満月前日(2)
ぽん、と手を叩くツーシさん。
「あ、思い出しましたナミミ様。そこ前線のゴミ捨て場ですね」
「ゴミ捨て場? そうなのナミ?」
「はい。戦闘でぶち殺した魔物の不要部分をここに捨ててます」
「あー。そういうこと。ダンジョンのエサね」
そういう死骸等を取り込んでダンジョンは大きくなるらしい。
「私がここのダンジョンを見つけたのは、ロニーの足を切り落とした時でした」
「あの時かぁ」
当時はまだ小さな子供だったナミミ様。思わずほのぼのした空気になるナミミ様とイロニム。
足を切り落としたのは絶対和やかな思い出じゃないと思うんだけど。
まあムーンフォールは修羅国だからね、仕方ないね。
「随分前だね、だったら相当大きくなってるんじゃない?」
「はい。あの後母様に報告したら『ほっとけばスタンピードでも起こして魔王に一泡吹かせられるかもしれないし、基本放置で』ということでゴミ捨て場になってます。多分今頃ダンジョンの中はパンパンですよ」
スタンピード。魔物の暴走が起きれば、両方に魔物が襲い掛かってくる。
そうなったとき、バニーの数が多いムーンフォール側であれば余裕で片付けられるだろうが、魔王国側はバニーが少ないのですり抜けるだろう。そういう算段だった。
しかし実際は魔王軍も魔物を使い砦を作ったりしているため、数的にも十分抑えきれるだろうと思われる。
「けどムーンフォール的には別にスタンピードがなくても問題ないですからね」
「なるほど。その片付けも請け負うから、って交渉できるね」
「はい。ロニーにはその線で
ふむふむ。……ん?
「あれ? ハサミ様は誰が説得するんだ?」
「あ、はい。それなんですけどね……やはり私は一度ムーンフォールに帰ろうと思います。母様の説得も兼ねて」
「ふむ。じゃあ俺も?」
「いえ。コガネさんはロニーと魔王国に残ってください。後日、ここをダンジョン攻略拠点として第三勢力を成立させることが出来たら合流しましょう」
なん……だと……?
それはつまり、一旦俺を残して、ナミミ様はムーンフォールへ帰るということだ。
「だ、大丈夫か? ちゃんと一人で寝れるか?」
「大丈夫です! コガネさんがいない間はサナチでガマンするので……!」
「ちょっとナミミ!? 私でガマンって何よ!? ガマンして使う程度なら使わないで欲しいんだけど!?」
「でもサナチって私の舌が好きですよね? 私もサナチにちゅぅちゅぅ吸われるの、嫌いじゃないので」
んべ、とナミミ様が舌を出すと、サナチ様が顔を真っ赤にした。
「すすすす好きじゃないしぃ!? ってか共用ヒバニンでも使ってなさいよ!」
「え、嫌ですよ。私はコガネさんの恋人ですよ? 浮気になっちゃうじゃないですか」
サナチ様使うのは浮気にならないのだろうか? 今更だけども。
「まぁサナチ様なら別にいいか。今更だし」
「そうだね。サナチたんならいいよね。今更だし」
「ほら、コガネとロニーもこう言ってますし」
「うう。所詮私はコガネの代用品なのね……」
「心配なのはロニーです。私がいなくて大丈夫でしょうか……?」
「私はそもそもナミほどの色欲はないんだよ? ダークだけどエルフだし」
寿命が長い分、そういう欲求は薄めなのだ。一応。そう、一応。
……あ、サナチ様がスルーされて落ち込んでる! 大丈夫ですよ、サナチ様は俺の代用品じゃなくてちゃんとサナチ様ですよー。
こういう雑な扱いされてぐすんって泣いてるサナチ様が可愛くてナミミ様がついやっちゃってるだけですからね。あ、ガチで。はい。
「というわけで、第三勢力になるという提案でしたが……どうでしょうか?」
「私は良いと思うよ。ママと正面から戦っても勝てそうにないし、賛成」
「……そうね、これなら。バニムーンと敵対しないっていうならあの子たちを呼んでもいいし、私も賛成で」
「そうですね、下手に敵対するよりは良いです。実行には賛成ですが、失敗したときについても考えておきましょう」
「では、あとはコガネさんですね。コガネさんが嫌なら全部ナシにしますが。なにせこの第三勢力案はコガネさんの『ニンジン召喚』ありきの話ですから」
そんなのはまぁ、勿論決まっている。
「俺はナミの忠実なペットだしな。もちろんナミの意見に従って賛成だよ。俺をうまく使ってくれ」
「ありがとうございます。では、満場一致で、この案で行きましょう」
俺達の中での話は決まった。
あとの問題は、母親達を説得できるかどうかだな……そうか、両陣営責任者はナミミ様の母親とイロニムの母親なのか。コネは完璧だな、これ以上ないわ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(ここまで読んでいただいてありがとうございます!
★★★、フォロー、レビュー、❤で応援、感想等も頂けたら嬉しいです!
X(旧Twitter)ボタン等で広めてくださると喜びます! ボタン↓↓)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます