満月の日(2)
「コガネ、こいつらに倉庫見せてくるね」
「あ、はい。いってらっしゃいませー」
イロニムは特に暴れてた連中を倉庫に連れていき、ガラガラで在庫の無い現状を突きつけてくるらしい。まぁ実際倉庫の中身はカラッポだ。
今日売る分のキントキは、今日売る分しか出してないからね。
「じゃ、特に暴れてた連中居なくなったので販売しまーす。はいどうぞ」
「え。あ、じゃあはい銀貨1枚」
「はいまいどあり」
大人しく並んでくれていた先頭のバニーにキントキを売る。
イロニムについていって倉庫を見に行った連中は多分買えないだろうな。でも無いもんは無いんだから仕方ない。
「うう、最後のキントキ……大事に食べなきゃ」
「来年また買える?」
「まぁ、来年ここに来れたらですかねー。暴動も起きちゃうくらいだし……」
「ど、どうにかするから!!」
そうしてくれるならそれはそれで。
と、予定の半分くらいキントキを売った時点で倉庫に行っていた連中が戻ってきた。
「なっ!? ちょ、なんで売ってんの!?」
「そりゃ、アンタたちがいなくなって静かになったからでしょ?」
「この列の長さじゃもう買えないじゃない!!」
「おのれ諮ったな!?」
また騒がしくなってきたな……さっさと売り切ってしまおう。
「はい、まいど。まいど。はいまいどー。ハイ次の方ー」
「おい! アタシに今買ったそのキントキよこし――」
「――おい、この地区の区長、私の前でいい度胸だね? 牢屋にぶち込んでやろうか。顔と名前は分かってるし、指名手配できるからね?」
「……チッ!」
おや、買ったばかりのキントキをカツアゲしようとしてイロニムに止められている。
もっとも、カツアゲする側だけではなく、狙われる側もバニーだ。多少は抵抗できるだろう。……ああ、でもバニー内でも格差はあるのか。
「早めに食べちゃった方が良いですよ。まいどー」
「……そうね、大事に食べたかったけど」
と、その場でぱくっと一口でキントキを食べてしまうバニーも出てきた。
……あ、口の中に入れただけで噛んではいないな。咀嚼はじっくりする感じかなぁ。
「……逆に、あいつらに高値でキントキ売るのってアリ?」
「うーん、本当は転売はよくないですが、今日はキントキ最終日なんで……自分の分を売る分にはお好きにどうぞ」
「じゃあ半分だけ売ってやるとするわ。大銀貨2枚で」
暴利だねぇ。でも、実際に手に入らないなら買うしかなくなってしまうわけだ。
ある意味暴れた罰金みたいなもんだろう。
……完全にキントキが入らないとどうなるか分からないし、それはそれでちょっと助かるかも。気持ち大きめなキントキにしてあげようかな。
「はい、次の方ー」
こうして、火薬庫の側で焚火をするような気持ちで、俺はキントキを売り切った。
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