魔王様


 空に浮かんだ魔王様は、ゆっくりと下りてくる。


「いかん。いかんぞお主。その者はウチの娘の恋人じゃよ? 置いていくがよい」

「どうしてここに魔王が……チッ、流石に分が悪い……!」

「妾の国の、妾の町ぞ? むしろなぜバレぬと思った? 仲間は既に剥いだぞ」


 そう言って、手に大人な下着を摘まんでヒラヒラと見せる魔王様。

 なんだその大胆な黒い下着……えっろ。スケスケじゃん。


「すまんのぉ、妾が『奪いし者』で剥ぐと、下着しか残らんのじゃ」

「ッ! そうですか。ラビスはやられましたか」

「今ならまだ見逃してやろうぞ。どうする?」


 ピッと黒い下着を捨て、にこり、と魔王が笑う。

 同時に魔力の圧がぶわっと広がった。圧倒的、そう、圧倒的なのだ。

 逆らおうにも、桁が違いすぎるというのが一瞬で理解できる。できてしまう。


「ッ、仕方ありません。……ここは退きましょう」


 スッとナミミ様を地面に降ろす黒バニー。


「うむ。代わりにお主の仲間はあっちにおる。連れ帰るがよい」

「……」


 黒バニーは音もなく姿を消す。魔王様はしばらくどこかを見ているようであったので、隠れていても魔王様には見えているのかもしれない。

 俺には当然分からないが……


 しばらくして、魔王様はこちらを向いてニコリと笑った。


「ほっほっほ。大丈夫じゃったかの? ナミちゃんとコガネちゃんじゃったか?」

「……えっと」

「え、あ、はい。ありがとうございます魔王様」

「よいよい。イロニムの恋人じゃ、礼は不要であるよ。ほれ、飴ちゃんをあげよう」


 俺とナミミ様は魔王様からねじった包み紙に入れられた飴をもらう。

 俺達、イロニムの恋人ってしっかりばっちり認識されてたのか……魔王様に。


「イロニムのやつ、このところ仕事が手につかぬでの。多少はシャンとしてもらわねば魔王軍の沽券に関わるというに……ま、ええんじゃがの。妾も夫とはそうじゃったし」

「そ、そうですか」



 と、ここで魔王様はちらりとサナチ様とツーシさんの方を見る。


「……ああ。そっちのバニー。漏らしてしもうたか?」


 見れば、サナチ様の足を伝って地面に染みが広がっていた。

 無理もない。だって魔王である。


 俺ですらハッキリと分かる圧だった。

 魔法特化のサナチ様だと一体如何ほどの圧を感じただろうか。しかも今はサナチ様だけバニーの姿である。


「腰を抜かさぬとは大した子じゃ。いやぁすまなんだのぉ、大人げない事をしてしもうたわい。妾が綺麗にしてあげるぞよ。ほれ、少し股を開け。拭いてやろう」

「ぴぇっ……け、結構です」

「なぁに遠慮するでない、眼鏡の君。せっかく娘の恋人の友達がバニムーンから・・・・・・・遊びに来てくれたのじゃ。ちょっとその美しい腹を撫でさせ……げふん。その。まぁなんじゃ。娘の友をいきなり剥いだりはせぬよ。ゆっくりしていくがよい。……次の満月・・・・までと言わず、いつまでも。な? さ、風邪をひいてしまうぞ? このハンケチで足を拭かせてたもれ」


 にこり、とハンカチを手に笑う魔王様。

 ……あ。サナチ様が追加で漏らした。


 というか。今普通にバニムーンとか次の満月とか言ったよね?

 イロニム脱走計画、まだ企画段階なのにもうバレてるじゃん。

 えぇ……どうしよ。解決しないといけない問題が増えたんだけども。



 尚、サナチ様は魔王におもらしを拭いてもらったバニーとなった。

 お腹も撫でられてた。えーと、おめでとう?

 え、めでたくない? それはそう。




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