休日のんびり町探索(1)
さてさて。引き続き検証は続けるらしいが、生活も大事である。
今日はレベリングもお休みで、ニンジン係の仕事も前日のうちに出しといたのでお休み。つまり今日は完全に休暇というわけである!
というわけで、今日は砦を出て町にやってきた。
谷を塞ぐように建てられているムーンフォール砦、その中にある小さな町だ。城下町、いや、砦中町とでもいうべきだろうか。……あれ? 砦出てねぇな? まぁいいか。
初日に泊まった宿のある町よりも小さいが、それなりに店もある。
尚、ナミミ様からニンジン係のお
「まずは食べ物だな。お肉食べたい! 異世界なら串焼き肉の屋台とかあるだろ!」
日頃、砦で出てくる食べ物はわりと野菜中心である。特にニンジン。
一応主食はパン食なのだが、バニーガールはニンジンが好きなようで大量生産・大量流通しているそうな。
蒸したニンジンにバターを乗せた、じゃがバターならぬニンジンバターは中々美味しかったぞ。
で、つまりお肉が少ないのだ。ヘルシー。
……成人男子には物足りねぇんだよな。やっぱ肉よ、肉。
案の定、串焼き屋の屋台はすぐに見つかった。布レオタードの黄バニーお姉さんがエプロンをつけて肉を焼いている。肉と肉の間にジェンガみたく切られたニンジンが挟まっているのはご愛敬。ネギまっぽさあるね。
えーっと、お財布の中身……よし、余裕で買えるな! 手始めにこれを頂こう。
「串焼きください!」
「はいよー!……ん? ヒバニンか。ご主人様のお使いかい? 偉いねぇ」
「あ、いえ、自分用です」
「おやそうかい。ニンジン抜きにする?」
「いえ、折角なのでそのままで」
と、串焼きゲットだぜ! いただきまーす、もぐもぐもぐ……んん、美味い! ジューシーな肉の脂が身体に染み渡るぜぇ……!
「お姉さん、これ何の肉なの? 豚?」
「そうだよ。ニンジンブタさ」
「……ニンジンブタ」
ここでもニンジンかぁ。と思いつつ、そう言えばナミミ様からなんでもニンジンに結び付ける訓練をしておくようにと言われていたのを思い出す。
一応、ニンジンブタの詳細を聞いてみるか。
「ニンジンブタ、って、普通にブタと違うの?」
「ニンジンをたらふく食べさせて育てたブタだよ。おかげで肉からニンジンの味や風味がする気がするだろ?」
「なるほど。それはもう実質ニンジンですね!」
「だろ!」
うーん、一応自分では「実質ニンジン」と言ってみたけど……お肉だよなぁ。
あ、でもこの串焼き全体で言えばニンジンとニンジンブタで大分ニンジンな気がする。
……いけるか? 『ニンジン召喚』……!
「! おい、勝手に二本目を取るんじゃないよ、泥棒!」
「あ、す、すみません!」
召喚できてしまった串焼きを店主バニーに渡す。
……店から離れてから試すべきだった。あやうく泥棒扱いされるところだった、うっかりしてたぜ。
「……って、あれ? 焼き場が埋まってるな? でもこの串は間違いなくウチの……?」
「失礼しましたー!!」
俺は騒動になる前にささっと逃げた。まさか串焼き肉が召喚できちゃうなんて、肉も食べ放題じゃないか。これは嬉しい結果だ、帰ったらナミミ様に自慢しよ。
とりあえず屋台にはほとぼりが冷めるまで近寄らないでおくか。あのあたりは飯屋が集まってるっぽいから、今日の晩飯は自前で召喚した串焼き肉で決定だな。
もぐもぐ……ニンジンブタおいしー!!
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