誘拐と誘拐(ナミミ視点)
コガネさんがラビスに意識を落とされるとほぼ同時に、私もバニラに意識を狩られました。
「っ、ここ、は」
「おや、目が覚めましたかナミミ嬢」
そして目が覚めると、私はバニラに担がれて移動しているところでした。既に町を出て平原を走っています。
手足をガッチリ縛られ、身じろぎもできません。……まるで荷物。いえ、ヒバニンになっている私はバニラにとって人ではなく、文字通りの『荷物』なのでしょう。
見ればもう一人の黒尻尾、ラビスも並走していました。……手ぶらで。
「! コガネさんは!?」
「ああ。あのヒバニンなら、魔王国のバニーに渡しましたよ」
「それは……イロニム達に、と言うわけではなさそうですね?」
「勿論です」
コガネさんは『ニンジン召喚』によりキントキが出せます。
そして、実は言っていなかったのだけれど、レベルが上がるにつれてニンジンに含まれる魔力味が濃くなっており、より美味しく感じるようになっていました。
バニーガールにとっては、特に。
「あの暴動は、あなたたちが?」
「はい。満月で正気が薄れている連中は本当に操りやすくて。簡単でしたよ」
「今頃はナミミ嬢を
「!!」
バラしたというのか。コガネさんの『ニンジン召喚』の事を、魔王国のバニー達に!
「な、ぜ……いえ、囮、ですか」
「ふふふ、察しが良いですね。ええ、その通りです。やはり、ムーンフォールの嫡子ともなればバニーを剥がれてもこの程度は解りますか」
「……あ、その、姿勢が、結構きついのですけど」
「おっと。ご容赦くださいね。今、全速力で敵地から撤退しているところなので」
豆の入ったズタ袋を担ぐような運ばれ方に不満を表明するも、軽く流されました。
速度はかなりの早さなので、全速力というのはウソではないでしょう。周囲を警戒しながらの最高速度と考えてもこの速度……もうだいぶ町からは離れているでしょう。
うう、今はコガネさんの無事を祈るしかできませんね……
「……ところで、コガネさんも言っていましたが……そちらの黒尻尾は魔王にバニーを剥がれたはず、では?」
「その程度では黒尻尾はなんの問題もありません。ねぇラビス?」
「はいバニラ様。まだ本調子ではありませんが。並走程度であれば十分です」
「……その、バニーに戻っているのは、ムーンフォールの血統スキルと何か関係があるのでしょうか?」
「ありませんよ。ふふふ」
そうキッパリと言い切って笑うラビス。
どういうことでしょうか。魔王の血統スキルに対抗できるからこそ
「我々黒尻尾は、普通ではありえない手段でバニーに戻ることができるのですよ」
「普通ではありえない……? 禁術、ということですか?」
「別に魂を売ったりはしていませんが、国家機密です。なのでいかにナミミ嬢といえど教えることはできません……いえ、あるいはあのお方直々に、教育施設でナミミ嬢にも秘術を施すのでしょうか?」
「バニラ様、であればナミミ嬢も黒尻尾の仲間入りということでしょうか?」
「かもしれませんねラビス。その場合は歓迎しますよ、ナミミ嬢」
表情は見えませんが、私を担ぐバニラの声は明るく、本気でそう思って言っていることが分かります。
そして、私は冷や汗をかきました。
……もしムーンフォールの血統スキルとは別で、『簡単にバニーガールに戻れる』というのなら、それは戦争が少し変わります。
魔王やロニーは、バニーを剥ぎ力を奪うことで、できるかぎり命だけは見逃していました。
しかし『見逃したら復活してしまう』のであれば、もはや見逃すことはできなくなり……確実に命を取るしかなくなるでしょう。
魔王はバニーガールの根絶を目標としている以上、将来もし魔王が勝利したら『バニーガールが復活しないよう一人残らず皆殺しにする』ということにもなってしまいます。
そうなるとバニーガールは魔王に降伏できなくなってしまいます。徹底抗戦しかあり得ません。
少なくとも復活の方法を知っている者は全員始末して口を封じなければいけないでしょう。
あれ? でも逆に、黒尻尾はその「復活できる方法」を公表するだけで、魔王軍を崩壊させられますね?……何故それをしないのか……
制限がある、致命的な弱みがある、とか? 例えば、その秘術は「あのお方」にしかできないとか。
そして大規模にはできなくて、しかし、黒尻尾全員にいきわたる程度には『秘術』をこなせる。そういうことでしょうか。
魔王に「あのお方」を狙われたら終わり。なるほど、国家機密にする必要がある、と。
……って、これ推測しちゃうのマズいやつでは?
「おや。何か察しましたね?」
「……いえ、別に?」
「ふふふ、ますますナミミ嬢を離すわけには行かなくなったみたいですね」
あの。勝手に推測できる情報を漏らしておいて、ちょっとひどくないですか?
……あ。そういえば私も『血統スキルで復活できる』そうですが、その難易度や条件次第では魔王に殺されるしかなくなってしまうのでしょうか。
うう、その場合はどうしたらいいか、今から覚悟を決めておかないといけないかもですね……
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(ここまで読んでいただいてありがとうございます!
★★★、フォロー、レビュー、❤で応援、感想等も頂けたら嬉しいです!
X(旧Twitter)ボタン等で広めてくださると喜びます! ボタン↓↓)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます