誘拐(コガネ視点)
目が覚めると、そこは大きな部屋だった。とはいえ、サイズが大きいだけで、森の中の木こり小屋と言ってしっくりくる感じの木の板むき出しの壁だった。
「んぉ……?」
「あ、起きましたぜ姐御!」
「あらあら。やっと? 疲れがたまってたのかしらねぇ」
そして目の前にはバニーが3人――いや、うち1人は『人』でいいのか解らない。
なぜなら、下半身が巨大な白い蜘蛛だったからだ。
アラクネバニー……そういうのあるんだ!?
濃紺のエナメルタイツは鼠径部の角度でぴたっと張り付いており、蜘蛛の8本脚に網タイツとヒールだった。……そういうのあるんだ……
上半身はどたぷんと大きな胸がこぼれそう。また顔には普通の目とは他にショートヘアな黒髪の頭には蜘蛛の目を思わせる赤い玉が3対6個埋まっている。実際、目なのだろう。
……蜘蛛恐怖症には恐ろしいだろうが、普通に美少女アラクネじゃんよコレ。
俺的にアリかナシかでいえば、モン娘としてアリだ。
「くっ、ここはどこだ?」
アラクネバニーの他、黄色と茶色の布レオタードを着ている平民バニーは取り巻きかな。
平民だとレオタードの色からは能力を推測できないが……なんとなく戦士系な感じがした。
「あら。思ってたより怯えてないわね……」
「ヒバオスが姐御を見て怯えない……!? 肝が据わってるな」
「アタイらだって最初はビビったってのに……ただのヒバオスじゃねぇってのはウソじゃないみたいだな」
まぁアラクネでバニーってのは情報過多が過ぎるとは思うけど。美少女だし。
アラクネバニーがねっとりと妖艶な笑みを浮かべる。
「ここは私の隠れ家の一つよ。大丈夫、悪いようにはしないわ、キントキさえ出してくれればね」
「……在庫は無い」
「しらばっくれても無駄よ? スキルで出せるんでしょう? イロニムのやつ、わたくしに黙ってこんなのを独占してたなんてねぇ……」
と、アラクネバニーの指がつぅっと俺の腹を撫でた。……!? 服はどこだ!?
ちょ、手足が縛り上げられてて隠せないんですけど!?
「キントキをださないなら、満月の生贄になってもらうしかないわね?……ふふ、そうは思わない?」
「お、俺に手を出したら四天王のイロニム様が黙っちゃいないぞ!?」
「大丈夫よ、私の方が強いから。フフフ」
そう言ってアラクネバニーは腕を組む。たわわの戦闘力は……確かにイロニムより大きい! なんという強敵だ……
「頭が高いぞヒバオス。こちらの姐御は四天王筆頭! 傀儡のアラクナ様だ!」
「し、四天王筆頭!?」
「そうよぉ? この国でわたくしより強い者は、魔王様しかいないわ。ふふっ」
初めて聞いたけど、そりゃ四天王なんだからあと3人居て当然か!
しかも筆頭ともなると、イロニムよりも強いのか? 強いんだろうな……
……まさかアラクネバニーが四天王筆頭とは……つーか、魔王軍ホント
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