勇者ナミミ




 しかし、魔王に見守られつつレベリングと検証ってどうなんだろう。

 そう思っていたのだが、ナミミ様はもっと突っ込んでいた。


「別に、妾はお主らがバニムーンに帰ってもかまわんよ? ただしイロニムはダメなのじゃ」

「なぜですか?」

「四天王じゃし、大事な仕事があるのじゃ。妾の黒もやから生み出した魔物を前線に送る仕事とかのぉ」


 魔王相手に直接交渉である。

 なんなの。俺より勇者じゃんナミミ様。


「でも私、ロニーを愛してるんですよ?」

「愛と軽々しく口にする出ない。軽く見えるぞ」

「軽くないですが? 私のバニー、ロニーの中にあるんですよ? つまり一心同体。これ以上って中々ないと思いますが」

「お、おう? い、一理あるかの……」


 そして押し勝ちそうである。

 なんなの。魔王討伐しちゃうのナミミ様。もう完璧に勇者ナミミじゃん。


「であれば、やはりお主らにはこの国で過ごせばよかろう? なにを迷うことがある。妾の庇護なのじゃよ?」

「正直その提案はとても魅力的なんですが、サナチには大事な部下が居まして。その部下には家族や友人が居るんですよね……どうしたらいいと思います?」

「それ妾に聞くのかえ?」

「なので一度ムーンフォールに帰って、実家とも相談してからまた来ていいですか? 魔王国から仕送りとか送れるならサナチの部下の方々もこっちに来て良いと思ってくれるんじゃないかなぁって思うんですよ」

「のぅ? 妾んとこと戦争してるの覚えとる?」

「私もうヒバニンなんで関係ないですね」

「お、おう……それも一理あるのじゃ」


 自分がバニーに戻れるかもっていうのを棚に上げてヒバニンとして言い張るナミミ様。その精神力と図太さは間違いなくバニーガール級。

 ……黒尻尾さんが言ってた「ムーンフォール次期領主がバニーを剥がれた程度でそんな無能になるはずがない」ってのは真実だったんだなって。


「ところで義母様おかあさま。私がこちらで斡旋していただける仕事について教えていただいても良いでしょうか?」

「……ん? 今妾のこと義母様おかあさまって呼んだのじゃ?」

「? はい、ロニーのお母様なら、私からみれば義母様おかあさまでしょう」

「待て、待つのじゃ。……うん、まぁ、そういう事になるんかのぉ??? コガネ。おぬしはどう思う?」

「あ、じゃあ俺も義母様おかあさまって呼んだほうが良いですかね」

「あっそうかおぬしもイロニムの恋人じゃったな……えーっと、いったん保留にしとくのじゃ! ではまたの!」


 そう言って魔王は帰っていった。

 ……魔王を撃退しちゃったよ俺達。



「では義母様おかあさまが帰った事ですしレベリングと検証の続きをしましょうか」

「ナミミ、あんた……その義母様おかあさまってのは本気?」

「大丈夫ですよ、義母様おかあさまと敵対したとしても本気で戦いますから」

「うん、うん? うーん……?」


 とりあえず、そういうことになった。





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