誘拐犯と雑談しちゃう系被害者



「ところで魔王軍四天王の残りの2人ってどんななんだ?」

「あら? わたくしを前にしてそんな事聞くの?……なんでちょっと楽しそうなの?」

「だって! まさかの人外バニー! その発想はなかったというか!」


 俺はアラクネバニーのアラクナに話しかける。

 いや、時間稼ぎだよ、時間稼ぎ。ホントホント。


 まぁ打算として、俺がキントキを出せるスキルを持っていると認識している時点で、俺を殺すことはないだろう。

 俺がスキルを使わないとキントキが手に入らない。俺を殺してしまったらキントキは手に入らない。


 であれば。俺の被害は、せいぜい過酷めにぴょんぴょんされる程度だろう。

 それくらいならナミミ様で慣れてるからなぁ!!


「他の四天王ねぇ。ダークエルフは知ってるのよね。残りはワーキャットとスライムよ」

「ワーキャットバニーにスライムバニーってことか!?」

「え、ええ。まぁ、バニーガールだけども。凄い食いつきね……」


 なにそれ超見たい。くっ、ワーキャットってことは猫耳なんだろう? そこにウサミミを追加!? 人耳部分はあるのか? まさかの6耳!? 気になる!

 スライムバニーなんてスケスケボディだったりするのだろうか? 四天王ともなればきっと貴族だろう。エナメルのバニースーツは大丈夫だろうが、網タイツの網目からこぼれちゃったりしない? うわぁ見たいわ……!


「ちょっと。このヒバオスだいぶ変じゃないかしら?」

「ま、まぁあのしこバニーのイロニムに喜んで飼われてるヒバオスですし……?」

「って、姐さん以外の四天王はどうでもいいだろ! さっさとキントキ出せよ!」


 おっとアラクナの取り巻きバニーに拳で頬をぐりぐりされてしまった。


「そんな態度でいいのかい? 俺のHPはヒバニンらしく低い。簡単に死ねるぜ?」

「あん? だが痛めつけるくらいは――」

「俺のスキルはな、HPが満タンじゃないと上手く使えなかったりするんだ……お求めのキントキを出すスキル。そのスキルで出したキントキが美味しくなかったら誰のせいかなぁー?」


 そう言うと、取り巻きバニーはアラクナと目線を交わし、手を引っ込めた。


「わーったよ。じゃあ、さっさとキントキを出しな」

「……じゃあ手足の拘束を解いてくれるか?」

「いいですかい姐さん?」

「スキル発動に必要ってことかしら? ま、手足を自由にした程度で逃がしたりはしないし良いわよ。解いてあげなさい」

「はい、姐さん。……いいか、キントキ出す以外の妙な真似をするんじゃないぞ」


 と、ブチブチと手足の拘束を二人がかりで引きちぎる取り巻きバニー。

 どうやら俺の手足を縛っていたのはアラクナの糸だったようだ。

 ……すげぇな、蜘蛛の糸って鉛筆くらいの太さがあれば飛行機を止められるくらい丈夫だって聞いたことがあるんだが。

 それを二人がかりで千切れるとは。おそるべしバニー。


「ちなみにこの二人はオーガ系バニーよ」

「ほほぅ! いやぁ素晴らしい。お会いできて光栄で……って、前に店に買いに来てくれた方ですよね? 見覚えあります。毎度ありがとうございました」

「え? あ、うん? どういたしまして?」

「調子狂うなぁ……」


 自由になった手で握手をすると、取り巻きバニーは照れて頭を掻いた。


「ちなみにわたくしも買いに行ったことがあるのだけど」

「え?……流石にその体で買いに来たら忘れないと思うんですが」

「フフフ、イロニム区では人化していたから」


 と、しゅるんと蜘蛛糸が繭を作るように蜘蛛部分を包み込むと、そのまましゅるしゅると小さくなって普通の人間の下半身になった。ただし網タイツではなく白タイツ。


「! ああ! 紺色白タイツのバニーさん!」


 ついでに頭の方も普通の人間になっていて、その顔は見覚えがあった。

 バニーとしては最初期の方に買ってくれた紺色白タイツのバニーさん。というか常連の一人だった。……あ、よく見たら白タイツじゃなくて蜘蛛糸かぁ!


「あら、顔を覚えてくれてたのね」

「いやぁ、四天王だったんですねぇ。いつもお買い上げありがとうございました」

「……ねぇ、わたくし達、このヒバオスを攫ったのよね?」

「ええ姐さん。そのはずなんですけどねぇ……」


 フフフ、困惑してやがる。普通に挨拶しただけなのにな……?


 ん? いや、普通は誘拐犯に挨拶とかしないもんか?

 分からん。誘拐されてそのまま誘拐犯イロニムの拠点でニンジン屋をしていた俺には、誘拐されたときの普通の対応が分からん……!





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