イロニム
「どうしてここが」
ナミミ様が俺に地下牢を貸してくれたのは夕方。それも安全を考えて兵士たちにすら言っていないはずだ。
それをどうして魔王軍のイロニムが知っているのか。
「簡単だよ? ほら、コガネ私の媚薬もってるでしょ? あの瓶の反応を追ってきたんだよ。今日は満月だし、絶対手元に持ってると思って」
言われてみれば、確かに念のためにここにあの薬を持ってきていた。
その瓶に仕掛けがあり、イロニムはそれをマーカーにして転移してきたわけか。
で、近くに転移して様子を窺ったところ、なんと場所が地下牢な上に、扉越しに談笑してるしで、こっそりと近くの牢に隠れて様子見しつつ待っていたらしい。
「というか、理性は大丈夫なのか理性は。サナチ様もだいぶ辛そうだったぞ?」
「ああ。大丈夫大丈夫。ちょっと火照ってるけど、溢れる分の魔力をガンガン使っちゃえば何の問題もないんだよ。運動で発散してる人もいたでしょ?」
そういえばセワンさんも走り込みしてたっけ。
そして転移魔法は相当魔力を消費するらしく、いわゆる賢者モード的なスッキリ状態らしい。
「だから私はコガネの意志を無視してぴょんぴょんしたりしないよ? もちろん、コガネがしたいなら付き合うけど。全然付き合うけど。あ、する?」
「うっ、どうしよう。悩む……」
「あはっ、悩んでくれるんだねぇ。いやー、隣の子も併せて魔王軍に勧誘しようかなぁ」
「? どうしてサナチ様まで?」
「醜いバニーだからさ」
ニヤリ、と自嘲のような闇を含んだ笑いを浮かべるイロニム。
「……もしかして、イロニムって不細工とか言われるタイプだったの?」
「うん。黒い網タイツの似合わない、ダークエルフだからね」
あー。そういうこの世界文化特有の謎判定。
褐色肌に白い網タイツもいいと思うんだけどなぁ。えっちで。
「俺の基準だと美女だよ。超顔整ってるし、スタイルもいいし。敵対陣営のお姫様で幹部っていうのはちょっとアレだけど、友達だし。今も襲わないでくれてる良い奴だろ?」
「やっぱ強引にぴょんぴょんしていい?」
「襲わないでくれてる良い奴だろ!?」
「だ、だってそんな熱烈に口説かれたら我慢できなくなっちゃうでしょ!? ったく。私じゃなかったらとっくにボロゾーキンだよ!!」
ぼ、ボロ雑巾なのか
「ねぇコガネ。こんな窮屈なトコ抜け出して魔王軍にこない?」
「行かない。そもそも牢屋に居るのは俺も同意してのことだからな。なにせ満月だし」
「ちぇっ。今日なら転移使い放題なのに……私が不満じゃないなら何が不満なのさ」
「ナミミ様に対して裏切りとかしたくないんだよ。俺ってば誠実なペットだからさ」
「命を助けられたから? どうせバニムーン王国の連中が仕込んだヤラセだよ」
そう言われて、あの初日、宰相バニーを思い出す……だめだ、肌の
「だとしても生活に不満はないしな……」
「でもナミミから逃げてこんなところにいるわけじゃん? ああいう一見真面目そうなのってねちっこいぴょんぴょんするタイプでしょ。だからイヤになって。でしょ?」
「いや、俺はナミミ様とぴょんぴょんしたことはないぞ?」
ねちっこいぴょんぴょんってなんだよ興味しかねぇわ。
「……えっ!? あの、その、美バニーはいつでもぴょんぴょんできるからガッつかない余裕ってやつ?」
「いや、多分単にナミミ様が奥手なだけだな」
「あ、そっか。バニムーンのバニーはウチと違ってやりたい時にヒバニン襲えばいいだけだもんね……そっかそっか。じゃあ箱入りウサギってこと。そっちかー」
……うん? なんかそう聞くとまるで魔国とムーンフォール領は近しい価値観を持ってる気がするな。少なくともヒバニンに対しては、だけど。
魔王の宣言が『全てのバニーガールを滅ぼす』って話だから、相対的にヒバニンにも色々やらせたり人権もたせたりしてるってことなのかな。それはそれで魔国はアリかもしれない。
ま、俺はナミミ様に捨てられでもしない限りは裏切ったりしないけどな! もちろんこの会話もあとでナミミ様にご報告するぜ!?
「ちなみに隣にいるサナチ様は俺に手を出そうとした罪で懲罰房に入っている」
「は? コガネを? ならやっぱ勧誘なしだね」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(ここまで読んでいただいてありがとうございます!
★★★、フォロー、レビュー、❤で応援、感想等も頂けたら嬉しいです!)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます