説得力
その後、ツーシさんがナミミ様に「いい手を思いつくまでコガネさんとのぴょんぴょんはお預けです」と言ったら秒で出してきた案。
それが、今日お店に出しているこの看板――『キントキ生産期間終了に伴い、販売は次の満月まで!』である。
そう。そもそも無いものは売れない。
いくら暴れたところで無ければ手に入らない。つまり暴動を起こしても無駄。
であれば暴動も起きないだろうという話だ。
正直もっと早くこの案を出してほしかった。
「ちょっと!? これどういうこと!?」
「どうもこうも、キントキの収穫時期が終わっちゃって今年の分はもう入荷できないってだけですが」
「ええ!? ニンジンって一年中穫れるもんじゃないの!?」
こちらのニンジンはそういうものらしい。品種改良の賜物なんだろう。
「ニンジンの収穫時期にも旬があって、しかもキントキはその旬の中でもひと際限られた期間でしか穫れないからこそ、この味なんですよ。だから次の売れる期間はまた来年ですね」
「……ぐぅ、確かに納得する
キントキの特別な味が、この説に説得力を持たせていた。
で、大体5人くらいにこの説明をすると、後ろの方にも話が回っていったようで、ぐぬぬっと歯をかみしめながら「と、とにかく今ある分を頂戴!」「はい、お一人様1本です」というやり取りになった。
正直もっと早くこの案を出してほしかった。(二度目)
「これで今日は心置きなく
「……ナミ、他にも未解決な問題があるんだけど」
「魔王とはどうにか休戦協定を結びたいところですが……サナチを差し出してなんとかなりませんかね。交換留学みたいな感じで」
「サナチ様嫌がると思うよ?」
「貴族なんですから私情より政略優先ですよ。他でもないサナチがそう言って私を説得したじゃないですか。言葉には責任が伴うのです」
お、鬼だ。鬼が居る。
可愛がろうって言ったその直後に差し出す算段ってまぁナミミ様ってば!
「実はビンタされたの根に持ってたり?」
「それは別に」
それは、ということは他になにかあるのだろうか。
あれかな。NTR関連の嫉妬心情か?
「……ムーンフォールでコガネさん攫ったじゃないですか」
「そこかぁ」
そういえばそんなこともあったな、と。俺的にはもはやいい思い出だったのだけど、ナミミ様はまだ許し切れていなかったらしい。
「あと単純に魔王の好むものがサナチ以外に思いつかないという点ですね。ここでキントキを交渉材料にしてしまうと、今度はコガネさんを置いていけと言う話になりかねませんし……」
「確かに」
そうなったら結局俺はナミミ様と一緒には居られなくなる。キントキでの説得は最終手段か。
「黒尻尾のバニーに対してはどうするおつもりで?」
一応また聞かれてる可能性も考慮して小声で話す。
「……いっそ魔王にぶつけてしまいたいところですが、積極的にそう動くと本当に反逆者ですからね……思いつかないので、今のとこは私が攫われそうになったらロニーやサナチに助けてもらう、くらいしかないでしょう」
「……まー、無事帰った後に考えましょうか。うん」
ハサミ様に頼めば何とかなる可能性もあるかもしれない。
相手がバニーである政治戦略については、ナミミ様やイロニムではまだまだ未熟らしい。平民バニーのツーシさんはもちろん、サナチ様もだ。
あれ? でもハサミ様も人見知り人妻バニーだった気が……い、いや、きっと辺境伯バニーなハサミ様とバルオウさんなら何とかしてくれると信じたい所存!
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(ここまで読んでいただいてありがとうございます!
★★★、フォロー、レビュー、❤で応援、感想等も頂けたら嬉しいです!
X(旧Twitter)ボタン等で広めてくださると喜びます! ボタン↓↓)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます