イロニム、お前……ッ!
「あっ。諸々のことは一旦おいといて、サナチ様とツーシさんの二人もここで住むってことになると布団が足りないんじゃないか? 買ってこないとな」
「おおっと! それなら大丈夫だよコガネ。いつかこんなこともあろうかと、お布団セットは5個買ってあったから!」
イロニム、お前……ッ! そのうちの1つを自分で使ったとしても、5個って!
4人が泊ってくれる想定だったってことかよ……ッ!
そして、そのお布団は俺達が初めて使ったんだよな……
「イロニム。あんたとは敵同士だったけど、やっぱり仲良くできそうな気がするわ」
「え? へへ、そう? あ、私の事はロニーって呼んでもいいよ、サナチたん!」
「……たん?」
「……ごめん噛んだ。『チ』と『ちゃ』が続くの地味に言いにくい。サナチ、ちゃん」
「別に好きに呼んでくれていいわよ、たんでも様でも」
謎の友情が芽生えるサナチ様とイロニム。ぐっと握手を交わす。
と、ここでナミミ様が割り込んだ。イロニムの服の中のどこだかをつねりつつ。
「ぴにゃんっ! な、なぁにナミ?」
「ロニー。ロニーの事をロニーって呼んでいいのは私だけではないのですか?」
「ああっ、ご、ごめんナミ!……そ、そうだねっ! ナミだけの特別な呼び名だねっ!」
意外と独占欲が強いナミミ様だ。俺がイロニムの事をイロニムと呼ぶのは、このナミミ様の独占欲による所もある。
「あの、やっぱりロニムとかで呼んでもらっていいかな?」
「わかったわ。じゃあロニちょむ」
「ロニムで」
「……ロニちょむ可愛いのに?」
「ロニムで」
「仕方ないわね。ロニム」
ということになった。
貴族の学校とかで流行ってたのかな、ちょむ。
と、ついでにイロニムはツーシさんにも声をかける。
「あ。そうだ。ツーシさんに相談したいんだけど、いいかな?」
「なんですかイロニム? ムーンフォールの落とし方なら相談に乗りませんが」
「そうじゃなくて、ニンジン屋をどうしようかって相談したくてさ。私達がムーンフォールに行った後、キントキが買えなくなったバニーたちで暴動が起きると流石に寝覚めが悪いっていうか」
おお、そうだ。ナミミ様の説得を一発で終わらせたツーシ先生なら、きっといい大人の知恵を授けてくれるに違いない!
「……魔王領で暴動起こすのはむしろ手柄ですよね? 手土産として丁度いいくらいでは?」
「それはナミも言ってたけど、去る兎は足跡を消すって言葉もあるでしょ?」
「ふーむ。……そんなに人気なのですか? サナチ様も買ったキントキを美味しそうに食べてましたけど、所詮ニンジンですよね?」
あ。そういえばツーシさんは俺のキントキ食べたことなかったっけか。
とりあえず1本、いやサナチ様分も併せて2本……4本出して、1人1本配る。
「……ッ! なるほど。これは、結構キますね」
「でしょー? 私もうキントキないと一日が始まらなくって!」
「ね、ハマるバニー出るの分かるわよねコレ。コガネ、もう一本!」
「あ。コガネさん。私もおかわりをください」
「はいどうぞー。今日は食べ放題ですよーい」
今日の晩御飯はキントキになるかなぁ。俺も齧っとこ。ポリポリ。
「それで、何かいい知恵はないかなって」
「……うーん。大量に置いていったとしても腐りますからね。いっそ暴動をおこしそうなくらいキントキにハマっている全バニーをムーンフォールに引き抜いてしまいますか? そうすれば我々の戦争も終結するでしょうし」
「もっとこう、ママが怒らない程度の現状維持みたいな案が欲しいです……!」
「我儘が多いですね」
「ツーシ。私からもお願いします。愛するロニーの我儘なので、叶えてあげたいのです」
「……はぁ、分かりました。何か考えておきます」
流石のツーシ先生も、すぐには案が出ないようだ。
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