神をも恐れぬ悪行


「なっ、お、おいイロニム。まさか! やめろよ! 頼むから!」

「ごめんやめない。だって私、魔王軍四天王だからね」


 そう言いながら、イロニムは気絶したままのナミミ様の赤レオタードをべりぃっと捲り下ろす。ぷるん、とナミミ様の、レースの下着に包まれている胸がこぼれ出て、へそまで見えてしまう。


「喰らえ、『奪いし者』」


 イロニムがそう呟くと、赤いレオタードやバニー耳が、黒タイツがぱぁっと光の粒子に分解され、イロニムの濃紫のバニーレオタードに吸い込まれていった。

 残されたのは、白い下着姿の――下はレオタードに合わせた角度のやつ――可愛らしいナミミ様だけ。赤いバニーの衣装は、消えてしまった。


「あははっ! 満月で脱兎を忘れたね! 大戦果だよ、まさかナミミのバニーりょくを奪えるなんて!」

「え、ごめん。バニ、なんだって?」

「あ。ヒバニンのコガネには分からないか。バニーガールの力のことだよ」


 いや、そんなシステムで、しかも奪えるものなのかよ。


「いや、普通は奪えないよ? 私が、魔王の血筋が特別なの。血統スキル、『奪いし者』。返すレオタードがなければ、ナミミはもうただのヒバニンってわけ」


 魔王の血筋。『奪いし者』。なんということだ。ってことは――


 ――ナミミ様は、もう、バニーガールじゃ、ない……?


「おいッ!! 神をも恐れぬ悪行すぎるだろ!?」

「そうだよ。『この世界をふざけた神様から解放する』、それが魔王軍の掲げる誓約せいやくだからね。本当は命も取るところなんだよ?」


 そんなお題目を掲げる魔王軍の、四天王ともなれば、目の前のバニーガールを剥げるなら剥いで当然。命が残っているだけでも、感謝して欲しいということか。


「でも、コガネはナミミを殺したら私の事絶対許さないでしょ?」

「それはそう」

「だから剥いだの。よいしょっと」


 言いながら、イロニムはナミミ様を肩に軽々担ぎ上げる。ちょ、お尻が! ナミミ様のお尻が!


「ナミミは人質だよ。ねぇコガネ、魔王軍わたしに誘拐されて?」


 さぁ来なよ。と手を伸ばすイロニム。

 赤い瞳が妖しい光を持って揺れている。これはもしかして、イロニムも満月に当てられてるのではなかろうか。


「断ったらコガネの大好きなナミミをどうするか分からないなー?」

「……置き手紙書いてもいい? 突然の失踪はこっちの友達も心配するだろうから、せめて安否だけでも伝えときたいなって」

「しょうがないなぁコガネは。いいよー」


 いいのかよ。まぁ、ナミミ様と一緒に魔王軍に誘拐されますー、と書いとくか。

 あ、ついでにイロニムが転移魔法の使い手だってことも書いておこう。


「……ちょっとぉ。魔王軍四天王の手札バラさないでよ。別にいいけど」

「いいのかよ。書いといてなんだけど」

「だって、こんな場所から誘拐した時点でバレちゃうでしょ?」


 それもそうだけど。

 うーん、なんかこう、相手がバニーガールで友達のイロニムだからか誘拐犯との会話っぽくねぇなー。気が抜けちゃう。

 ナミミ様が大ピンチだってのに……いや、命は無事だから、それほど喫緊きっきんってわけでもないのかな?


 別にヒバニンでもナミミ様が可愛いのは変わらないしな……下着姿えっろ。っていうか下着付けてたんですねバニーガール。

 一緒の牢屋に入れられたりするの? 我慢できなくないですかね俺。大丈夫か? やっぱりナミミ様のピンチなのでは。ぐへへ。






―――――――――――――――――――――――――――――――――

(本日朝8時21分に、3話の次にコガネと神様の邂逅を挿入追加しましたわ。

 そのほか、あらすじとかちょいちょい手を入れたりしてます)


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