黒尻尾
「これを聞いて確信しました。ナミミ嬢は洗脳・利用されています」
「あっ、あなた! いつから、どこまで知って!?」
「このままではムーンフォールのみならず、バニムーンの重要拠点に忍び込まれて内部から陥落させられる恐れがある、と判断しました」
な……なにも言い返せねぇーーーー!!!!
実情としてイロニムはナミミ様に完全に懐いているわけだが、あちらの言葉を否定する材料が一切無い!
イロニムはそんな賢くないよ、としか言えないけど、それこそ四天王の策略では? とか言われたら何も言えねぇ……!
「ムーンフォールで用意された救助隊が役に立つならそれで良いかとも思ったのですが、そこのヒバニンで篭絡される始末。……何やってるんですか本当に。昨晩など特に隙だらけでしたよね? あの四天王の一角、嘆きのイロニムがあれほど無防備だったというのに何もしないとは」
「み、見てたの!? このすけべ! 変態!」
サナチ様の言葉にもどこ吹く風と平然としている黒バニー。
「ニンジンを求めて暴動? 暴動など起こせばいい。何の問題もないではないですか」
「そ、それは、ロニーを。イロニムをしっかり篭絡するために必要なんですよっ」
「ですから、そこがまずおかしい。……敵は殺すものですよ? 特に、あのように醜いバニーなど、生かす価値がない。しかも転移魔法という危険物、消すのが一番でしょう」
「ろ、ロニーは可愛いんですっ!! 馬鹿にしないでください!!」
「論点をずらさないでくださいますか? これだからヒバニンは……バニーに戻れるというのであれば早く戻っていただかなければ。話が通じませんね」
そう言いながら、黒バニーのバニラは一歩距離を詰めた。
「ご安心を。城の、『黒尻尾』の教育施設があります。そこでならきっと洗脳も解除できるでしょう」
「あの。バニラ様? ナミミ様は洗脳というより、頭がぴょんぴょんしてるだけで特に何も考えていないだけかと」
「? ムーンフォールの次期領主がそのような無能であるはずがないでしょう。いくらバニーを剥がれているとはいえ不敬ですよ、平民」
ツーシさんの言葉をあっさり否定する黒バニー。
「洗脳されて知能が下がっているとみるのが自然でしょう。そんなことも分からないとは……」
「……」
流石にこれには黙るしかない。
「では。行きましょうかナミミ嬢。大丈夫です、我々がしっかりお救いしますから。そのための黒尻尾です」
にこり、と口を開かず慈愛の笑みを浮かべて見せる黒バニー。
「ま、まってください。コガネさんも連れていきたいです」
「申し訳ありませんが、救助対象はナミミ嬢のみです」
……どうする? どうするべきだ?
これは……
と、サナチ様が一歩前に出る。
「……分かったわ。ナミミは連れて行きなさい。ナミミ。コガネは私達が責任をもってムーンフォールへ連れ帰るわ」
「サナチ!?」
「え? だって別に、ナミミが居ようが居まいが、次の満月で帰るのは変わらないでしょ? 私達がちゃんと帰れるかでロニムがこちらにちゃんと寝返ったかどうかを判別できるし、ロニムの負担も1人分軽くなるし」
「……確かに。先に帰ってもらうだけですね。バニラ様、ナミミ様をよろしくお願いします」
「素直でよろしい。どうやらまだまともな頭が残っていたようでなによりです」
「まってください! 私まだ帰りませんよ!? モラトリアム、そう、モラトリアムを享受するんですっ」
「往生際が悪いですよ、っと」
ひょい、とナミミ様を担ぎ上げる黒バニー。
どうしよう。俺とナミミ様が一時的に離れて、満月になったらムーンフォールで再会する流れだろうか?
「あ。……あのー。ひとつ聞いてもいいですか?」
「……なんですかヒバニン?」
「教育施設、ってどういうことをするんですかね?」
「洗脳を解き、まともな頭に戻すだけですよ。利敵行為なんてしないように、じっくりと教え込むだけです」
……それこそ洗脳なのでは?
ここは止めるべき、では!?
「……陛下に止められていなければあなたの抹殺も仕事でしたが、命拾いしましたね」
「ッ」
軽く殺気を向けられ、ゾクッと背筋が凍る。
「では。失礼――む」
黒バニーがすっと一歩下がると、そこに黒い雷が降り注いだ。
「おや、今のを避けるか。やりおるのぉ」
「……これはこれは。大物ですね」
そう言って顔を上げる黒バニー。その視線の先には、ダークエルフのじゃロリバニー、魔王様が黒い靄を纏って浮いていた。
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