――神とコガネ。
――
「バニーガールしか勝たん。こんにちわ、あるいはこんばんわ。私は神です」
「……そういう日もありますね?」
俺の名は
どこにでもいる普通の成人男性だ。俺は……何をしていたっけ? 思い出せない。なぜ、こんななにも無い白い部屋で、椅子に座っているのだろう。
そして、どこからか、男とも女ともつかない中性的な声が聞こえてくる。
誘拐犯、だろうか?
「あなたは、どこにでもいる。そう、どこにでもいる普通の男性。部屋にはバニーガールのグラビアや、バニーガールのフィギュアが棚に飾ってあるような。だよね?」
「……なぜ俺の部屋の事を? ――いや。バーナム効果か?」
バーナム効果。誰にでも当てはまるような一般的なことを言っているだけなのだが、まるで自分の事を言い当てられたかのように感じてしまう心理現象だ。
一人暮らしの成人男性の部屋ともなれば、バニーガールのグラビア写真集やバニーガールのフィギュア、そしてお風呂前に置いて楽しむ&いつか彼女に着てもらうためのバニーガール衣装一式の1つや2つ、あって当然である。
「そうだよね。そのくらい当然だ、と思う君だから今ここにいるんだけど」
「……どういうことだ?」
「残念ながら、多くの人はバニーガールのコスまでは持ってないんだ」
「!? そんなバカな。バニーガールだぞ!?」
将来はバニーガールを侍らせられるお金持ちになりたい。それは人類の共通の夢、憧れではなかったのか?
俺は自分の地盤がぐらりと揺れる心地がした。
「そうだよね。おかしいよね。僕なんて家にバニーガール衣装専用のウォークインクローゼットがあるよ?」
「なにそれすごい!」
「だろ? だろー?」
自慢げな声。だが得意になって当然だろうそれは。羨ましい……!
家にバニーガール衣装専用があるってことは、もしかして。
「アンタの家には……バニーガールが、居るのか!?」
「それがね。残念ながら……僕にできるのは世界を作る事だけで、バニーガールを家に呼ぶことはできなくてね……」
「そんな!? え、アンタ自分の事神様って言ってたじゃん! なんで!? 神になってもバニーガールとは手に入らない幻想だとでもいうのか!?」
「神様ってね、結構孤独なんだよ……」
それは世界の悲しみを煮詰めたような声だった。そりゃそうだ。神にまでなったのに、バニーガールがいないのでは片手落ち。いや、両手両足胴体頭落ちと言ってもいい。
「神界は神様でなければごくわずかな時間しか存在できない。記憶も保持できない。今、こうしてる君もね」
「なら他の神様にバニーガールになってもらう、とか?」
「いや。神様は基本的に服を変えられないんだ。『信仰されている姿』というものがあるからね。……神様のバニーガールでもいれば話は別なんだけど」
いても兎耳の神様くらいで、バニーガールはいないらしい。
「なんてこった。それは、お辛いでしょう」
「ああ……だが、安心してくれ同士虎金。君は実に運が良い。これから君は、バニーガールが支配する世界に転移することになっている」
「……バニーガールが支配する、世界?」
「そう。それが僕の作った世界。バニガルドだ」
バニガルドはバニーガールが物理・魔術的に力を持ち、バニーガールが支配する、バニーガールのための世界。華やかな美女達がみんなバニーガールのユートピア。
幼女やオバちゃん達もバニーガールなのはご愛敬。
「控えめに言って理想郷ですね」
「作った僕は見るだけしかできなかったからかえって生殺しだよ。でも、なんか最近バニガルドに少し変な要素ができてしまってね。君には世界を救ってほしいんだ」
「変な要素?」
「行けば分かる。それに、君ならなんてことはない事さ。だが君は……同士だからね。ごく自然に世界で過ごしてくれるだけでいい。ただ僕の代わりにバニーガールを堪能してくれるだけでもいい」
そういうと、部屋の明度が強くなる。不思議と眩しくはない。
「どうせ記憶が残らないのにここに呼んだのは、僕の世界を自慢する相手の顔を直接見たかったからさ。……では楽しんでくれ。僕の、バニーガールの世界を。あわよくばバニーガールを神様にして僕の元へ送っておくれ――」
神様の声を聴きながらも視界は白さを増して、俺は、意識を失った。
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