魔王国にさらわれたけれど別に帰れなくてもいい気がする編

魔王城


 そして俺とナミミ様は魔王軍に誘拐された。


 誘拐犯イロニムの転移魔法で魔王城にまでやってきた。

 石造りの内装は、前に見た金バニー様のお城と大して変わらないように思える。


「……えーっと、その。ご、ごめんコガネ! ちょっと暴走してた!!」

「お、おう」


 転移魔法を使ったことで溢れていた魔力が収まったのだろう、イロニムは慌てて俺に謝罪をしてきた。


「いやぁ、戦いでたかぶったのもあるけど……その、ごめんよぅ。ホントに遊びに行くだけのつもりだったんだよぅ」

「えっと、それじゃあ家に帰してもらえたりすんのかな? ついでにナミミ様もバニーに戻しつつ」

「うー、ごめん。今回はもう長距離転移3人分は無理。あとナミミのバニーりょくも『奪いし者』で奪っちゃったし戻せないかな……」


 あとナミミ様が未だにプリけつの下着姿晒してるんだけど、何か被せてあげて。

 と心の中だけで言ってチラチラと白い美尻を鑑賞させていただく。


「とりあえず私の部屋に泊ってって。まだ満月だし、隠れたほうが良いし」

「そうだな、お世話になるよ」

「……ナミミのお尻、触る? 今なら気を失ってるからバレないよ?」

「おっ、俺がいつナミミ様のお尻を触りたいって言ったよ!? 触りたいけど! そういうこと勝手にしたら後々気まずくなるだろ!」

「えー、でもコシコシする約束してたしこのくらい合意済みじゃないかなぁ」


 それは……バニーでなくなってもコシコシできるんですかね? ねぇ?


「うー、ホントにごめんよぅ。次の満月には帰せるから、それまでは私が責任もって面倒みるね!」


 すごくペットっぽいぞ? ……ナミミ様とつがいのペットとして褐色エルフバニーのイロニムに面倒を見てもらう日々。悪くない。むしろ最高では?




「んぉ? 誰ぞ、おるのかえ?」


 イロニムの部屋に向かっていると、褐色ロリバニーが現れた。

 エルフ耳やら配色やらがイロニムと同じで、濃紫のバニースーツに、白い網タイツ。

 身体にまとわりつこうとする黒いもやをうっとおしそうにパタパタ払いつつ、近づいてくる。イロニムの妹さんだろうか?


「あ。ママ。巡回?」

「おお。イロニムかえ。うむ、その通りじゃ、満月じゃし、良からぬことを企てる輩がおらんとも限らぬでな」


 ママ……ママ!? ちょ、イロニムって魔王の娘だよな? ってことは……

 この褐色ロリエルフバニーが、魔王!? 魔王様!?


「あ、ママは私よりもエルフの血が濃いから。これでも500歳越えてるんだよ」

「イロニムや。わらわの歳の話はするでない。このぴちぴちの褐色卵肌はどうみても10にも満たぬ童女のそれじゃろ? つまりそういうことなのじゃ」

「私を産んだくせに」

「ほっほっほ。目の前の妾が現実じゃよ」


 しかも、のじゃロリババアだと!?

 ま、魔王軍、なんて恐ろしい魔王をトップに据えてるんだ……!!


「あの。満月ですけど大丈夫なんですか?」

「妾、ルナティック症候群は軽い方での。まぁ靄はうっとおしいが、見境なくヒバニンを襲ったりはせんよ。安心してたもれ」


 ほっほっほ、と口元をかくして笑うその姿は正しくロリババア。


「それよりイロニム。そのヒバニン達はなんじゃ? まさか、獣欲の赴くままに攫ってきた、などとは申すまいなぁ?」

「ぴぇっ」


 魔王様がひと睨みすると、足元からぶわっと溢れる黒い靄。


「ちっ、違うよ!? この二人はね、ろ、路頭に迷ってたから拾ったの! ちゃ、ちゃんと面倒見るから!!」

「元居たところに返してきなさい。ヒバニンも人なのじゃよ? いや、ヒバニンこそが人なのじゃ。ペットのように扱ってよいものではない」

「あ、すみません。俺はイロニムとは友人でして。コッチの子の介抱を頼んでまして」

「おおそうであるか。うむ、うむ。ならば良いのじゃ」


 俺が口をはさむと、サァッと黒い靄が散っていく。


「とはいえ、妾じゃったからよかったものの、他の者と遭遇したら大変なことになるであろ? 城に置くのは止めておいた方が良いのぉ。確かイロニムは城下町に今は使ってない拠点があったじゃろ? そっちに置いとくのが良いのではないか?」

「え、ええ……うん、わ、わかったよママ」

「うむ。ではの、ヒバニンの者よ。……よく見るとなかなか見込みのありそうなオスじゃな。幾久いくひさしくイロニムと仲良くしてやっておくれ」

「あ、はい」


 ポンポン、とロリババアバニーに肩を叩かれた。……その靄、足場にもなるんですね。


「ではの」


 と、魔王様は巡回に戻っていった。




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