもしれないけど。ほら、すね毛たっぷり的な意味で。まぁそれはそれでモフモフ撫でまわしたかったかもしれんけど。


「……ッッ……ちょっと本気だしますわ」

「お、お前……すげぇな」

「え? なにがです?」


 よし、これでアラクナさんもナミミ様を助けるための強力な助っ人になるな!



 と、次の瞬間バンッと扉が蹴破られて、見慣れた赤青のバニーが入ってきた。


「助けに来たわよコガネ!!」

「無事ですか!?……って、無事そうですね?」

「あ。サナチ様とツーシさん、丁度いい所に。これからナミを助けにいくんで手伝ってください」

「えぇ……どうなってるの?」

「ちょっとアナタ。扉、直してくれるのよねコレ」

「あ、はい。すみません直しますね」


 目をぱちくりさせるサナチ様と、軽く頭を下げて扉を直すツーシさん。

 よし、これで戦力も十分だな! ナミミ様救出にレッツゴーだぜ!!





―――――――――――――――――――――――――――――――――

(ここまで読んでいただいてありがとうございます!

 ★★★、フォロー、レビュー、❤で応援、感想等も頂けたら嬉しいです!

 X(旧Twitter)ボタン等で広めてくださると喜びます! ボタン↓↓)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る