そっとあったネタバレの話



「良く分からないんだけど、今のどういう意味のやり取りよ?」

「ああ。ほら、ドデカ白ニンジンってありますよね? ダイコンなんですが」

「うん? ああ。うん。ドデカ白ニンジンね」


 そう。ドデカ白ニンジン。正式名称、ダイコンである。



 ……先日――といってもツーシさんたちが来るちょっと前だが、俺は八百屋でドデカ白ニンジンを見たのだ。


『おーい、納品にきたよ』

『ああ。ちょっとまってくれ、すぐそっちいくから……はい、まいどっ、ダイコン一箱ね!』

『え? ダイコン? ドデカ白ニンジンじゃなくて?』

『どでかしろ……? 何言ってんだ。ダイコンだろダイコン』

『え?』

『あ?』


 はい。そりゃ八百屋があるなら野菜を見るし名前を言う機会もあるよね。

 そんなわけでナミミ様が俺を騙して野菜の名前に悉くニンジンを付けて教えてくれていたことが発覚。それで『やっぱりダイコンじゃん!』と思ったとたん、ダイコンを召喚できなくなってしまったのだ。そう、ニンニクの時と同じように。


 で、その後ナミミ様にその話をしたところ、


『あー。でも召喚できてたならもうニンジンでいいのでは? 何か不都合が?』

『たしかに』

『今はそんなことより、ちゅっ、身体の検証の方が大事ですよね?』

『それもそう』

『一応言っておきますと、あむ。うちの方言みたいですね。ぺろぺろ……美味し。やっぱり薬指ですね……』

『なるほどなー』


 と、その後やっぱりダイコンをドデカ白ニンジンとして召喚できるようになったのだ。

 ……

 ある意味頭ぴょんぴょんしてて良かったと言うべきか……?


「ってことがあったんですよサナチ様」

「……お、おう? そうなのね? 認識がスキルに影響する、なんて、初めて聞いたわ」

「コガネさんのスキルは特別なんですよ、サナチ」


 ……うん。

 何が言いたいかというと。


「俺がナミに騙されても、誰にも何の不都合はないんですよ。俺含めてね」


 そして認識がスキルに影響してるので、騙してくれた方が上手く行く。

 きっと俺のスキルの成長方向も、ナミミ様の言う通り伸びるだろう、と思ってた方がそう伸びるに違いないのだ。


「……まぁ私としても次の満月でちゃんとみんなで帰れるならそれでいいわね」

「サナチ、もう1か月この生活を続けたいと思ったりしませんか?」

「ナミミ? ちゃんと帰るのよ? 多分一度でも躊躇したら二度とムーンフォールに戻れないわ。もう1ヶ月、もう1ヶ月が延々と続くのよ」

「それはそれで幸せなので良いと思いま――」

「ナミミ様ー? ママのお仕事はヒモでよろしかったですかー?」

「――ちゃんと帰りますって。わかってますよツーシ……」


 ナミミ様はちょっと渋りながらもそう言った。


「というか、早く帰ってバニーに戻らないと大変ですよ」

「? 何がですか?」

「いえ、バニーガールなら出産が楽なんですが、ヒバニンは出産も命懸けじゃないですか。下手をすれば死ぬそうですよ? つわり? とかいうのもあるらしいです。生理を自分の意志で止められられないそうですし」

「……ムーンフォールに帰る理由が一つできましたね」


 なにそれバニーガールは生理を自分の意志でコントロールできて、妊娠もつわりがなくて、出産もイージーなの?

 やっぱこの世界、バニーガールのために出来てるわぁ……




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