疑惑(ナミミ視点)





 これからはナミミ・ムーンフォールではなく、ヒバニンのナミとして生きていこう。と、決めて、コガネ――コガネさんと恋人になりました。

 偽装ですけど……一生偽装がずっと続くなら、それはもう本物ですよね?

 ちょっとズルいでしょうか。


 でも、イロニムにバニー力を奪われてしまった以上、もう私がナミミ・ムーンフォールに戻ることは一生ないわけですし、仕方ない、ですよね。

 恋人ならコガネさんの隣にずっといてもいいですよね。

 ……あ、あわよくばコガネさんと恋人らしくトントンを、なんて、これっぽっちしか思ってませんよ? いずれはうさぴょんもしたいなんて。これっぽっちしか!

 もちろん、嫌がるコガネさんに強要はしませんが!

 ……先日のレベル上げではすごく甘えてしまいましたが! 猛省します!



 でも、コガネさんにはバニーガールだった時に色々と酷いことをしてしまっています。

 きっとコガネさんは心の奥底では私のことを恨んでいるでしょう。

 ですがここで「いままでごめんなさい」と謝るのは自己満足でしかありません。


 今もこうして、偽装恋人という役割ワガママを押し付けてしまっていますし……

 すりこみ、とでも言うのでしょうか。未だにコガネさんは私の事を飼い主のように扱ってくれますし。

 なので、先日は頭をナデナデしてもらって「もう飼い主ではない」と主張してみたんです。ええ、けして甘えたくて甘えたわけじゃ……すみません頭撫でられて気持ちよかったです、ごめんなさい。



 ……私はコガネさんをこんな風にしてしまった罰を受けねばいけません。

 コガネさんの心の奥底にある恨みをこの身体で受け止めてスッキリしてもらう。それがヒバニンになった私の義務であるとも言えるでしょう。


 でも、コガネさんは優しいので、私が好きに殴れと言っても殴ってはくれないでしょう。

 そこでペナルティというものを考えました。

 分かりやすく正当な名目があれば、コガネさんも私の事を殴ってくれるはずです。



「私がコガネさんのことを呼び捨てしてしまったら頭をぶん殴ってくださいね」

「なぜに!?」

「痛くなければ覚えませんから。私のペナルティです」


 さぁ、どんな一撃をくださいますか!?

 私はもうヒバニンのナミなので、殴り放題ですよ!


「もしかしてからかってる? 俺がナミを殴れるわけないでしょ」


 ……え? 殴らないんですか?

 ちょっとまってください。それだとただの恋人ではないですか!

 そんなの私が嬉しくて、コガネさんに負担になるだけじゃないですか!


「お願いです殴ってください。じゃないと正気を保てないかもしれませんので」

「あれ? 今日ってもう満月だっけ?」

「もし殴らないというのなら様付けして土下座で謝罪しますよ?」

「どうして!?」


 殴ってくれない。殴ってくれない。なんで? どうして?

 ! そうだ。まだ私はペナルティの条件を満たしてませんでした!


「……ではコガネ。気を取り直して早速『ニンジン召喚2』の検証を行いましょう! あ、しまった! 呼び捨てしてしまいました。さぁどうぞ!」

「今のはわざとだよね?」

「どうぞ!」


 これでいいはずです。と、殴りやすいように頭を差し出します。

 もしバニーだったなら、耳を差し出す格好です。

 私の命は、コガネさんに握られているんですよ? さぁ、思いっきりどうぞ!


「え、えいっ」


 こつん! と、コガネさんがつむじを叩いてくれました!

 その瞬間、私の身体をビリッと、まるでコシコシしたかのような感覚が走りました。


「……んんんっ……! はぁ……っ」

「あ、あのー? ナミ、大丈夫……か?」


 ……大丈夫、じゃないかもしれません。なんでこんな感覚が。

 これ、もしかして罰にならないんじゃないでしょうか?

 コガネさんってば、殴れって言ったのに。優しすぎますよ?


「……次はもっと強く叩いてくださいね?」


 そうです。きっと弱かったから、頭を撫でられたくらいの感覚でしかなかったから。

 もっと強く殴ってもらえれば、きっと罰になるはずなんです!




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