兎VS兎
さて、そんなこんなで何故かナミミ様とイロニムが戦うことになってしまったわけだが……イロニムが牢屋の外に足を踏み出すと同時に、ナミミ様がぶぉんとハルバードを縦に振りぬいた。いや、その、天井と床は!? 今明らかに天井と床を無視して……斬れてるーー! ぱっくり斬れてるよぅ!? どうなってんのそれ!
イロニムはイロニムで奇襲を予測していたのか、無事に通路の反対側まで逃げていた。
「はっ、外って、部屋の外ってこと? 建物の外じゃなくって!」
「やはり躱しますか……だって、ここならコガネにも安全に見てもらえますよね?」
「いや、ナミミがあけた穴でわりと余波が飛んでない? コガネ―、大丈夫?」
あっ、大丈夫でーす。とりあえず布団を盾に少しでも防御を固めておこう。
「じゃ、問題ないようなので続きといきましょうか」
「ふふん。ぴょんぴょんしてる状態で私に勝てるかなー?」
「頑張れナミミ様ー! イロニム帰れ! かーえーれ! かーえーれっ!」
「あれぇ!? 私今コガネを守るバニーナイトの気分だったんだよ!? 応援してくれないの!?」
「うるせぇ、俺はナミミ様とコシコシしてぇんだよ! 我慢の限界だよ!」
「お、おう。なんかごめ――」
ふぉん。と風を切る音と共に、ナミミ様が通路いっぱいにハルバードを横凪ぐ。
「ッぶな」
イロニムはぐぃんと膝を曲げ、上半身を逸らしてハルバードの下を潜り抜ける。リンボーダンスのように。そして、ハルバードは何の抵抗も感じさせず壁をすぱっと斬っていた。
ナミミ様が前線に立ったら敵の首がぽぽぽぽーん、とサナチ様が言っていたのも頷ける。
「こんな通路なのに長物を使って何の躊躇も必要ないとかっ! やっぱりムーンフォールの
「なら大人しく狩られなさい、私はコガネと、こ、コシコシするので!」
「うーん、私どうにもお邪魔虫だったっぽいし、退いてもいいんだけど――」
お。そうだぞお邪魔虫だぞ。ここは友達の幸せを願ってさっさと帰れ。
「――私もコガネが気に入っちゃってるんだよねぇ……! どう、この戦い、勝った方がコガネと致すってことで!」
「それ、私が乗る理由あります? コガネも私としたがってるんですよ?」
「コガネー? 私はぴょんぴょんしてあげるよ?」
何ぃ!?……い、いやっ! だ、だが!
「それでも俺はっ! ナミミ様とコシコシをするッ! もしイロニムとするなら、それはナミミ様の許可があっての話ッ! なぜなら俺はナミミ様の忠実なペットなのでなッ!」
筋はちゃんと通す男、それがこの俺
「ふふふ、嬉しいですコガネ。あ、もちろん許可しません。私の次であってもです」
「残念、交渉決裂かぁ。フラれちゃった。やっぱ美バニーの方がいいよね……」
「――アースニンジン!」
そんな会話をしながらもナミミ様は床や天井からアースニンジンを繰り出す。イロニムを串刺しにしようとする土の三角錐達。だが、この鋭い土の三角錐をイロニムは悉く躱していく。
「あ、いや。別にナミミ様から許可があるならぜひともしたいわけだが」
「! なるほど、じゃあナミミを倒せば、実質許可は出たものということで!」
「ダメに決まっていますが? アイスニンジン!!」
「私も愛のあるぴょんぴょんしたいのッ! フレアウォール! いいじゃんケチ!!」
通路を埋め尽くす数の
蒸発した水蒸気がぶわりと跳ね返りナミミ様を襲う。ハルバードをガッと床の裂け目に引っ掛けて踏ん張るナミミ様。水蒸気に隠れて姿が見えなくなる――
「それは悪手だよッ」
「なっ……あガッ!?」
ガツン! と鈍い音とナミミ様の短い悲鳴。水蒸気が晴れると、そこには地に伏したナミミ様と、小刀の峰を振り下ろした姿のイロニムが居た。
「ふぅ、こんな狭い場所でアイス系なんて使ったら反撃食らうのなんて当然じゃん。正気じゃなかったってのもあるけど、経験も足りてないね!」
そう言って、勝負はついたと小刀をくるくるっと回して鞘に納めるイロニム。
「ちょ、おい! ナミミ様は無事なんだろうな!?」
「あー、無事無事。バニーガールがこのくらいで死ぬわけないってぇ。コガネに嫌われたくないし、命までは取らないよ」
ヒラヒラと手を振る。そして、イロニムはナミミ様のバニー耳を掴んで持ち上げると、壁にもたれるように座らせる。ナミミ様の肩が呼吸で動いていた。どうやら気絶しているだけというのは本当らしい。
「でも、せっかく
そう言って、イロニムはナミミ様の赤いレオタードの胸元に、ぐっと手をかけた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(そういえば見切り発車すぎる開始だったので、序盤を一部改稿して読みやすくしようかと考えていますわ。
具体的に言えばあらすじや、コガネのスタンスがいまいちあやふやなまま進んできちゃったので、そもそもコガネがバニー好きなのか? という点についてハッキリさせたいと思いますの)
(ここまで読んでいただいてありがとうございます!
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